第501話 散歩コース
第501話 散歩コース
「ただいまー」
「いるから声掛けてよ。コソ練見られて恥ずかしいじゃん!」
「いやー、真面目にやってたからさー。あれから毎日コソ練してるの?」
「そうだよ!!他の奴らより遅れてるみたいだから早く追いつこうと思ってる!」
「そ、基礎を疎かにしない奴が一番強いからね!今は何してたの?」
「軌道の命令を書かないで魔法の軌道を変える練習!ジルやリヒターと簡単な魔法の打ち合いをしたんだけど、あいつら色々な複雑な命令を早く組めるからあっという間にやられた」
「覚えるの大変だもんね。回転を変えて軌道変化させるの?」
「そう!回転の命令文を書くときに流す魔力の量や時間を調整して同じ回転の命令でも強弱を付けたりする練習してる。それなら少ない命令文を覚えるだけで色々な軌道にできるだろ?」
「確かにそれなら命令文を速射魔法で込めてる時の長さで複雑さを予想されにくいね。回転の命令なら重ねがけさせたり、無駄な回転を取り入れて不意をつけるし」
「へへっ、魔力が少ないのに頭を使ってるあいつらに勝つ為には俺も頭を使わなきゃと思って使ってみた!
「自の頭がそこまで良くないから発想はお粗末だけどね。他のみんなは?」
「そこはまだこれからに期待してくれよ!各々やりたいことやってる!新規の出店も落ち着いたし、女性陣は服を作る事を中心にやってる。リヒターとジルは調査とか言って色々やってるけどよくわからない!」
「お金になってるならいいさ。それとこれ、まとまったお金が入ったから返済しにきた」
「俺に預けるのかよ?うっかり使っちゃいそうだな?それに、これ利子だろ?別にいいのに」
「アハハ、みんなの様子はどこにいても気になるからさ。そんなことしたらこのお金の代金分みんなの召使いになってもらうから」
「何やらされるのか分からないからそれだけは本当にやめてくれよ....」
エナが差し出した革製の小さな布袋を受け取るとジャラジャラと言う音と共にエナの覚悟が伝わってくる。
「ここに来る途中に化け物騒動があったんだけど最近多いの?」
「多いって言うよりはたまにだな。地下ってよりも地上に近い部分で声がするのがほとんどで、滅多に近深くからは声はしないみたい」
「ふーん、キノを探しにいく前はそんな事なかったから怖いなー」
否。その正体はほぼ毎晩キノと一緒にいる事で、昂った気持ちを地下への入り口を開いてから中へと入りすぐ閉じて叫びを挙げているエナ本人なのだから、気付け。
「そうなんだよなー、急に現れたって感じだからさー」
「因みにデンケンは最近何してるの?穀潰し?」
「ん?俺?これから仕事だしエナ姉ちゃんも来てよ」
革製の鎧に小手や分厚いブーツを履いたデンケンに連れられ、地下都市の外れの拡張が行われている現場に来た。
「工事区画?」
「そう。魔物がかなり出るからそれの退治を請け負ってるんだ。ダンジョンみたいになってる」
「地下にダンジョン!?」
「みたいってだけ。地上のやつと違って、デカさも外見と同じだし、宝もないかもしれない」
「魔物はどっから湧いてるの?地上じゃダンジョンから溢れたやつとかはいたけど」
「地面の中に住んでるみたい。後スライムみたいなやつは地中を移動できるしな」
「ふーん、用心棒みたいな事してるんだ」
「用心棒じゃないよ?冒険者」
「は?」
デンケンが手のひらに魔力を込めるとステータスカードが現れそれをエナに見せた。レベル10の戦士として描かれており、筋力はエナの数値よりもはるかに高く、魔力も戦士の割に異様に高い。
「冒険者になったの!!?いつの間に!」
「エナ姉ちゃんが取ったギルドで俺も取った。地下じゃギルドの管理が行き届いてないからクエストも発行されない。個人冒険者が自発的に活動するしかないんだよな」
「それより試験は!?」
「ギルド職員とも戦った。戦闘力じゃ敵わないから火を沢山燃やして煙で呼吸できないようにした」
「やる事エグくない?」
「キノ姉ちゃんにはできることはどんな手でも使いなさいって言われてるから」
そんな世間話をしていると、掘削の仕事をしている人たちが2人に気付く。
「おーい!デンケン!!早速で悪いがこっちに来てくれ!!」
「ああ!今行く!!」
壁を掘る1人がデンケンに気付き大声で手を振る。動きやすい上下にツルハシを持ったおじさん。典型的な炭鉱夫だ。
「今の誰?」
「今回の依頼主兼、通報者だよ」
「通報者?」
「取り敢えずは姉ちゃんも着いてきて。戦闘はできそう?」
「薬も魔力も武器も充分あるから問題ないよ?」
「頼もしいよ」
デンケンと一緒に進む。壁のあちこちに穴が空きツルハシで切り抜いた岩をネコで外へと運び住める区画を増やす。




