第507話 心の魚骨
第507話 心の魚骨
「目に魔力を集める時は目の周りを薄く包むようにしてみて。そっちの方が広い範囲を見ることができるから」
「でもこれだと、小さな魔力とか見逃しちゃわない?」
先程までデンケンが見て居た光景とは似ても似つかないほどにチープな光景。目の周りも特に変化は表れず表情が明るく緩い。
「そのままだと見逃すから今度は気になる場所ができたらさっきみたいに魔力を沢山込めて1箇所を注視すれば良いんだよ。その方が魔力も効率的に使えると思わない?」
「別に俺は魔力が沢山あるし、魔石もいざと言う時のためにいくつか持ってるから問題ないよ!」
「あれは何!!!」
「え!何!?」
エナが大きな声を上げてデンケンがエナの指先を見る。しかし、何も発見できない。
更に精度を高めようと目を細め、魔力を更に集中するのだが別段変化はしない。
それどころか、注視しながら色々な所を見て居たせいかどんどん気持ちが悪くなってきて居た。
「姉ちゃんどうした!」
異変を見つけられない痺れを切らしたデンケンが直接エナに質問する。
「パン!」
先程の尋常ではないエナの反応。それを見つける事ができずに痺れを切らし本人に聞こうと見るとエナが笑顔で合唱し、口でわざとらしく効果音を鳴らして魔力の塊を潰す。
それも、ただの笑顔ではなくイタズラ坊主のしてやったりと言わんばかりのにんまり笑顔であった。
エナの顔がくっきりと見えたと思った瞬間、強烈な閃光で視界が覆われた。
「ギャァダァぁぁあ!!!目がぁがぁがああ!!!」
「うるさいよデンケン?ほら大変なことになったね」
「誰でもこんな強烈なの浴びたらこうなるだろ!!ぁぁぁ!」
その場でうずくまり、目を手で覆いジンジンとする目に悶える。
「こんな小さい光でこうなるんだから、必要に応じて魔力を込める量を調整する必要があるの分かった?」
「だからってこんなことしなくていいだろ!!痛え!!」
「痛みを伴わなきゃ分からないでしょ?自分の身で体験しないことは想像するしかないけど、想像じゃ他人の痛みって分からないし」
「ならせめてやる前に言ってよ」
「まさか、こんなにこうが出ると思ってなかったし。沢山の魔力を込められて偉いねー」
「言ってる場合じゃないだろ!!」
「こんな小さいやつでもそうなるとはなー。視力が回復したら言ってね」
エナの体の周りでポワポワと浮かびながら光るエナから出た光属性の魔力の玉を暇つぶしにプチプチと潰す。
自分がやったのにも関わらず、全く興味が持てないと言う雰囲気が伝わってくる。
潰して消える際に強く光るのだが、暗がりでぼんやりと光る程度で普通の目で見れば視界を奪われると言うほどではない。
「大丈夫!!もう進めるから!」
デンケンがゆっくり立ち上がり目を薄く開くとエナの身体から出された複数の光の魔力が目に入るとビクッとする。
「奥に進んだせいか、だんだん暗くなってきたからそれに合わせて視界を確保する。通常時に目に込める魔力はこの光を見ても眩しいと感じないくらいに調整しないと目が潰れるからね」
「分かったよ....」
渋々と目に込める魔力の量を少なくして気になる部分だけを重点的に見るようにして先に進む。
「でも、発光する魔物とかに出会う前でよかった。戦闘中にあんなに無様な姿を晒したらすぐに殺されちゃうからね」
「あそこまで非道なことする敵なんて早々現れないだろ?姉ちゃんが一番悪魔だよ」
「まぁ、なんでことを言うの?私はみんなのことを思って心を痛めながらさっきのことをしたのよ?今でもドキドキしてる....」
「今までみたいに躾としてやってくれてたのはそうだろうけど、今回のは絶対楽しんでやってたろ?笑顔だったし」
「どうだろうねー、自分で自分の顔は見えないから」
「それはとても残念だなぁー!次同じ機会があったら記録できるようにしとくねぇー!」
わざとらしい反応のエナに対抗すべくわざとらしくデンケンも叫ぶ。
「え、もうしないけど?同じイタズラを連続でやってもつまらないでしょ?」
「ほら今、さっきのはイタズラって認めたよな!!」
「えー、どうだろ?」
はぐらかしながら道を進み、デンケンがそれを少しだけ嬉しそうに追いかける。
「そんなに嬉しそうな顔してドmだった?」
「嬉しいのは確かだけど理由が違うよ?エナ姉ちゃんもようやく肩の荷が降りたんだなって」
「何それ?意味わからないな」
「いいんだよ。姉ちゃんは分からないままで」
「何それっ」
2人とも笑い合う道を歩く。その足取りはかるいのだが、デンケンだけは先程と同じようなことをされてしまわないか違う意味でドキドキしながら軽い足取りで進んでいくのであった。




