第480話 アトラクション
第480話 アトラクション
「今日は外で何するの?」
「材料集め。レイドみたいに沢山魔物も居ないし、報酬もない。でも、採取はできる」
「あくまでも乱獲をしないでもらえれば問題はありません。ダンジョンのように毎日急成長魔物がするというわけではないので、1つの種を狩り尽くさない。食物連鎖のバランスを崩さない。その2点にご注意下さい」
「分かった」
「上へはどう登ります?階段出しますか?」
「必要ない」
キノがぶっきらぼうに応え、首を横に振る。
外套の袖から峨嵋刺を滑り出させ無駄のない動きで壁の上部にブッ刺さるように投げた。
「お、改造峨嵋刺。相変わらず毒でえぐい事してそうですよね」
「最近は魔物の動きや生命活動を鈍らせるくらい」
「本当は?」
「魔物と別の冒険者鉢合わせて殺させる」
「わぁ、えぐい」
峨嵋刺の輪に魔力でできた糸を通し、地面に引っ付くように命令文を組み立て魔力に乗せて糸の先を固定する。エナの腰を抱えると二人の体が浮き、峨嵋刺に吸い寄せられていく。
「同じ女として自由奔放な生き方に憧れてるんだけどな」
そんな言葉が聞こえるはずもなく二人の体はどんどん上に上がる。
途中で峨嵋刺を引き抜き糸を付けた状態で上に投げる。系の先端は今度は地面ではなく壁に付けられた。
そんなことを数回繰り返す内に背後の街並みがエナの視界に映った。
ただただ、自分たちが暮らす国。同じ国とは言え遥か遠くの王族が住む領地までは見えない。しかし、自分たちの小ささを実感するには充分であった。
「よく焼き付けといて」
「キノは見ないの?」
「飽きるほど見た」
「キノはこの国嫌い?」
「クソより最低な人がいるけど、だから優しい人が引き立つ。好き」
「ならキノも見ときなよー」
「全員が普通な人になったとしても私はそっちの方がいい。好きなものが苦しんでるものなんて見たくない」
手の感触で漸く壁の1番上まで届いたと確信した。
「よく分からないけど、少しでも好きなものがそこにあるならちゃんと見なきゃ。今は今しかないんだよ?」
全く背後を見ないようにしているキノと、背後の光景に胸を躍らせる対照的なエナが次の目的へと進む。
「着いた」
峨嵋刺から糸を抜き、獲物の持ち手を壁から引き抜き、壁の上へと上がる。数十メートルの土壁の分厚さが頼もしく見えると同時に今いる位置を理解する。
「これ反対側に降りるの?」
「降りない。伝っていく。力抜いて来て」
キノが何の躊躇もなく壁の側面に一歩を踏み出す。
魔力を流して足裏に壁にひっつく術式を流し込む訳でもなくただただ普通に足を出したのだ。
「ちょっと!!」
そんなことをしたら落ちる....筈だった。
壁をエナが覗き込むと、キノが壁に垂直に立っており、エナを不思議そうに見ていた。
「何?」
「何で落ちてないの!?」
「外壁には登録されてる冒険者を魔力で判別して壁の魔力で張り付くことができる。名前言った」
「あれが登録だったんだ!!そう言う大事な事は言ってよ!!」
「今言った。習うより慣れろ」
踵を返し進みどんどん前に進むと落ちていく。
置いてかれないようにエナも同じように歩き出すと面白いほど壁に強力に足がくっ付いた。それだけではなく身体にも負担が掛からないように別の魔法も掛かったような感覚なのだ。




