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これから始まる

目を覚ますと、泣いている男性に手を握られた。

誰だろう?


じっと見つめると、何度も良かったと言われる。

身体が重くて、起き上がることが出来ないので

男性が手伝ってくれて、上半身を起こされる。

背には枕が置かれ

楽な姿勢で、その男性と見つめ合う。


「貴方は誰?」


でも、懐かしい気配。


そんな言葉しか出ないのに、彼はその渋くてイケメンな顔を

くしゃりと歪ませて

それから涙を手の甲で拭い。


「俺は、君の夫だよ」


あれ?夫?

私は男だったような気がするのだけど。

否、私は愛する者を失って地上へ。

ぼんやりしながら

自分の手を見て、頭を下げて身体を見ると

豊満な胸がある。


確か、小ぶりなはず。

小ぶり?じゃあ、やっぱり女性?

いつの記憶だったのか、悩んでしまう。


「大きい」


とあるフルーツを思い出すほど、大きな胸だ。

自分の手で掴んでみると、柔らかい。


「え?俺・・オレ?」


自分を言い表す表現が俺?私ではなく?

胸があるから女性なのでは?


自分が誰だか分からない。

あれ と思った時に頭が痛くて、顔をしかめる。


何も分からなくなって、涙を流している男の表情を見ながら

目を瞑った。




辺りは白い世界。

白い建物がいくつか見える。

どれも見知っている。

とても懐かしい。

『ここは、天界の風景じゃ』

可愛らしい容姿の天使なのに、老人が話す言葉を使う面白い天使が姿を現す。

「天使?」

天使は頷く。

『今 貴女が見ているものは、遥か過去の記憶。

自身が封じた遠い記憶の世界。

私は知らせに来たのじゃ。

貴女が気に掛けていた全てが、ようやく解決した。

あの天使は、もういない。

新たな命として、別の世界で初めからやり直しをする機会を与えられた。

交差する機会は、もうない。

もうルールを外されることもなく、貴女自身の考えと行動で道が開く。

貴女の傍には、貴女がずっと愛した人の魂を持つ者がおる。

全てを最初から2人で歩むことも可能じゃ。

どの世界へ行くのも、どの記憶を選ぶかも全て貴女次第。


私は、貴女には幸せになって欲しい』



ニコリと自然に笑みを作るその可愛らしい天使の傍らには、

容姿は普通だけれど、背が高く、とても爽やかな、でも芯の強い青年が寄り添っていた。


『そう・・』

ふっと息を吐き、私は穏やかな気持ちで

嬉しくて微笑んだ。


『貴女も見つけたのね。エミューヌ』


かつて一緒に白い羽根を広げて、天界での仕事をしていた部下の名を。

天使なのに、自分を愛してくれる者はいないだろうと豪語していた

可愛らしい彼女の幸せな姿を見て

忘れていた過去の、気にかけていた事が消えた。

全てに安堵して、その記憶は静かに眠る。

これも自分の意志。




そして、自ら選んだ世界と選んだ記憶は。






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再び眠りについたマキトを見て、天使2人は管理室へと戻ってきた。

歴史修正する為に、今回は数人補助の天使がいくつかの球体の前、

準備をしている。

先輩天使と青年天使がそれぞれ配置に着くと、一斉に視線を向けた。

『条件修正、準備完了』

『修正項目アップ完了』

『バックアップシステム起動開始』



『これより天界及び、天使管理室は、神様の勅命により

軌道修正が済み次第

arufula-167-WF-5の世界は、第4次静観管理体制に入る』

『了解しました』







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月日は流れて、エリクシアル国では王の回復をまって

新しく記念日が作られた。


宰相も回復に半年を必要とし、王子達3人は塔の幽閉から救い出され無事。

皆通常の生活へ戻った。

王女リーシェは、重症だったものの回復し

今は離宮で静かに過している。

自分がしでかしたことに反省出来るか問う前に、記憶錯乱の上に

記憶障害で幼児化してしまい、誰にも追求が出来なくなってしまった。

それは国にも当人も幸いだったのかもしれない。


バッフェル子爵は、爵位剥奪。

国外追放。

魔術師は、神の裁きなのか、その魔術の力を一切失った。

3人で共謀し、復興のどさくさに紛れて他国へ逃亡。


バーシャラン国の方は、魔獣討伐が中々大変な事になっており

復興まもなくのエリクシアル国から、魔獣討伐専門の騎馬隊が出向き

3か月で鎮圧。

ラシャ王子は無事で、

エリクシアル国の協力に感謝していると書状とお礼が届いた。



王城や王都は、小競り合いや戦いが5か月近くあったことで

破壊されたり、破損したり、人々が避難の為にいなくなったりと

瓦礫が多い荒れた感じだったものの、徐々に回復している。

修復には、将軍を始め軍が全面で作業にあたっている。


避難していた人々も少しづつ戻ってきているし、活気も戻りつつある。


ラゼスもマキトの体調が戻り、王や宰相の回復を待ってから

ラシエ村へ戻ることにしている。

「もうリーシェに振り回されることもないのに、何故また辺境の地へ?」

クルス王子は、王城に残って手伝ってもらおうと考えていた。

「ああ、辺境と言わせないように観光地にしようと思っているんだよ」

「観光地?」

「マキトにラシエ村の話をしたらさ。

女神への信仰で訪れる旅人を受け入れるように出来ていないから

いつまでも辺境のままだと教えてくれてね。観光地として村の皆に仕事を作り

もっと活性化したら、変わるのじゃないかと思ってね」


マキトの記憶は、あの日から戻らない。

異世界から来たことも、元が男だったという記憶も、

女神に似た姿をしているということも

そして、この地へ来てからの全て。


「そうか。ところで、彼女も連れて行くのか?

実際、まだ本当は夫婦ではないのだろう?」

内乱とされた騒ぎも沈静化。

もともと第2王女の個人的な騒動として、皆が巻き込まれたと判断された。

王女に諦めてもらう為に、マキトが妻役を引き受けたことは

王族・親族や重鎮らには先ほどの会議で露見された。


「ああ。本人は俺の妻役だったことも忘れているから、最初から教えているよ。

忘れてしまったのなら、また口説いていくだけ」



命が助かっただけでも儲けもの。

瀕死の状態から回復まで見守っていたラゼスは、

マキトが目を覚ました時の感動は忘れることは出来ない。

「2度と目を開けてくれないと思っていただけに、

何もかも忘れてしまっていても、生きていただけで

俺は良かったと思っている。

これからだよ」




その後、2人は交代要員の騎士2人とラシエ村に戻った。

ロッサは、裏切り行為を強要されたこともあったが

王弟を窮地に追い込んだことで、階級は下げられ

また初めからを了承した。

彼の婚約者とは、来年婚姻をすることになっている。

かなりの恩赦があったからだ。

バンハトは、元の騎士隊へ戻った為に

交代要員で、別の騎士達が選ばれた。


心配していた村の人々や村で待機していた警備隊に受け入れられ

平穏を取り戻した。

ラゼスがマキトと出会った頃の日常に戻った。

少し変わったのは、女神の森が観光地として発展し

女神の木彫りや絵や饅頭を販売する土産物屋や

宿泊施設が増え、村には人口が増え、旅人が増え、

村から町へと昇格。


記憶を失くしたマキトは、相変わらず宿舎でラゼス夫人と呼ばれて

家事や洗濯に勤しみ

気さくな王弟の正妻生活を満喫している。


補足すると、現在は、正式な正妻だ。

クルス王子を始め、兄王や皆が早くしろとせっつくので

記憶がなくても、話を聞いたマキトが

突然の求婚に快く了承したこともあり

村へ戻る前に、関係者のみ参加の簡易の式を挙げていた。





パンパンと、騎士達の使うシーツを広げて干している所へ

暇になったラゼスが、マキトの様子を伺いつつ、手伝いに来た。

「どれ、手伝うよ」

「有難う。その籠の中のその1枚で終わり」

「はいはい」

籠から真っ白になったシーツを広げると、石鹸の香りが漂う。

この穏やかな時間が続くといいなと思う。

マキトの言葉使いは、気が付いた当時から変わらなくて、

記憶が戻っても戻らなくてもどちらでもいいと今はラゼスは思う。

「これでいいか?」

パンパンと、2人で肩を並べて干しているだけなのに、何故か幸せを感じてしまう。

妻の手伝いというのもいいなあと思っている男に、

マキトはそんな男の想いも知らず微笑む。



晴れた青空、雲がぽっかりと1つ浮かんでいて

平和で穏やかな日。

洗濯日和。


「なあ、こうしてシーツを干しているとさ。

なんだか充実してるなあって感じて。その・・、幸せだなあって思うんだ。

あれ?これって既視感デジャブ?」

腰に片方の手を当てて、もう片方は親指を唇へ当て、首を傾げるマキト。


2人で和やかな雰囲気で空を眺めていると

目を離した隙に、しっかりと固定されていなかったシーツが落ちてきて

あっという間に風に飛ばされていく。

「しまった」

それを2人で追いかける。

「もう、何なんだよ~」

「風が強いなあ」

ついシーツが飛ぶのを防ごうと足が出た。

「あ、足で踏むな~せっかく洗ったのに~」

「少しだ。踏んだのは端だけだ」


奮闘の末、シーツを無事に捕獲したマキトの笑みに釣られ、ラゼスも笑った。



マキトが選んだ世界、そしてこれから始まる新たな記憶。












END



これで完結です。




まだ、文章が足りてないような感じなので

少しづつ手直作業中です。





意味が分からない方の為の補助的説明。

読みたくない方は、下記を避けて下さい。






























過去上級天使で女性、婚約者を失くし傷心で地上へ降りて転生して男性、

魂隠しをする為に、再度女性の器で保護される。

婚約者の魂と再会。これは、天界だけが事実を知っている。

最後は、記憶の中で、自らの意志で

自分が生きて行く世界を選び

今までの記憶よりも

新しく築く記憶を選んだという

話です。



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