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[朝は男で夜は女!?〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
忘草編

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第493話 良心的な治療

第493話


「敵陣の中に単身でいる奴なんて誰が怖がるの?空気みたいに誰も干渉しない。何があれば瞬時に制圧」


「だったら、体内の毒を撒き散らしてできる限りの奴らを殺してやるよ!!体を少し噛み切ればいいだけだしな!」


「それは困る。私たちが敵の陣地に放り込んだせいで勝手に死ぬのも結構困る」


「は?」


「そうだよね。やっぱり沢山勉強して沢山お金稼いで美味しいものとか食べないと詰まらないし」


「は?」


 キノとエナの言葉に全くと言っていいほどついていけない。


 話している言語は同じでも内容が理解できないのだ。


「中だと一人が一人以上を食わせるだけの生産力を持ってるから労働者に奉仕する文化人も沢山いる。その文化人の力を使って最初の可能性を消す」


 そう言っていると上から一人の人が降りてきた。全身真っ黒な服で金髪。腰にはでかい本をぶら下げられる革のアクセサリーを着けた人が階段を降りるようにやってきた。


「こんにちはー、ひょっとしてお食事中でしたか?」


「ユエル、お食事前だから、大丈夫。毒抜きお願い」


「はいはい、分かりましたー、エナさんもお久しぶりですねー」


「お久しぶりです!」


 ひらひらとエナに手を振り、聖書を開き魔力由来の杖を空中から出し、その少年に掲げる。


 流石に何かを探知したのか、その場から立ち去ろうとするのだが、地面から出てきたユエルの魔力で膝をつく様に固定された。


「聖書にそんな動きを封じる魔法あるんだ。癒すだけかと思った」


「私、新しい教会組織の幹部になったんで制限なく魔法を使える様になったんですよ。ワンオペで劣悪な環境に派遣されることも増えたのでかなり攻撃的なやつも新しく開発して、信徒達から集めた魔力で使っちゃってますけどね」


 最初はニコニコしていた表情が最後の方には三日月のように目を細め企みを浮かべる邪悪さを放つユエルがいた。


「沢山お金は払うよ?言い値」


「わぉ!それは期待します!出張料金もお願いしますね。一部の貴族から沢山お金をもらう代わりにどんな無理をも叶える体制ではなく、持ってる人からは平等に頂いてますので.....」


「分かった」


 ついこの間まで質素な生活を送っていた倹約な信徒とは思えないほど金にがめつくなっていた。


「じゃあ、始めます」


 掲げた杖のすぐ上に赤い球体がどんどんと膨らんでいく。最初に開いていたページの黄色い文字の光が弱まり、聖書の別のページを開く。地面に縫い付けていた魔力が解け、その穴も瞬時に治った。


 次の瞬間撃ち抜かれたかのように腹部に大きな大穴が空き、瞬時に塞がった。


「何したんだ?おい!!何したんだよ!」


「身体に溜まってた毒を抜いたんだよ。それとこれ」


 ふよーっと、少年の背後から球体が幾つか現れる。溜まった血液とは別の球体に入った肉の塊が前に出される。


「何これ」


「肝臓。毒でダメになってる部分。これは毒抜きして別の患者さんに移植したりするやつ」


「え?じゃあ、俺の体のやつは?」


「ある程度元気な部分を残したから大丈夫。ある程度は治るし。まぁ、治る前に大量に毒を摂取して自爆して中の人に危害を加えようとしたり、毒に触れてうっかり自分の体に入ったら命の保証はできないけど」


「はぁ!?汚ねぇぞ!!お前らの良心は傷まないのか!?」


「傷まない。これから魔力で自分を守る方法を教える」


キノが前に出る。


「俺にはほとんど魔力が流れてないんだぞ?」


「物に宿る魔力が扱えてるし問題ない。ただ、こんなので無理矢理自分の体に魔力を帯びた文字を書いて痛めつけて魔法を使うのは二流」


「じゃあ、どうやるんだよ?あらかじめ紙にでも書いてストックしとけってか?」


「それじゃあ、臨機応変にできない。まじないの結界術を教える」


「まじない?なんだよそれ?」


「媒介って言う魔力を発するものを使って魔力を帯びた術式を書いて魔法効果をもたらす方法。私たちは基本魔法使えるから魔力を帯びた術式を瞬時に使える。でも、貴方は魔法が使えないから手動でやる」


「そんなことできるのかよ?」


「できる。術式に媒介を近付けるだけで効果はでる」


「それだと俺がやってたこととほとんど変わらない気がするんだが?」


「書いて媒介を乗せて効果が出るんじゃ魔法戦で負ける。射程や効果範囲だってその決めなきゃいけない」


 キノが人差し指を伸ばした先には猪の群れがいた。キノの指から同じタイミングで出た最初の魔力の塊が直線的な軌道で途中で三つに分かれ3匹の猪に当たり、別の軌道の1発が最初の3匹とは孤を描くように宙に登り落ちるように違う1匹に当たった。


 目の前の冒険者には瞬時にこれができるが今の自分には全くできない。ここまで洗練されてはいないだろうが、こうなれる可能性がある人々の中で暮らし、機嫌を損ねてしまったらどうなるかは想像は難しくなかった。


 一瞬で自分の体は終わりを告げ、意思を持たない肉の塊に成り下がるだろうというのは目に見える。


 そうならないための術をここで教わるしか生き残る道はない。

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