第489話 攻め込み
第489話 攻め込み
「キノ、レネゲイド制度ってあるけどあれってひょっとして....」
「あれ近い。国内で居場所のない人は貴族にもいる。それを放置したらクーデターを起こされてこういう半端者を産む。だから、国が制度として管理して、国の周りに領地を持たせて防衛させ、好きなことをさせる代わりに一定の成果を国に還元する仕組みの制度を作ってそれをレネゲイド制度って呼んでる」
「しっかり管理されてればこうはならないんだ」
エナが安心したようにホッと胸を撫で下ろす。
「一歩踏み間違えてこうなる輩はいるけど」
キノのその一言にギョッとしながらもどことなく安堵する。
「くそ、なんで俺たちは生まれが違うだけでこんなに見下されなきゃいけないんだ!くそ!恵まれて生まれた奴らがそんなに偉いのか!くそ!」
涙を浮かべ、空を仰ぐ。最初に襲ってきたやつから誘発されるように周りの20人も次々に口を動かし、不満や不平を漏らしていく。
低音での悪口に男や女と言った区別はない。ただただ、思っていたことをどんどんと口にする。
「生まれは関係ない。私たちから金品奪うようなことをしてれば当然」
「生まれが綺麗なだけで勝ち誇ってるやつに言われたくない!!」
「エナ、行くよ」
「うん....」
キノがその場を後にしようとした時に最後に木の上から落ちてきた者の身体を丁寧に仰向けにし、身体についた土埃を払う。
そして、身体に異常はないかを調べながら短く聞く。
「1番遠くにいたから長?私達は貴方達を肯定することも否定することもしない。強い毒の調合は自己流?」
「自己流も何も、採取を繰り返し、毒を手に入れる。そして、それをさらに強くした。でなければここでは生きていけない」
キノが長というぐらいだから嗄れたヨボヨボの老人を想像していたが、実際はキノ達よりも少しだけ大人びた20代半ばの金長髪の女性であった。
「まぁ、そうだよね。国の外に頻繁に少人数で出るのなんて冒険者。資源も充分に確保できなくて充分な武器も強い肉体もないなら毒を盛るのが1番手っ取り早い」
エナが辺りを見回すも、魔法を使わなくてもここにいる若者のレベルが年齢よりも低いことは明らかであった。
10代後半頃までは何もしなくてもレベルは上がる。なので、何もしないと落ち出す20代の頃までは年齢よりも自身のレベルが低いということはほとんど無い。
魔力が増え体も成長さえしていればレベルは上がるからだ。このように栄養失調などで身体にハンデを抱えていない限りは....
「殺すのか?私達を!?一歩間違えればお前らがこっち側だったんだぞ!」
「しない。切ない。ただ、それなりの代償は貰う」
キノの目配せにエナも気付き、煙玉を使い視界を奪うと、キノとエナの姿は消えていた。
「村だ!私達の拠点が襲われる!!解毒が済んだ足の早いものは急いで留守番組に知らせろ!」
長のその言葉を聞くや否や、1人の女性が森の中を走り出す。あっという間にひとりぼっちになり、森を駆け抜け平原に出ると背後から襲われる。
森と平原の境目の木からキノが飛び降り、背後から口に手を当て何かを食べさせた。




