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[18万pv突破〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
お家取り潰し

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第38話 アクティブと崩れ去った信用

第38話 アクティブと崩れ去った信用


 身体中が水の中に入ったように重くなり、目を見開く。夜空のように鮮やかな藍色で塗りつぶした空間に星を散りばめたように輝く光の玉が浮かぶ場所に出た。


 身体は宙に浮き前へと進んでいく。沈むことはないのだが、浮かぶこともない。流れていく力に任されてすすんでいくような感じた。


「息止めてるけど、水の中じゃないから苦しくないよ?」


 声がしてようやく腹部にしがみ付いているキノに気がついた。身体には溶けた蝋のように空気が重くのしかかっていたせいか腹部に違和感があっても気がつけなかった。


「ブク....キボ...ボコ....ざん!?」


「そんなに焦らないで。ここは水中じゃない。息もできるから落ち着いて空気を吸うの」


 キノからのアドバイス虚しくユエルの口からは気泡が溢れ、溺れているようにしか見えない。一生懸命になって空気を吸おうとしているようだが、まともに呼吸ができるようになる気配はない。


「先ずは入っている物を全部抜かないとね」


 腹部にしがみ付いている手を脇腹に回し、指を立てて刺激する。


「こちょこちょこちょこちょ」


「イヒヒヒヒ!」


 擽りに耐えきれず、体を捻って笑おうとするユエル。しがみ付いている手を緩めたせいかユエルの身体から離されそうになる。


 咄嗟にユエルの脚に自分の足を絡め、身体を固定する。


「動きやすいようにスリットの入ったスカートにしようかと思ったけど黒いズボンで良かった。中が見えちゃう」


 自分の判断を英断とたらしめるように履いている黒いズボンに目を落とす。


「キノさん!?殺す気ですか!?」


「吸うためには先ずは吐かなきゃ。口で言っても分からないだろうし身体に教えたの。私がいないとユエルは外に出ることも難しいのに、先に行こうとするから」


「身体に教えるって響きがなんかエッチな感じが....。それより、状況を教えて下さい! 説明が無いから危なく私だけ外に出られない言い方じゃないですか!?」


「見せながら説明しようとしたらユエルが先走った」


「ちょっと!! あたかも私が悪いように言わないで下さい!! そして、私の胸に顔をうずめないで!」


 しがみつき位置を微妙に変え胸を堪能できる位置へと変える。


「減らないしいいじゃん」


「だめ!私の中で何かが減ります!?」


 その言葉を聞いて渋々と引き下がる。


「今の状況だけど、ダンジョンと外の間の境界面の中にいる」


「境界面ってこんなに広いんですか!? どこまで行けば外が?」


「無い」


「え?」


「このまま進んでも外になんて辿り着かない」


「どう言うことですか!?」


 予想を裏切る思いもしなかったその一言に驚きが隠せない。


「境界面は外とダンジョン両方の性質を持つ空間で出口なんて元々無い。私たちは風の魔力が異物としてダンジョンから吐き出された余力でこの中を動いてる」


「もし、これが止まったらどうなるんですか?」


「体内魔力はここでは意味をなさない。纏っている風の魔力が無くなったら私たちは分解されてそれまで。まぁ、ダンジョンないで大爆発が起こってもそれが外に影響しない理由が、この境界面のおかげって言われている。ダンジョンが組み変わる理由も分解されない魔法動物のおかげとか....」


「へぇー、タメになりますー。じゃなくて!? 分解されるとか一大事じゃないですか!? なんでそんなに落ち着いているんですか!?」


「それはここから助かる方法も知っているから」


 マジックバックの中に手を入れて先程の境界面に輪を書いた羽根ペンを取り出す。


「魔法生物の身体や魔石には綺麗な属性魔力が宿っていて人に扱うことができる。風の魔力で空間ごと切り取ればさっきみたいに吐き出されて外に出られる」


「何で一回で外に出られないんですか!?」


「予想より空間が広かった。さっきの3倍の魔力を込められるようにコードを調整したから大丈夫」


 淡々と語るキノの顔は自信に満ちているのだが、不安を感じる。


「キノさんは何でこんなこと知ってるんですか?」


「魔法生物の事は常識」


「そっちじゃなくて、ダンジョンからの脱出方法です。最深部か、空間の魔力が詰まったアイテムを使うのが脱出の常識なのに....。一体キノさんは何者なんですか?」


 その言葉を聞くと物思いに耽る。


「そうだ、確か昔に教えてくれた人がいた。だけど、その人を思い出せない。何で? ノイズが掛かっているみたいに思い出せない!! 邪魔しないで!!」


 何かを振り払うように頭を揺さぶるキノは今までの人とは別人のように思えた。


「馬鹿が!!集中しろ!! 」


 フードから耳元までニューッと伸びた黒い触手がキノの耳に入ると爆音で声を荒げる!その声は直接耳に触れていないユエルにも聞こえるほどだ。


「ごめん。取り乱した」


「冷静さを取り戻したならそれでいい。過去に想いを馳せるのは自由だが大事なのはこれからだからな」


 その一言には妙な説得力があり、小刻みに脈打つ心臓が落ち着きを取り戻すのが手を触れなくても容易に理解できた。


 落ち着きを取り戻してからの行動は早かった。ユエルの体にしがみつきながら片手を離し、輪を空中に書く。すると、そこから渦が生まれ二人が吸い込まれていった。そうして、落ちているのかも横に進んでいるのかも分からない境界面に別れを告げる。


「え?」


 渦に吸い込まれた後ユエルが目にした物はゴツゴツとした岩肌の天井。どうやら、ダンジョン入り口の洞窟内部のに出たのだが、体のいずれもが地面と接していない。


 空中に投げ出された体が背中から地面に叩きつけられようとしている。


 天井が遠ざかり、長い髪の毛がバサバサと音を立てて視界に入る。見なくても地面に近づき叩き落とされようとしていることが容易に感じ取れた。


(これ、まずい!!)


 体勢を変えようと身を捻ろうとするが触り心地の良い体が物語るように全く動かない。地面に叩きつけられるのを待つしかない。


 天井の風景が捩れたように乱れる。中からキノが出てきて、目に止まらぬ速さで壁を蹴り、ユエルの体を抱き抱える。


 猫のように柔らかい身体でしなやかな動き。地面にふわっと柔らかく羽の様にユエルを抱えて着地した。


「もう昼過ぎか....。お嬢さん、怪我はない?」


「は....はい。無いです」


 壁を蹴った表紙に捲れたフードからは女性寄りであるものの中性的で美形の顔に見つめられて頭が沸騰し、鼓動が強くなる。しかも、お姫様抱っこの様に抱えられている為、ユエルの脳内では様々な妄想が繰り広げられていた。


「起き上がれる?」


「起き上がれます!! ほら、この通り!」


 勢いよく立ち上がり洞窟の外へと歩き出そうとするユエルの左腕をキノが右手で掴む。


「そんなに急がないでもう少しここに居て」


「え!?」


 その言葉が思考力が著しく低下したユエルの耳にはこう聞こえた。


   私ともう少しここに一緒にいてと


「は....い。キノさんと一緒にいます!」


「ん? ありがとう?」


 会話のニュアンスが微妙に食い違っている事に気がつく事はなく洞窟の入り口で近くの岩陰に潜みながら外を見つめる。


「あの、キノさん....。手はいつまで繋いでるんですか?」


「必要な事だから繋いでる。私と手を繋ぐのは嫌?」


「そんな事ないんですけど、手が気になるって言いますか....」


 教会にいた身で物心付いた時から他の女性シスターと寝食を共にする閉鎖的な生活を送ってきた。


 病院へ治療をしに行ったりはしていたのだが、手を繋ぐというのは初めての事で手汗をかいていないか気になっていた。


「小さくて可愛らしい手。ユエルらしくて好きだな」


 手汗が全て蒸発してなくなる程のパワーワードがキノから述べられ、再び顔が熱くなる。


「見て、出てきた」


 外を覗き込むと治療用のテントの中からボロボロになったゲルドが出てくる。


」あんなに傷付いて。魔物を倒すためにあんなにぼろぼろになっているんです! やっぱりいい人ですよ!」


 自分をパーティに誘ってくれた良い人という先入観が抜けないらしく、ユエルが目を輝かせて訴える。


「その良い人が土地を勝手に買い占めて急な立退を要求する?あいつの本性が出てくるから見てて。気づかれない様に隠蔽をユエルごとかけるから」


「分かりまし....フグ!」


 返事をした口にキノが手を繋いでいない反対側の人差し指を触れさせ、無理矢理出る言葉を止めた。


「喋るのも禁止」


 喋る代わりにコクコクと頷く。キノが聞こえないぐらいの声量で魔法を発動させるのだが、特に身体が変化した様子はない。


 周りから見れば二人の姿は完全に風景に溶け込み、視認する事はできないのだがその凄さを知らないユエルが知る良しもない。


 そうやって、地面に膝をつくゲルドを見ていると後ろから執事らしき人が追ってきた。


 何かを話し、誰かを叱責している。距離があるので会話は聞こえないが、怒りに身が支配されている。


 極め付けは、ゲルドの落とした権利書を執事が拾い上げるのだが、離そうとしない。そのあと聞いた言葉が信じられないようだ。


 ぼろぼろの体で、体を引きずりながらも激怒するその姿には気高さすら覚える。


 キノが喋り出すのを確認すると右耳についた赤い菱形の宝石が付いたイヤリングをユエルの耳に被せる様に近づける。


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