第491話 終幕
第491話 終幕
「何ここ?普通の家に見えるけど?」
「ここに煙突ない。それどころか、窓もない。集落全体で煙突から煙をモクモク出して毒調合してるから変」
「変ってどう言うこと?」
「毒には調合を必要としない毒。生物毒がある」
「何それ?」
聞きなれない言葉にエナがキノに聞き返した。
「生物で新しい毒を作ると強力になる。キノコがいい例。鉱石からも毒は取れる。キノコは土壌から色々な毒を吸わせて鉱石毒の数倍の力を発揮させることもできる」
「その知識どこから知ったの?」
「誰だろ?記憶が虫食いの頃だから小さい時?生物調合はただでさえ容量や調合が難しくて時間が掛かるから完成品を盗めたら万万歳」
「1回の嫌がらせで戦力を削げるわけね....」
あやふやに答えキノとエナがその建物の中に入る。
すると、中は真っ暗で何も見えない。キノが入口の扉を閉めエナが掌に魔力を込め、幾つもの光の玉を部屋の中で浮遊させる。
すると中にいたのはその場にへたり込む10歳くらいの子供であった
「だれ?」
「理にかなってるけど胸糞悪い。生物は生物でも人間か....」
「人間も毒になるの?」
「たくさんの毒を食べさせて混ぜるのに人間は適してる。余計な成分はあっという間に排泄される。肝臓がでかいから毒で死ににくい。それに毒の効き目もその身を盛って知れて言語で伝えられる」
キノのその言葉にエナが言葉を飲み込み、光でわずかに照らされた地面に置かれた真新しい食事を見ると、その周りには不自然に息絶えた蝿が転がっていた。
「お姉さん達は誰?」
「私達は冒険者。貴方達の集落の人に襲われてここにいる」
「そっかぁ、僕やっと殺されるんだ!」
そう言う声には期待が込められていた。
「君は死にたいの?」
その声に疑問を抑えられないエナが声を絞り出す。
「そうだよ。僕は非力だし心臓も良くない。だから、ただそこにいるだけで価値があるように沢山の毒を飲んで血液を毒として大人達に提供する対価で生き永らえてる。僕は生きていたいけど、苦しむ人がいるのも知ってる。自分で終わらせる勇気はないから誰かに終わらせて欲しいんだ」
「分かった終わらせる」
「ありがとう」
キノがゆっくりと近付くと地面から床を突き破って出てきた雑草を踏み潰す。
雑草に書かれた魔法命令文。それがキノの魔力を吸い、足に絡みつく。
そしてそのまま脚まで浸食し、ギリギリとキツく締め上げていった。
「キノ!!」
魔法を使いその拘束を剥がそうとしたエナの脳裏には魔力を帯びた攻撃をすると地面の草が自分を襲うのではないかと躊躇する。
「ごめんね、こんなことしたくないんだけど死にたくないんだ。素直に帰ってくれればこの子たちも手荒なことはしないから」
「あー、大丈夫」
キノがそんなこと意に返さずゆっくり歩く。
巻きついていたはずの草が静かに戻り何もなかったかのように歩く。
「なんで?何で脚が引きちぎれないの?」
「自分の魔力を糸状にして草の中をかき混ぜた。身体から離れた魔力の操作苦手だから至近距離でしか使えない」
「何だよそれ?狡いじゃん!!!」
「狡くない。生存戦略。嘘をついたお前だって狡い」
「畜生が!!!」
キノの姿が消え、背後から子供の口を塞ぐ。身体にも鋭利なもので掘った魔法命令文が何度も再生しては掘った溝から肉が盛り上がり治癒した跡が残っていた。
「見た感じ貴方が不快感を感じたり、血を抜きすぎると発動するタイプの固定術式。草に焼いて書いたのは触れた魔力を逃さないようにする固定術式。両方ともなってない」
「はぁ?どう言うことだよ!?」
「おっと、うるさいからエナ黙らせて」
「はいはい」
キノが倒した草を踏むとどうにか術式に沿って動こうとするも力なく地面に広がる。
「何す....」
バチん!
出した杖を首に当て先端から閃光が出る。
「声を一時的に出せないようにしたよ。印字の魔法で私の魔力で魔法命令文を書いたから、それが消えるまでしか効果は続かないけど」
「この子の魔力で作用するタイプ?」
「いや、今回は私の魔力だけで作用するようにした。この子の魔力が後どれだけあるか分からないし、こんな体力で魔力切れになったら命に関わるでしょ?魔力が切れて大声出されるのも嫌だし」
「自身や他者に強化紋を付与するエンチャウンター御用達の魔力回復薬もあるから問題ない」
「えー、あれ激まずじゃん。高いのに、ゲロゲロ吐かれたらやる気失くすんだけど?」
「やる気無くさないために撤収する」
「でも以外だな。キノもそういう薬使うんだ。私が調合した以外のやつ」
「怒ってる?」
先程と比べてもあからさまに不機嫌になったエナ。流石に色々なことに無頓着なキノが気付くほど出会った。




