第478話 気が向くままに
第478話 気がつくままに
キノも体格からは考えられないほどの大口をあけてどんどん食べ進めていく。
そして、早く食べ出したキノが早くに食べ終わった。
「まぁ、大好きな人と同じ仕事ができるのも悪くない」
「なにはゆったのきほぉ?」
「別に」
リスのように必死に頬張りながら食べるエナを見てため息を吐きながら手を拭き土製のグラスに入った食後の水をチビチビと飲んでいた。
「ご馳走様。美味しかった。幾ら?」
「ありがとうございます!お二つで2000エールなんですが、割引で1900エールで如何ですか?」
「それでいい。豆金ある?」
「えっと、実は切らしちゃってて....100エール引いて先生から沢山貰う作戦でした!なかったらいいですよ!」
「そしたら2000エールにされる」
外套の中の腰に付けたポーチ型のマジックバックから手探りでお金を入れた袋を出す。銅を丸めてこねくり回したかのような不思議な形の物を9個取り出した。
「はい、9個あった方がいい」
「わざわざありがとうございます!5つ分の大きいやつは使い勝手悪くて助かります!」
「使いやすいように千切ればいい」
「私にそんな力はありませんよ〜....ひょっとして、これ先生が千切りました?」
手元の豆金を見ると不自然にちぎった跡があり、どこなく繋がりそうなのだ。魔法で強化したとしても貨幣は強固な魔法で国が保護している。それを上回る強化の魔法など聞いたことない。
それができるのなら、今まで自分はどんなに凄い人に軽口を聞いていたのか?機嫌次第で死んでいたのではないかと冷や汗が迸った。
「人には千切れない」
「そうですよね!良かった!」
「それはダンジョンの魔物から出てきた。魔物は人の規格に当てはまらない。それと戦えると自由に予定を決められる冒険者になれる」
「私は一生、この宿屋の切り盛りでいいです....」
「そう。残念」
冒険者だから、フラフラしているのではなくフラフラしていても生活基盤がしっかりと整えられる冒険者だからこそ、フラフラする事が許されているのだと、そこでようやく悟った。
「キノ食べ終わった!!」
「じゃあ、出発。したい事は?」
「キノがしたい事したい!!」
「それが一番困る。歩きながら考える」
宿屋を出発し、ゆっくりと歩く。早朝に雨が降ったのか、石畳は濡れ燦々と太陽が輝いていた。
二人ともフードを下ろしているのだが、何もない。ポッと出の貴族であるキノがこの国で一番の領地を持ったという事実に対しての反応が来るかと思いきや、何も反応しないのだ。
「案外素顔晒して歩いてもみんな反応無いんだね?」
「みんな自分の事で手が一杯。それに、国で一番の領地を持ってる人より、少ない領地で莫大な利益を生み出す方が注目される」
「あー、確かにそっちの方が気になるかも!楽して稼ぎたいし!!」
「正直。やること決まった?」
「特に無いなー。キノのしたいことは?」
「天気がいいから散歩と探検。中だけじゃつまらないから、外にも出る」
「外って?もう外に私達いるけど?」
「まだ中。結構簡単に出られる」
テクテクと歩いていくキノにただ着いていく。途中でお店で香水を買ったり、他愛ない話をしたりして馬車に乗り、貴族領から平民区の壁際まで来ていた。治安のいい40番代の区域。その壁から突き出た小山で中にいる憲兵にキノが冒険者証を見せる。




