第496話 夢みがちな野望
第496話 夢みがちな野望
「国家転覆並みの犯罪を起こした知り合いがいる。速攻で処刑されたけど助かってた子が今も普通に生活してる所を見るに罪を犯したら処置されるとは限らない」
「どうすればいいんですか?」
「大公になればいい。こんな規模の魔法国が関わってるか、黙認してるのは確実。なら、大公特典の好きな政策を1つ増やせる権利でどうにかできる可能性。できなくても私は対抗策それしか知らない」
「何でですか?」
「こんなことできる方法は魔法。記憶を弄る、転移させる、それを一定の基準や条件を満たした人にだけ適応させる魔法の阻害や妨害なんてできるの他に思いつかない」
ユエルも頭の中で考えると確かにとキノの考えを補強するような考えに至る。
「強力な魔法ほど、多くの魔力が必要で強い作用を齎すから確かにそうだよね」
エナも似たような結論に着地した。
「キノさんは大公になったらどうしたいんですか?」
「一部の貴族が大きな顔できる国の体制を変える」
恥ずかしがることもなく真顔でキノが答えるとどことなく絶対的な安心感が生まれる。普通の人がそれを口にしても言ってる本人すら恥ずかしがりそれを聞いてる方は更に恥ずかしくなるのだが、全くそれを感じさせない。
「じゃあ、私はその住みやすくなった国から勝手に記憶も済む権利も奪われる事をなくす為に大公になります!!!」
「あ、それは私がやるから大丈夫」
「は?」
ユエルの固い決意をエナの一言が消していく。
「だってさ、腐った国にメスを入れたキノの幼馴染が国そのものを変えたってなったらみんなほっとかないでしょ?」
「えっとそれって....?」
「私は没落貴族。私の一言で没落したことに後悔はないけど、できるだけ高い地位の貴族になって、本当に弱い立場を救う人になりたい」
「なり変わるんですか?王族に?」
ユエルが先程とは別の理由で震えていた。
「そんなうまくいくとは限らないけどね。王族が儲けてる富国強兵のご褒美だから、それを唱えた瞬間に私は殺されるかも」
「だったら何で?」
「冒険者なんてみんなそんな物。自分の野望の為に色々な物を利用してそれを達成したい」
ユエルの疑問にキノが答える。
「そうなんだよね。政策も自分の目的を果たす為の方法でしかない。キノも本当は目的があるんでしょ?人の想いがさっきのキノみたいに綺麗な訳ないし」
「私の目的は親に探してもらうこと」
「可愛い!!!でも、自分を捨てた親に自分の利用価値を示して掌を返させようとするなんて歪んでるね」
「エナも同じ。いつからそんな野心家に?」
「キノと別れてからだよ。地下都市に捨てられた時に何で捨てられたか考えた。私はキノの横にずっと居たい」
「それで?」
「同じ夢を見れなかったから置いてったんでしょ?キノは最下層の下民から大公になりたいって夢を追いかけてるバカな冒険者。私は孤児院の切り盛りをしてるお利口さん。キノが気を遣ったって分かる」
「分かったから野望を抱いた?」
「私もバカになることにしたんだよ?できもしないような事を目標にして、キノと同じ夢を見れなくても夢の共有ができるようにしたの」
「同じ夢を見るのが2人もいたらウザイ。それに子供じゃないから夢なんて見ない」
キノがエナを否定するように冷たく吐き捨てる。しかしその顔にはうっすらと笑顔が浮かぶ。
「大人なんだし夢はバンバン叶えていく。でしょ?」
「うん!!!」
その言葉にエナが力強く頷いた。
「あーあ、じゃあ私は何なんですか?バカ2人に挟まれて良いように利用される感じですかね?」
「利用されるも何も、勝手に私たちに影響されて教会の制度を壊したバカ3号」
「うわっ、不名誉過ぎる。でもまぁ、私好みの組織に作り変えて信者を増やして信仰で集めた魔力で人がどっかにいくような魔法を無効にする方法でも考えます」
「はい、バカ3号の完成」
キノがユエルの不名誉を口にするが、当人の顔は笑っていた。エナ本人はキノにどう思われても横を一緒に歩き続けることができればそれでいいと考えているので何も問題ないのだ。
「よし!できた!これでどうだ!これならいける!」
「ちゃんと体を守れる?」
「もうバッチリ!!これならそうそうやられない」
「そう。じゃあ、少し相手する」
キノがゆっくり立ち上がり、ぬるっとした動作で流れるように攻撃を仕掛ける。
「ちょっと待て!!まだ準備が!!!」
手のひらの媒介のをなぞり中から魔力を引き出し、腕に纏わせ鎧のようにしようとした寸前で首を掴まれそのまま宙ぶらりんにされる。
「....ああ....あ....」
そんな絶体絶命なことはお構いなしにゆっくりと空気が読めない腕に水がまとわりついていく。




