第518話 期待と羨望
第618話
「な、なるほどね。これで倒せるの?」
「なんか知らないけど私に対して引いてない?顔が引き攣ってるんだけど....」
「そんなことないよ!!で、状況は?」
心の中を読まれたことを隠すべく話題を変える。
「実はまずいことになってるんだよね....」
土竜に目を向けると瓦礫を後方に押し除け底に足を着き頭を土壁に減り込ませている。そしてあることに気が付いた。
身体は切られると痛いのに頭は全く痛くないと。
「自分の頭が強いって頭で理解したみたい」
「はっ?バカなのか?」
「生まれたばかりの赤ちゃんだからバカってよりは出来ることに気付いたって方がしっくりくるよ。デンケンなんて満腹感感じにくかったから吐くまで食べてたの覚えてない?」
「覚えてないよ!!弄りがキノ姉ちゃんそっくりなんだけど!戦闘中性格が変わるタイプか....?ってか、エナ姉ちゃんが与えた傷でそうなったんだよな?」
「そうだね」
「それってエナ姉ちゃんのせいなんじゃないの?」
「一番は最初に突っ込んだデンケンのせいだけどね」
食い気味に発言したデンケンにエナが目を大きく開き、覗き込むように言い放つ。
「これから俺は何をすればよろしいでしょうか!?」
自分のせいだと負目があるのが、従順に従う。
「魔法攻撃で倒すにも物理で倒すにも私たちは支援に徹する。ついうっかり攻撃を貰ったら回復してくれる人がいなくなるからね」
「分かった!具体的には?」
「状況に応じての魔法の使用や地上との連携。口で言うよりやって慣れようか?」
その言葉と共に2本の湾刀が投げ入れられる。
エナが抜き身のそれを空中で受け取り、穴が開くほど強い眼差しでじっと見つめる。
「エナさん!そちらでいかがですか!?」
「急拵えなのに最高!!できればもう1セットおお願い!!」
「わかりましたぁぁぁあ!」
デンケンがおっちゃんと呼ぶその人が穴の近くで周りにいる人間に再び指示を飛ばす。
すると、黙々とした黒い煙が白い煙になり、空高く一直線に上がる。
「じゃあ、これ新しい獲物だよ」
エナが鋒を下にしそのままパッと手を離す。すると、二体のリザードマンが器用に自分たちの鱗で弾き回転させるとガッチリと掴み二刀流になった。
「上でおっちゃん達が鋳造してるの?」
「どんな武器が有効か分からなかったから下の状況によって武器を作ってもらってる。腕のいい鍛冶師もいてよかったよ」
上では、急拵えの炉に作業台が置いてありその横ではエナが二体のリザードマンを作るのに使った「印字」魔法で瞬間的に書かれた二つの魔法陣が刻まれて居た。
そして、間髪入れずに壁に押し込んだ頭をエナに向けるように方向転換させた所でリザードマン達が次々に切り込んでいく。
先程はまではもう一方が切り込んだ隙にもう一方がチャンスを活かすスタイルだったのだが、2本のしなやかな刀を手に入れたおかげで、土竜に次々の生傷を刻んでいく。
それも先程とは比べ物にならないスピードで。
しかし、技を繰り出す速さはあれどあれよあれよと言う内に傷口から肉と脂が盛り上がり、急速に塞がる。
「まずいみたい!傷付ける速さより直る方が早くなってきたよ」
「だったら、傷を治せなくしてやろうよ?」
デンケンが下を指差し一気に下降する。
「何するの?」
「新しい武器が来るまでの時間稼ぎ!できれば最初のやつみたいに火力あるやつお願いね!」
デンケンがリザードマンの後ろに立つと後ろから持ち手の柄に軽く触れ、指先から命令文を流す。じんわりと刃にまで浸透し、それで切り付けると傷から肉が盛り上がることは無くなった。
「何したの?」
「取り敢えず今の中途半端な魔力で武器を熱くした。焼けた傷なら暫くは治らないしとてつもなく痛いからある程度は自由を奪える」
「あ、本当だ」
傷が炙られ油もうまく出せずに瘡蓋のような皮膚が癒着し、動きを悪くする。傷口を埋めるために出された油は体から漏れ出し、刀身は燃え、身体の油に引火し遂には土竜が燃え出した。
「上は煙で目が痛くなるから下に降りてきたよ。このままじゃ致命傷にならないからまた改造する」
「それって都合よく1発で終わったりするよね?」
「そんなわけないじゃん。いらない部分の肉を剥がして骨格を作ってやることは山盛りだよ?時間ちゃんと稼いでね」
「クソがよ!!」
「さてと」
エナが赤い鱗のリザードマンを自分に寄らせて自分が『印字』で書いた固定術式の上に立たせる。
杖を振り翳し肉体を構成する術式を一度部分的に解き、右腕から肉が地面に腐り落ちる。
その肉に違う命令を魔力で流し込もうと瓦礫を退かした地面に頭の中でイメージした命令文を魔法陣にし、杖の先端から『印字』の魔法でゆっくりと円形に書いて行く。




