第481話 刺激的
第481話 刺激的
キュポンキュポンと壁に吸着した足を前に出し鼻歌混じりにどんどん降りていく。
「楽しそう」
「多少はねー!自分で魔法使う感覚とはまたちょっと違うし、この壁に張り付く感覚が癖になりそう!」
その場でエナが足をわざとらしく外したり壁に着けたりしている。
「あ、」
「え?」
キノが何かに気付いた様な声を上げるとエナの足裏からブーツが僅かに離れる。装備品のブーツとエナの身体が離れたのだ。
すると、足と身体に掛かっていた魔法が消え去り下にそのまま落ち、キノを追い抜いた所で左足の裏がまた壁にくっ付いた。
「この壁に施されてる命令文は、『登録された魔力を壁に貼り付ける』。足の裏がブーツから離れたら魔力が感じ取れなくなって落ちる。ちゃんと片方を壁に付けてからもう一歩を踏み出さないと落ちる」
「そう言う大事な事は最初に言ってよ!!!」
「今言った」
キノがゆっくりとまた歩き出す。エナのように走り出そうとするそぶりは全くなく、まるで散歩のようにぬるっと動くのだ。
「私の身体が離れるだけで張り付かなくなるなんて絶対設計ミスでしょこれ!」
「仕様通りに使わないから。魔法で複雑な動きや命令はできない。書いたものが結果として出るから、過程がない」
「だからってこれじゃ安心して歩けないでしょ!?」
「歩かせるじゃなくて張り付かせるためのもの。落下防止」
「えー、だからっておかしいでしょ?」
「おかしいのは私達」
キノが背後を向き、両足が離れるように軽く壁を押す。頭から綺麗に真っ逆様。影で違和感に気付いたエナがそれに驚き、一歩を踏み出すと見ていた風景が一瞬でも溶け、地面がどんどん大きくなる。
右腕に魔力を流し『印字』の魔法で術式を組むと自分の腕の骨を変形させ壁に突き刺し勢いを止め、反対側の手の甲からはもう一つ分体の外側になるように自分の手の骨だけを複製し、キノの頭が地面に衝突して踏み潰したいちごのようにぐちゃぐちゃになる寸前に足首を掴んだ。
「落下防止だから壁の上の方にしかない訳なのかー!」
「下まであったら魔物に悪用されないとも言い切れない。私達の理解が及ばない魔法を使う」
「大事な事は前もって言って!!」
「速射魔法で『印字』を使って死体の形を弄るときに使う魔法を使ったんだ。魔法使うの上手くなってきた」
「速射魔法でこれ使おうとすると少し雑念が籠るだけで上手く形成されないからね。強度も落ちるし正解でしょ?」
「そうだね。元々魂を縛ったり死体の形を変えたり結合したりするのは一つの魔法の中で行われてるからその部分を正確に取り出して固定術式を作ったのは偉い。でも....」
くるっと足を起点に回り着地する。エナも魔法を解き、骨を元の形にするのだが傷口として骨が突き出た部分が残った。




