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S級探索者を死なせた男と呼ばれた俺だけが、彼女の生存ログを見つけてしまった  作者:


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17/60

第17話 公式遺体データは白河レナではない

 公開資料は、三人で作った。


 久我が証拠の順番を組んだ。

 ハルカが専門部分を監修した。

 ナツが、人間に読める形にした。


「いや、そこは“遺体データが別人です”を三秒で言わないで。人類は衝撃に弱い」


「事実です」


「事実を投げつける速度の話をしてる」


 ナツは画面を指した。


「まず、死亡確認書の署名が偽造。次に、添付データは実在する遺体データ。次に、白河レナとは一致しない。最後に、羽村サキさんの可能性が高い。順番。階段。人間は階段がないと落ちる」


「了解しました」


 ハルカが言った。


「私の発言部分は削らないで。特に再構成痕」


「分かってます」


 ナツは確認用動画を再生した。


 冒頭。


 死亡確認書の署名欄。

 瀬戸内ハルカ本人の証言。


『私はこの書類に署名していない』


 次に、公式会見映像。


 天城セイジの声。

 白河レナの遺体データとされた資料。


 そこで停止。


 ハルカの解説が入る。


『この損傷は事故当日のものではありません』

『この魔力残留は白河レナさんの戦闘記録と一致しません』

『そして、最も大きい矛盾があります』

『この遺体には、帰還事故による再構成痕がありません』


 画面には三つの赤い表示が並ぶ。


 事故当日損傷:不一致

 魔力残留:不一致

 帰還事故再構成痕:検出なし


 直接的な遺体画像は出さない。

 家族の写真も出さない。

 羽村サキの名前は、家族の許可を得た文面とともに出す。


 ナツが言った。


「これで行く」


 久我は確認した。


「出します」


 ハルカは短く言った。


「出して」


 それから、ハルカは画面の署名欄を見た。


「私の署名を使った。死因欄の訂正までは見る」


 ナツが少しだけ笑った。


「部屋の温度、さらに下がった」


「必要なら冷やす」


 久我は、異常映像の最後の声を思い出した。


『まだ、見られてる』


 見ているのか。

 見られているのか。


 今はまだ、分からなかった。


 久我は投稿ボタンを押した。


     *


掲示板は、三分で荒れた。


【確定?】白河レナの遺体、本人じゃない可能性

【大炎上】死亡確認書、監察医が否定

【悲報】オーロラゲート、説明不能が増える

【怖】じゃあ公式が見せた遺体、誰?

【速報】瀬戸内ハルカ、署名否定

【検証】再構成痕なしって何?

【羽村サキ】三年前の未帰還者と一致疑惑


 反応は、黒峰の時より重かった。


 草、という文字は少ない。

 怒りもある。

 疑いもある。

 だが、それ以上に怖さがあった。


 え、遺体違うの?

 じゃあレナは?

 死亡確認書偽造はライン超えすぎ

 ハルカ先生が言うなら重い

 瀬戸内ハルカって誰?

 探索者遺体確認のガチ専門

 この人、事務所にも公社にも平気で喧嘩売る人

 署名偽造されたらそりゃ怒る

 久我はまだ信用してない

 でも公式はもっと信用できない

 これ、レナだけの事件じゃなくない?

 羽村サキって三年前の未帰還者?

 低ランク探索者だからニュース小さかったやつ?

 待って、遺体戻らなかったって記録あるぞ

 じゃあどこからデータ出たんだよ

 怖

 怖いしか言えない


 すぐに、古いスレッドが掘り返された。


【三年前】中層下部・羽村サキ未帰還事故

【未回収】D級探索者、帰還失敗

【質問】低ランク探索者の事故処理ってこれで終わり?


 当時の書き込みは少なかった。


 誰?

 D級か

 また中層下部?

 遺体未回収なら仕方ない

 事務所小さいと報道されないな

 ご冥福


 今、その下に新しい書き込みがつく。


 三年前にこのスレ見てた

 まさか今つながるとは思わなかった

 低ランクだから流されたのか?

 うちの兄も未帰還で遺体戻ってない

 これ他にもある?

 レナだけじゃない気がしてきた

 未帰還者家族、今これ見てる人いるだろ

 きつい

 軽口言えないやつだ


 久我を疑う書き込みもあった。


 久我が出す証拠って、全部公式だけ壊してない?

 ナツ、ハルカ、羽村家まで久我側に見えるの怖い

 白河レナ生存説に都合よすぎる

 でも疑うための材料を出してるのが久我だけなのも怖い

 公式も久我も全部出せ

 全員疑え


 ナツは別画面で反応を拾っていた。


「疑い方が鋭くなってきた」


「当然です」


「腹立たないの?」


「疑いは必要です」


「冷蔵庫」


「ただ、公式だけを信じる空気はもうない」


 実際、そこだけは変わっていた。


 久我が完全に信じられたわけではない。

 白河レナの生存が公式に認められたわけでもない。


 だが、もう誰も、公式死亡確認をそのまま飲み込めなくなっていた。


 ナツが画面を見ながら言った。


「ここから会見来るよね」


「来ます」


 久我は別窓を開いた。


 オーロラゲート公式。

 天城セイジの会見予定。


 十五分後。


 早い。


 早すぎる。


 ハルカが横から言った。


「手続きミスで来る」


 ナツが振り向く。


「分かるんですか」


「こういう時、組織はだいたいミスにする。悪意じゃなくて混乱。偽造じゃなくて取り違え。隠蔽じゃなくて連絡不備」


「最悪」


「最悪だけど、効く」


 久我は、天城の会見枠を開いた。


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