第509話 蹂躙
第509話 蹂躙
「だって、そういうのって強力な前衛が居るなら後衛の人が魔力をぶつけて敵を引きつけたり、前衛餌がわりになって惹きつけたりするけど、デンケンにそれができるの?」
「できるよ。だから言ってるんだけど?」
「武器も持たないのに?悪いけど、説得力がないんだよね」
「じゃあ、姉ちゃんならどうする?」
「私も今自分で確認してるけど、何の魔物かは分からない。薄く広がった魔力反応としか言えないから、取り敢えずは火の魔力で焼き尽くす」
「それって安全なの?」
「生き物は火を怖がるし、こんなに乾いた場所で水属性の魔物が湧くこともないだろうし、大丈夫!大丈夫!魔物なら大抵私の秘伝魔法の効果の一部で生きたまま骨を変形させて身体の中ぐちゃぐちゃにしてやるから!」
「じゃあ、任せるよ。不用意に足を入れたら一気に襲ってくるかもしれないし」
自分の提案よりも劣っていると感じながらも一度言い出したら融通が効かないエナに多少不貞腐れながらも従う。
どうせ失敗するだろと心の奥底では考え嘲笑っていた。
「2人しかいないから、数で押し切られたら終わりだもんね」
そんな慎重なことを口で言っているのにも関わらず、エナはてに魔力を込め、獲物の核に触れ杖を取り出しそれを地面に向ける。
その瞬間、地面で薄く広がっていた生物がエナの芳醇な魔力を帯びた杖諸共エナを吸収しようと飛び掛かる。
デンケンが人差し指を向け魔力でそれを振り払おうとした所で頭には一つの考えが浮かぶ。
今魔力を使ったら自分に魔物が集まるのではないかと?
それが頭にこびりつき魔法を使えない。
エナがデンケンの方を振り向くのだが、それが永遠のように感じられる。
たった一言
「迷ったんだね」
そう聞こえた。
そして、エナが浮かばせていた火の魔力でできた灯りが激しく部屋の中に迸る。
みるみるうちにエナに飛びかかった液状の魔物は焼かれ、部屋の奥にいたそれすらもドンドンエナの元へと集まってくる。
「やっぱりスライムだ!変質してるのは居ないみたいだね。ほら、おかわりだよー」
杖を強く握りしめると、プカプカと光りながら浮いていた魔力たちが複雑な軌道を描いて降り注ぐ。近くのスライムには脳天から地面に突き刺さり、地面にめり込むと次は地面から天井目掛けてスライムの体を突き破り、魔力が天井にめり込んだ。
ある程度の距離がある場所にはエナを中心点としてフラフープのように横の軌道で体を貫く。
一番遠いのに対しては斜めから身体に幾重にも魔力で抉った通り道同士を重ねるようにし、右の杖で軌道を命令として組み込み反対の左手では光玉を絶え間なく供給する。
体の周りをふよふよしている光玉であれ、地面や天井にめり込んでいる魔力であれ、一瞬で次の新しい動きをするのだ。
挙げ句の果てにはマジックバックに手を入れ、中からエナ自身のマスターピースである風と土の魔石を取り出しそれも魔力を玉状にして杖で緻密なコントロールを与える。
風の弾丸が何体ものスライムの身体を貫き、土の魔力は地面に入り込み枝分かれするとスライム達の死角から土でできた針を打ち込む。
次々にエナの周りのスライムがパチンと弾けるように形を保てなくなっていくのだが、エナの手は止まらない。
「骨や肉体があるわけじゃないし、貴方達はいらない」
ニンマリと不気味なほどの笑顔を振り撒き、必要ない物を文字通り消していく。
それを見る事しかできなかったデンケンは言葉にならないような風景に圧倒されていた。
エナがさまざまな属性の魔力を引き出し、ありとあらゆる属性を象徴する色が閃光のように弾け飛ぶごとにスライム達もその場から逃げ出そうとする。
奥へ奥へと逃げようとすると、道にちょっとしたスライムだけが越えられない段差を作り、進行を妨害。
身体を保てなくなったスライムの体液に水の魔力を混ぜ操り、他のスライムの身体を引き寄せるために使う。
「ほら、デンケン迷ったでしょ?戦闘中に余計なことを考える未熟者には命は預けられません」
プンプンとわざとらしく怒ったように見せているのだが、この惨状を数秒で引き起こした本人だと思うと恐怖に身体が支配される。
「キノの逆襲がスカッとした!」「今後の展開が気になる!」と思ってくださったら、【ブックマーク追加】や【★★★★★(星評価)】で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!




