第503話 奇跡の確率
第503話 奇跡の確率
「そうです!ただ1つ問題があって....」
「どんな問題です?」
「昨日手に負えなくなって封鎖した時は奥が見えてました。でも、今朝になって少し開けて見てみたら咲が真っ暗なんです!」
「夜のうちに掘ったのか?」
「トレジャーハンターは何人か在籍してるけど、流石にそんなことはしない。夜のうちに伸びたとしか」
「エナ姉ちゃんはどう思う?」
「どうって、完全にダンジョン化しつつあるでしょ?これ。急にサイズが大きくなるなんてさ」
「ダンジョン?」
聞きなれない言葉に聞き返す。
「急に現れて外見と中身が見合わない不思議な空間のこと。中には沢山の魔物がいて、道中や最奥には宝箱が沢山ある」
「ダンジョンで力尽きた冒険者の装備品の一部って説もあるから、このダンジョンは出来立てで旨みが全くない可能性もあるよ」
「えー、そんなことあるの?」
せっかく中で働いても旨味がないのかとめちゃくちゃ嫌そうな表情をデンケンが浮かべるのだ。
「あったかどうかは知らないかな。ダンジョンはその特異な空間ってだけで買い手が付くから、最初からダンジョンに宝箱を求めるなんて質の悪いトレジャーハンターくらいだし」
「じゃあ、踏破しても何もない可能性もあるのか」
「それはわからない。そもそもダンジョンは何も分かってないって言うことしか正確に分からないみたいだし」
「一般的には冒険者の持ち物を溜め込む。踏破でそれをもらえる。当たり外れがあるからダンジョン踏破には期待せずにその場所を使ってビジネスをするって言うのが一般的って感じだけどおっちゃんどうする?」
「まぁ、偶に誰の持ち物でもない業物が見つかったり、大量の魔石が見つかる人的以外の旨味があるダンジョンもあるけどね」
「どうするって言ったって、どうすればいいんだ?このまま放置するとどうなる?できればここから出てくるものは価値ある物が少なくて採取できないから俺もダンジョンビジネスとやらで儲けたいんだが?」
「何も管理しないと中から溢れた魔物が出てきます。少なからず被害は出るでしょうし、それを引き起こす原因を作った貴方は相応の処罰が下るかと」
「処罰って.....ここに法律は....」
「そう、法律ではないので待っているのは貴方が崇拝するキノ様からの処罰です」
その一言に一気に青ざめる。嫌われてしまうと言うことに他ならない。
「でも、大丈夫。優しいキノ様は貴方を傷付けたり痛ぶったりなんてしない。この街の人に危害が及ばないように貴方を地下都市から追放するだけ」
「そしたら俺の生きがいが....!?」
「別にキノは貴方達に仕事を依頼してこの地下都市を広げてるわけじゃない。貴方みたいな未開の資源を求める人やキノに報いるために自発的に行なってる。そんな方々を責めません。ただ、心の底から嫌いになるだけですよ?貴方のことをね」
着々と丁寧な物言いで言うのだが、最後の一言を発するエナの目は見開き氷よりも冷たかった。
「分かった!ここをどうにかしたい!」
「閉じるんで良いですね!!」
「ああ!それでいいです!よろしくお願いします!」
「あるだけの武器と防具を持ってきてください!」
「は、はぃぃぃぃぃい!!」
フラフラとおぼつかない足取りでその場から逃げるようにエナに言われたものを取りに行こうと去っていった。
「エナ姉ちゃんも良い性格してるよな?」
「そう?ダンジョンビジネスなんてクソでしょ?金のためにその周りにいる人のことなんて考えない奴らばっか。キノの街にはそんな意地汚い人いらない」
「俺達、無理なダンジョンビジネスの被害者だしな。まぁ、金のために誰かを不幸にするビジネスは俺も反対。役に立つことをビジネスとしてやって欲しいよ。なんて無理かな?」
「なんで?」
「だってお金はみんな沢山上限なく稼ぎたいだろ?」
「確か前にキノが1人が一気に沢山儲けるよりもたくさんの人から少額を対価として受け取って同じ額儲けた方がサービスは長く続くって教わったって言ってた。だから、私達もそうした方がいい」
「誰に?」
「さぁ?キノってそう言うところあるから」
「嫉妬するなよ、姉ちゃん?」
「誰がするか!」
「だってするだろ?自分の一番好きな人が一番好きな人が自分じゃないんだからさ」
「本気で言ってるならまだまだお子さまだね」
「は?どう言う事だよ?」
「女も男も世の中には沢山いるんだよ?自分が好きな人の1番が自分って可能性は限りなく低い。想いが通じ合ってたらそれこそ奇跡だよ?」
腑に落ちないという表情を浮かべていたデンケンの表情は更に厳しくなっていく。いまいちピンとはこないのだが、頭の中では分かりそうでやっぱり一歩わからないような変なモヤモヤがする。




