第492話 逃亡
第492話 逃亡
「効果が付与された武器を振り回し過ぎて倒れたり、強化紋の付与され過ぎで魔力切れを起こす馬鹿が使う薬じゃん。キノも馬鹿なの?」
煽るような口調でキノを攻め立てようとする。明らかに面倒臭そうにしたキノが口を開く。
「私の武器は武器に宿ってる魔力の範囲の付与。身体は自分の強化魔法での基本的な能力の底上げしかしないから必要ないんだけど、一応持ってるだけ」
「ふーん。で、その子どうするの?殺す?」
エナが再び杖に力を込めると、子供の目に涙が浮かぶ。
エナからしてみれば魔力を少しこめるだけで命を奪えるのだから躊躇する理由というのが思い浮かばない。
「殺しても死体から暫くは毒が採取できる」
「じゃあ、どうするの?」
「ここに帰って来れないようにする....。私たちは撤収」
キノがその子に外套を被せ誰にも見られないように建物の屋根に登ると、人々の死角を縫いながら集落の外へと出る。
エナも土の魔石を使い床下に簡易的なトンネルを作ると建物の中から脱出し、集落の外へとでる。
「何してるの?」
「毒ばっか食べて嗅覚も無くなった?臭い」
エルタネ国の外壁近くの木の下に子供に外套を被せてもたれかけさせる。お湯を鍋で沸かし、タオルにそれを含ませ男の子の身体を拭きボロ雑巾のような服ではなくフード付きのキノやエナの外套を短く半袖にしたベストのような服を着せていた。
「キノ、この子の髪洗ったのはいいけどしっかり乾かしてあげなきゃ」
エナが男の子の背後に周り清潔なタオルで髪の毛を拭くとザリザリと細かい砂のような汚れが出てくる。
「エナが乾かしてくれると思った」
「はいはい。それ終わったら手伝ってよ?」
「嫌。ご飯の準備」
マジックバックから半円の真っ黒な大きな鍋を取り出す。鍋をどかし、焚き火に直接乗せると油を入れ加熱する。
「消化のいいスープとか作るの?」
「そう」
再び腰のマジックバックから、ソーセージにニンニク、鷹の爪を取り出し鍋に入れた。ジューっとソーセージから油が溶け出しニンニクのほのかな香りが周りに広がる。
「どこがスープ?」
「スープパスタ」
「ああ、なるほど」
何処かで納得したかのようにエナがやっていた作業に戻る。キノも乾いたタオルでそれを手伝いあっという間に鍋の中のものもできた。
「お姉さん達俺を殺さないの?」
「なんで?」
その疑問にキノが更に質問で返す。
「だって、俺二人のこと殺そうとしたんだよ?」
「別にそんなの気にしてないよー」
「それで殺すと、毒に汚染された血を被って私たちも死ぬって作戦?」
エナの声とは対照的にキノが鋭い言葉でナイフのように抉る。
「チッ」
「わぁ、私たちのこと殺す気満々なんだねー」
小さな椅子をキノの分も取り出したエナが鍋を囲うように座る。
「お前みたいな奴は殺しても殺さなくても組織のことを考えて死ぬ時も喜んで死ぬから殺さない」
「それで、どうするんだ?このまま俺を放置か?お前らの良心は俺を思い出すたびに痛むだろうなぁー」
「そんなことしない。国の中で生きてもらう」
「は?どうやるんだよ?そんなの無理だろ?」
「なんで?」
「だって俺はお前たちを食い物にしてるような奴らの仲間だぞ?それを餌が沢山あるようなところに放り込む真似したら、お前らが捕まるだろ?」
正論のように聞こえるが、キノはため息すら出ないほど呆れていた。




