表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S級探索者を死なせた男と呼ばれた俺だけが、彼女の生存ログを見つけてしまった  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/60

第42話 記録されていない映像

 リョウの証言の一部は、翌朝、文字起こしだけが公開された。


 音声は出さない。

 白河レナの名前を、謝罪消費に変えないためだ。


 掲示板は、荒れた。


 リョウ、やっぱり何か知ってたのか

 裏切りじゃん

 でもレナを救いたかったのは分かる

 分かるけど許せない

 久我が「許すとは言いません」って言ったの、逆に信用できる

 天城、どれだけ人を動かしてるんだ

 レナの周り、全員しんどい

 久我、頼む

 もう一人だけの救出じゃない


 久我は、それも保存した。


 許すためではない。

 忘れないためだ。


     *


 久我は、その夜から照合作業を始めた。


 白河レナの事故現場。

 羽村サキの事故現場。

 風穴ランナーズ第二事故

 馬場ケンジが残した欠陥実験映像

 過去十年分の未帰還事故

 配信アーカイブ

 切り抜き数

 コメント数

 同接

 保存されたスクリーンショット

 事故直後の掲示板ログ


 最初は、死亡処理された探索者の記録を探すためだった。


 だが、並べると別の線が見えた。


 同接が多かった場所ほど、階層形状の復元率が高い。


 切り抜きが多い事故現場ほど、座標の欠損が少ない。


 コメント欄が長く残っている配信ほど、音声ノイズの奥に地形情報が残る。


 逆に、誰も見ていない探索者ほど、地図が薄い。

 ログが短い。

 座標が途切れる。

 事故現場そのものが、存在しなかったように扱われる。


 ナツが画面を覗き込んだ。


「これ、何のグラフ?」


「事故現場の地形復元率と、配信データ量の相関です」


「難しい」


「見られていた事故ほど、場所が残っています」


 ナツは黙った。


 ハルカが言った。


「記録が多いから、復元材料が多いだけでは」


「その可能性があります」


 久我は別の地図を出した。


 白河レナ事故現場


 切り抜きが多く残っているカメラ角度の場所だけ、地形が異常に安定している。


 羽村サキ事故現場。


 保存アーカイブ一部欠損

 コメントログ断片


 地形は、ぼやけている。

 それでも、コメントが集中していた数秒だけ、足場の輪郭が残っていた。


 氏名不明の若い男の事故現場。


 同接十四人

 保存アーカイブ断片。

 コメントログ断片


 地形は、ほとんど欠けている。

 足場の輪郭も、途中で途切れていた。


 ナツが、ゆっくり言った。


「見られたところだけ、消えずに残ってる?」


 久我は答えなかった。


 まだ結論ではない。


 偶然かもしれない。

 データ量の問題かもしれない。

 保存形式の差かもしれない。


 だが、白河レナの声は第二事故の現場を見ていた。

 死者たちの階層では、コメントが声になっていた。

 善意も悪意も、そこでは形を持っていた。


 そして今、配信データの濃い場所だけが、ダンジョンの中で消えずに残っている。


 久我は、新しいフォルダを作った。


 配信データ・地形相関


 中に、最初のメモを置く。


 見られた場所だけが、消えずに残る可能性あり


 死んだ方が儲かるように作られた記録が、帰還の手がかりになっている


 保存しようとした時、ナツが声を上げた。


「待って」


 久我は手を止めた。


 ナツが、白河レナ事故現場の復元地図を指している。


「この角度、私の保存版にない」


「公式アーカイブには」


「ない。切り抜きにもない。少なくとも、私が持ってるレナの全保存データにはない」


 久我はその地形を拡大した。


 白河レナがゲートへ向かう直前。

 斜め上から、彼女の背中と帰還ゲートを見下ろす角度。


 公式カメラの位置ではない。

 ナツの保存版でもない。

 新人探索者の装備カメラでもない。


 誰も撮っていないはずの角度だった。


 だが、そこだけ地形が復元されている。


 久我は、画面を見つめた。


 記録されていない映像が、記録の中から戻ってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ