第505話 魔力汚染
第505話 魔力汚染
「魔力を効率よく使うことを考えると冒険者が使う武器の延長で装備を揃えた方が、いいんですよ。魔力の通りも段違いだし、魔物が出てきてもそのまま戦えますから」
「でも、私はいいです。自分の武器を持っていますので」
魔物の核に魔力を流して自分の獲物にするエナにとってはこの場に並ぶ武器は少々重すぎるのだ。
「俺も自分より重い武器は使えないからこのままで大丈夫!!」
「マジックバックを持ってるエナ様はともかく、デンケンも大丈夫なのか?」
「この前の襲撃の時に戦う姿見せなかったっけ?基本的にあるものでどうにかするから武器には拘りないんだよ」
「あの時は逃げることに夢中で面目ない」
「まぁ、大丈夫だから!この気遣いだけ貰っとくね」
「でも、せっかくだからこれだけ貰います」
ガラガラと手早く上に乗っている武器や防具を落とし、マジックバックから裁縫セットを取り出すと、茶色いポンチョのようなフードのない外套を作る。
「はい、これ羽織っといてね」
「なんだよこれ?動きにくいんだけど?」
「間に合わせで作ったからあんまり身体に合わないよね。でも着といてね。スライムに肌が触れるとそのまま溶かされるから、その対策だよ?」
「確かに回復魔法を使える人居ないし、予防に越したことはないか。じゃあ、俺たちで様子見てくるからみんなは離れててくれ」
「私達もここに居ますよ?」
工事のメンバーを束ねる社長のおっちゃんが指ですぐ近くの地面を指す。
「いや、それは危ない。さっき奥に広がってるって言ってたの覚えてるか?」
「そりゃあ、自分で言ったからもちろん」
「もしそれが手前側に伸びたら知らず知らずのうちにダンジョンに巻き込まれる可能性があるからできるなら外に出て欲しいんだよ」
「分かった。じゃあ、入り口近くの外に出るからあとのことはお願いします」
深々と頭を下げて入口へと引き返す。
その姿が見えなくなるとエナとデンケンが施錠された扉に目を向ける。
「じゃあ、俺らも行こうか」
「わかった。扉は魔力で開く仕組みかな?か
「こんなにでかいの2人じゃ動かしたくないからそうであって欲しいんだけどな?」
2人が手に魔力を込め、扉に触れるとゆっくりと隙間が空き、急足でその間に2人が入る。魔力が供給されなくなるとゆっくりとまた扉が閉まっていく。
しっかり閉じたことを2人が顔を見合わせて確認すると中は薄暗い。ダンジョン特有の光を発する苔などもなく殺風景な洞窟と言った言葉が合う。
「確か、ここから奥の壁が見えたって言ってたよね?」
「見えないな?エナ姉ちゃんはどう?」
「私も見えない。取り敢えずは斥候を放つ」
エナがマジックバックから中ぐらいの瓶を取り出し投げる。空中で割れると、宙を自由に飛び回る赤い目のコウモリになった。
「うぉっ!かっこいい!エナ姉ちゃんの使い魔なの?」
「使い魔なのかな?第二強化術みたいに自分の魔力から生み出したわけじゃないから、意思の完全な疎通はできないけどね。このフォレストバットに索敵をさせる」
エナが指先で合図を送るとゆっくり奥へと消えていく。
「今回は探索の魔法使わないの?あれ便利だよね?」
「使ってもいいんだけど、感覚が鋭い魔物はこっちが探ってることに気付いて臨戦体制になるから無闇には使いたくない。今回はスライムだし」
「そっか、あいつらそんなに強くないのに神経が剥き出して危機管理も凄いもんな」
「しかも、ダンジョンになるってことは魔力の濃度が高いから、スライム自体にも色々な変化が起きてるかもしれない。しばらくはこの前森で手に入れた2匹のフォレストバットに任せる」
「色々な変化って言うと?」
「魔力濃度がダンジョンになるほど高くなったのはスライムが処理したものの中に魔石や魔力が高かった何かがあってそれがスライムの体内で代謝されて処理しきれなかった何かの魔力が蔓延した可能性があるかもしれないってこと」
「魔石は分かるけど、魔力濃度が高くなった理由の何かって何?」
「可能性が一番高いのは人だよ?気に入らないやつをスライムに処理させる奴らもいるから、そのせいで魔力濃度が高くなってダンジョンになったのかな?って」
「おっちゃんたちがしたって事?」
「それは見てみないとわからない。でも、地下都市を隠れ蓑に犯罪に手を染める奴らは少ないと思う。さっき見た武器なら人だって骨や内臓も粉々にできると思わない?」
「もしそうなら許せねぇ!キノ姉ちゃんの街でそんな大それたことをするなんてな!」
「それを含めて確かめに行こうか。もしそうなら私達がそっちにも対処する」
「分かった!」
エナに元気よくデンケンが返事をし、進もうとするのだが、エナがそれを制止させる。




