第502話 グレーゾーン
第502話 グレーゾーン
頭ではわかっていても実際にそれが行われている場所を目の当たりにすると言葉にできない感慨深さを感じる。
すれ違う人みながデンケンやエナよりも年上なのにも関わらず会釈をするところを見ると、2人が誰なのかをみんな認知していた。
「こっちだ!こっち!」
壁を掘り進め、アリの巣のように広がった通路の1つに入ると中には松明の代わりに光の玉が浮いていた。
中ではツルハシやスコップと言った普通の機材を振るう人から魔力で身体を強化してそのまま手で壁を掘り進めたり、岩同士をぶつけて壊す人がいた。
先程までデンケンに大手を振り合図していたおっちゃんがエナの姿を見ると畏まり丁寧な仕草で内部を案内をする。
「いやー、すみません。私どもの不手際でこうなってしまったのに、わざわざ御足労して貰って....。問題の場所はこちらになります」
「あ、おっちゃんそう言うの要らないから。俺のことクソガキみたいに話して大丈夫。エナ姉ちゃんも堅苦しいの嫌いだろ?」
「いやっ!でも流石に....」
「大っ嫌い!この人は?」
「俺のことをクソガキ呼ばわりしたおっちゃん!地下都市を拡張する工事をやってくれてる。地上にいた時は平民で、貴族の箱庭を作ってたんだよな?」
「最初に会った時を引き摺るなよ!この街を作ったキノ様のお知り合いだと知らなかったんだよ!?」
「誰が誰の知り合いだって?偉い奴の知り合いだったってだけで態度を変えるのかよ?」
「普通なら変えねーよ!でも、キノ様は俺たちを救ってくれた!貴族の領地なんてただの平面に魔石で山や湖を作っただけの箱庭だ!そこに道を通したって何も面白くない!まだ開発が進んでいない道の場所を!俺たちに好奇心!生きる理由を教えてくれたんだ!」
「ってな感じでこのおっちゃんはキノ姉ちゃんの信徒だ。エナ姉ちゃんにも負けてないだろ?」
「別に私は....」
「孤児院のみんなエナ姉ちゃんがキノ姉ちゃん好きだって気付いてるぜ?」
「そこじゃないよ。私の愛の方が深くて重い」
「おお!エナ様もキノ様を尊敬されているんですね!!」
「もちろん、あなたとはお話しが合いそうです!1週間でも一年でも語りましょう!」
「こいつらの愛で胸焼けしそうだな....」
2人の事を見て引くデンケンしかこの場での常識人はいない。
「それと、デンケン。特別扱いしなくていいって言ってる割に特別感を抱かせてる原因作ってるよね?」
「どう言うことだよ?」
「なんで目上の人に敬語使わないの?」
「は?別に....」
「キノがこの街を作って管理を任せた。それでみんなを通して屋台の申請や治安維持をやってる。それでみんなが勝手に傅くから偉いと勘違いした?目上の人にはちゃんと敬語を使いなさい!」
家族の中でもいつもニコニコしていて優しいエナが声を強く張り、しっかりと叱る。
「あ、いやエナ様、それは違います!!彼が勘違いしてるのではなく我々がタメ口にしてくれてお願いしたんです」
「え!?そうなんてますか!?」
「最初にこの現場で魔物の襲撃があった時に助けに来てくれたのがデンケン。最初はただ現場を冷やかしに来た小僧かと思っていたんですが、数日前に誰よりも早くに駆けつけてくれて....。こんな小さいのにとても強いので、タメ口で話してほしいとお願いしたんです」
「そうだったの!!ごめんね、デンケン!勘違いしてた!」
「分かった!分かったからって!離れてくれよ!!!」
デンケンを抱きしめようとするのだが、本人は一生懸命それを引き離そうとする。
誰よりも厳しい代わりに誰よりも子供達を甘やかそうとするのもエナなのだ。
「それで、今回俺を呼んだのはどうしてだ?この前みたいにまだ調査が住んでいない場所を掘って地中に潜んでた魔物に襲撃されたのか?」
「今まで地下は生活圏じゃなかったから整備されてないんだ」
エナが地下に魔物が沸く理由に納得したように何か腑に落ちたように頷く。
「実はその、細かい岩石を掃除するのが面倒で捕獲したスライムに掃除をやらせてたら思ったよりも成長してしまって....」
「あれ?確か魔物を使役できるのはそれ相応の冒険者の職についてないとダメだよな?」
「一応、ビーストテイマーが何人かいるあらその点は問題ない。この前みたいな被害を出さないためにも地上でも完全に違法に分類されることはしない!」
「したって罰せられたりしないのにですか?」
「領地なので地上みたいな公共な場の法律は適用されにくいけど、それで危険な目に会うことがあるってのは前回身に染みた。だから、危ないことはしないしそれが従業員を守ることにも繋がります」
「グレーなものを売れたりするのがこの街の良い所。ルールは人の中で勝手に生まれるってキノが生まれるって言ってたけど、本当にその通りだね」
「そのせいで、危ないことが起こったら派遣される俺たちは大変だけどな」
「みんなは私とキノが育てたし、回復術師のお姉さん達も沢山いるから頑張って」
「へいへい。そのスライムがいるのはこの先だよな?」
坑道の中に木製の扉が取り付けられており、門のようになっている場所まで出てきた。




