第477話 朝餉
第477話 朝餉
「じゃあ、出ていく。60万は元々の金額より高く取ってるだろうし」
「バレてました?」
「今の反応でバレてる」
「わー!!嵌めたんですか!!大盛りにするんで許してください!!」
急いでベーコンの肉汁滴るフライパンの中に3つ卵を入れて手早く目玉焼きにして3つに切るとバケットをよこにスライスし、分厚くマッシュポテトを塗ると、レタスやらトマトやら前日に仕込んでおいたローストビーフを薄切りにした意味がないほどたくさん乗せ、その上から赤ワインで作られた特製ソースを掛ける。
ここまでで調和の取れたバケットサンド。それをぶち壊すかの如く更に具材を下品に詰め込んでいく。
フライパンからは底に極厚ベーコンが敷かれた目玉焼き、乳脂肪分が高くねっとりとした千切ったチーズをまばらに置き、粒マスタードを分厚く塗ったバケットの蓋を置く。
1本丸ごとバケットの半分を更に横に半分に切って挟んでだけの馬鹿でかいバケットサンドがキノの前に運ばれた。
「頂きます」
キノの小さい口で一体このように馬鹿でかいバケットサンドのモンスターをどうやって食べるのか興味が湧く。
カウンター席の上に置かれたナイフやフォークなどのカトラリーには目もくれずにただただ口を大きく開きそのまま齧り付いた。
ミチミチとお肉の繊維が切れ、採れたて新鮮な野菜のジューシーさが口の中で迸り、ねっとりとした肉特有の油の旨さとそれだけだとタンパクだが、肉とよく合うチーズのうまさを確かめるようにモキュモキュと手でバケットサンドを掴み食べ進めていく。
その味はキノの顔を見れば明らかであった。無意識に唸り今にも満遍の笑みが溢れそうなその瞬間、
「キノ!?まだいる!!?何そのモンスター並みのご飯」
ボサボサ髪の毛を一つにまとめ、右肩に垂らす。黒い外套に正方形型の革でできたマジックバックを下げ勢いよく階段を降りてきた。
「朝ごはん。食べる?」
「無理。今何か食べたら全部吐く」
口元を抑えキノの食欲に呆れる。よっぽど昨日の酒が身体に来ているのか、心なしか肌艶に元気がない。
「これと同じやつ」
「はい!!お任せください!二日酔いでグロッキーなお客様でも召し上がれるように腕によりをかけて作らせて頂きますね!」
「人の話聞いてた?」
「人の話なんて聞いてたら冒険者できない」
「私も、人の話なんて聞いてたら赤字のホテルなんて経営する気には毛頭なれませんねぇー」
都合の悪いことは聞こえない都合の良い耳が生えた最悪の二人に反論する元気もなく、大人しくキノの横の席に座った。
「はーい、どうぞ〜」
「早くない!?もう作ってあった?」
「普通ですよー、ごゆっくり」
エナが座った瞬間に湯気が立ち上るキノと同じやつが出てきた。
「エナも来ると思ってあらかじめ頼んだ」
「用意周到だな!!」
「私の隣はエナだけ」
「それって....つまり!!」
キノから予想外の言葉が出てくるとエナの顔が赤くなり、ドキドキと鼓動が早くなる。
「どんなところにも来てくれるからありがたい。エナがいれば戦闘も近距離以外もこなせる」
「はいはい!そんなことだろうと思いましたよ!!.......頂きます!」
キョロキョロとフォークやナイフが入ったケースを探すのだが、キノが座っている方にあった。今の状況で声をかけることもなんだか釈然としなかったので、手で持ち上げ、ムッチリずっしりとしているそれに思いっきり齧り付いた。
「ん!美味しい!」
「口より歯を動かさないと垂れる」
キノの言葉が言い終わらないうちに自分のサンドの具材のバランスが崩れ、具材が滑って皿の上に落ちそうになっているのを感じ取り、そうなる前に食べ切ろうと必死にまた齧り付く。




