第516話 自信過剰
第516話 自信過剰
「じゃあ、もういいや。俺が下に降りて直接戦う」
「は?いや、ちょっと待ちなさい!!」
「邪魔だから着いて来るなよ?任せろ!」
穴に向かって一歩を踏み出しそのまま落ちる。ひゅるひゅると風の音を聞き、数十メートルを下る。
壁から出ている木の根を足で強化し、その上に立った。
「起きろよデカブツ」
その言葉に返事はない。
「起きろって言ってるのが聞こえないのか!!デカブツ!!!」
喉を魔法で強化し、張り裂けんばかりの声を上げる。
白いモヤが充満する煙の中からデンケンを食べようと大きな口を開けて飛び跳ねた土竜が姿を現した。
それに抵抗することもなく口へとダイブする。
「デンケン!!?」
口に獲物を入れ、ゆっくり咀嚼しようと壁に張り付くと口を再び開けて血を噴水のように噴き出した。
口元から赤い塊がこぼれ落ち、モヤが晴れ瓦礫が散乱し、ごちゃごちゃした底に着地する。
「あーあ、姉ちゃんに外套作ってもらってて良かった。流石に臭くてヌルヌルだしもう着られないけどな」
土竜の血液で真っ赤になった外套をから血液を払い、引っこ抜いたばかりのビチビチと活きのいいベロを見る。
外套を脱ぎ、歯でそれを引きちぎり切る。
「表面だけ焼いても意味ないだろうから焼き切ってやる!」
あまりの痛みに壁をそのまま登ろうと身体を捩らせる。
「あ、まずいな」
手に纏わせた火の魔力を払う動作で上へ飛ばす。噴き出した血液が迸り轟音を立てて燃えた。
産まれて初めて見る火の見た目と暑さに驚きそのまま落ちる。
「その小さな手足いらないだろ?軽くしてやるよ!!」
引き裂いた外套の布を両腕に巻きつけ、火に変換した魔力を流し全身を強化魔法で強化する。
腹の中に登り魔力を込める。全身に魔力の流れ道が白く浮かび上がり、両手は大きく燃え盛り手と手を結ぶ布も燃え、小枝のように胴体から生える腕を焼き切る。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
「うるせえな!!次はその喉焼いてやろうか!!」
布に込めた魔力を操作し、土竜の首に一周布を巻きつけると更に魔力を込め締める。手首までの火が肘を超え、デンケンの身体を容赦なく焼こうとする。
「まだ魔力コントロールが下手で属性変換させた魔力との使い分けが下手だから身体が焼けそうになる!!早く落ちろよ!!」
大声で叫ぶも虚しく、土竜の腹部に無数の目のような模様が浮かぶ。
「は?」
その目から細かく砕かれた石が飛び無数の穴がデンケンに開き、吹き飛ぶ。
持っていた布が焼け焦げ、壁に打ちのめされた。
しかし、近くに転がる土竜の腕を掴み自分の魔力を無理矢理流し頭から流血しながら火で傷口を炙り止血しながら突撃する。
腹に深々と刺さったような感覚を錯覚するのだが、全く傷など付いていない。
仰向けになった身体を起こし口を開けるとまた岩を細かくして飛ばす。デンケンもその場を離れるように脚だけを職業魔法の強化で働きを強くし飛び跳ね、属性変化した火球を撒き散らし瓦礫の隙間で様子を伺うのだが、脚に開いた穴からの出血が止まらない。
無言で脚を焼いて止血しようとするのだが、魔力がもう殆ど体内に残っておらず、魔力を変換できない。
遮断の魔法で身体から出る魔力を限りなく少なくし、隠れながら魔力に頼らずに止血しようとする。
ゴロゴロと身体をうねらせながらデンケンを探す。退化している見えない目を開き、ベロを出し入れし周りの臭いを察知する。
蛇のような殺気が穴の中に充満する。土竜の身体は他の竜と比べるとさほど長くないのだが、這って移動した場所の空気が浮かび上がり切り取られたように錯覚する。それが蛇を連想させるのだ。
デンケンの血の香りを嗅ぎ、一際大きい瓦礫の影に横から近付く。
それを肌で感じ取ったのか、デンケンが座りながら左を見るのだが、何も居ない。
次第に瓦礫の上をガラガラと動き回る不気味な音も次第に落ち着きほっと胸を撫で下ろす。
もう大丈夫だと勝手に解釈し、地上にいるエナに縄を垂らしてもらって助けてもらおうと天を仰ぐと視界いっぱいに土竜の顔で埋め尽くされる。




