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第9話 遭遇

 初日の夜は交互に馬車の中で眠りにつくことにした。


 ルロダンまでの道のりはだいたい3日から4日ほどかかるのだそうだ。


 ここまでの道のりは魔物もいなければ人っ子一人もいない静かな物だった。


 ゆらゆらと炎が揺れる焚火はどこか心を落ち着けてくれる。


 これで俺に心のゆとりでもあれば金髪美少女と二人で馬車の旅とかアホみたいなことを考えていただろうか。


「はぁ」


 ため息交じりに薪をくべる。


四刻よこくで交代しましょ』って言ってたけど時計なんてないよな。


 どうやって時間がわかっているんだろ。


 それに十二勇者物語ってもしかして過去に俺みたいな召喚者がいたってことだよな。


 そういえばここへ召喚された時もそんなテキストがあったような。


 んー、よくわからね。


 焚火があるにもかかわらず空に浮かぶ星々がとても綺麗だった。


 眠いとかそんなことよりずっと見ていられてしまう。


 この刀もよくわからない。


 斬って斬って斬りまくったにも関わらず刃こぼれ一つしないんだ。


 どんな名刀だよ。


 そんなこんなと周囲をとりあえず警戒しながら時間を潰しているとしばらくして馬車からリィナが降りてくる。


「交代の時間ですね。外はどうですか?」


「とくに変わりなかったよ」


「そうですか。何を見てるんですか?」


「ん? あぁ、星」


「星……綺麗ですよね」


「本当に綺麗だ」


「めずらしい……ですか?」


「ん? ああ、こんなきれいな星空を見るなんてなかなかできなかったからさ」


「星座についてはあまり詳しくはないんですけどあの大きく光る白色の星は光の涙って呼ばれてるのですよ」


「へぇ、なんでそう呼ばれてるの?」


「ルクサーラ様の光が届かない夜で届かなかった者達に向けられたせめてもの光と教えられました」


「なんだか深そうな話だね」


「はい。ルクサーラ様を信じる者は光の下で守られる。けど守られなかった信徒を救うためのものだと解釈してます」


 信じても守られないという負の側面がありながらも崇拝するっていうのは奇跡というメリットがあってのものなのだろうか。


 ただわかるのは思ってる以上に現実は厳しいんだろうなということだ。


 その厳しさに心が敗けないように救ってくれるのはある意味信じるって所なのかもしれない。


 信じる……か。


 そう言えば日本にいた時もそういうのから縁遠かったな


「よし! 俺も寝てくるよ」


「はい。ゆっくりおやすみくださいね」


「おう、いろいろ教えてくれてありがとうな」


「え? あ。いえ、はい」


「おやすみ」


 なぜか戸惑うリィナを横目に馬車へ入る。


 思いの外ぐっすり寝てしまった。


「ソラさん! 朝ですよ。行きますよ」


「ん? んー。あと5分」


「5分? 何を言ってるんですか?」


 その言葉を聞いて俺は即座に体を起こした。


「きゃ!!」


 なぜか横で驚くリィナ。


「ごめん。寝過ごした」


「い、いえ。お疲れのところすみません」


「いや、疲れてるのはお互い同じだろ。さて、今日も進むかぁ」


 伸びをしてから刀を腰に差す。


「はい。おねがいしますね!」


「まかせとけ!」


 軽めに朝食を済ませてから火を消して馬車を走らせる。


 馬の体力を考えて時折俺も降りたりして歩く。


 本当にのどかだ。


 魔物が出るかもしれないって話だから俺がいるわけだが昨日からずっと平和だ。


 もしかしたら何かあったりするのだろうか。


「リィナ」


「はい」


「昨日から魔物の姿とかまったく見ないけどこの道ってこれが普通なの?」


「んー……そうですね。スケイルハウンドやガジャネズミがいてもおかしくないのですが全くいないのが不自然なんです」


 なんだその魔物達は……。


 だがしかし、ここでそれらが一体なんなのか聞いてしまえばいよいよもって不安にさせてしまうかもしれない。


 くぅ、こういう時どうしたらいいのだろうか。


 そうだ。


「こういうことって結構あったりするの?」


「いえ、私の知る限りでは初めてです……何が起きてるのか私にも」


「そうか。ちょっと慎重に周りを警戒するよ」


「はい。お願いします」


 晴れた空、雲一つない美しい景色。


 昨日まで見えていたアーグレンの街並みはもう見えず優しい日差しが照り付ける。


 それから俺も馬車に乗って揺られる。


 その時だった。


 太陽を横切る一筋の影。


「ん?」


「どうしました?」


「空になにかが……?!」


 俺は息をのんだ。


 大きさはわからない。


 けれどそいつはゆったりと空を飛んでいる。


「リィナ、あれが何かわかるか?」


 手綱を持っているリィナの横へと行き同じ方向を見れるよう抱き寄せ指を指した。


「な?!……」


「あれだ」


「?! グリフォン……です」


「グリフォン?!」


 あの半分鷲で半分ライオンのやつか。


 太陽を横切り影が俺達の馬車を一瞬だけ包み込む。


 そして目を付けられたのが分かった。


「まずい。もっと走れるか?」


「やってみます!」


 馬車の揺れが凄まじい。


 空に浮かぶ黒い影が徐々に大きくなる。


 尋常じゃない速度で飛んでいるんだ。


 だめだ追い付かれる。


 どうしたらいいんだ。


 俺が何とかおとりになれないだろうか。


 鷲って確か目がいいはずだ。


 幸い今日は晴れている。


「合図を出したら横に逸れて!!」


「はい!」


 俺は刀を抜いた。


 磨き上げた刀を太陽の光に当てて反射させられるようにして……


「今!!!」


 俺は馬車から飛び降りた。


 この行動が的外れだとしたら俺はとんだ間抜け野郎だ。


 グリフォンの生態なんて知らない。


 でもあのままじゃ馬車ごと潰されてるかもしれない。


 結果。


 グリフォンは俺めがけ地面に激突した。


 大きく舞う土埃。


 気が付くと奴の爪が真横をかすめていたのがわかるほどに俺の隣の地面がえぐれていた。


 目立って正解だったってわけか。


 土埃が次第にはれて奴の姿があらわになる。


 鋭い前足の爪、獅子の下半身に鷲の上半身。


 そして始まる。


 甲高い鳴き声で前足を振り上げた。


「うお?!」


 俺は咄嗟に転がりそれらを避ける。


「ソラさん!!」


「逃げろ!!」


 なぜかリィナは杖を手に取ろうと躊躇している。


 そんな場合じゃないだろ。


「馬車で安全な場所にいけ!!」


「で、でも!!」


「俺は大丈夫だ。行け!!」


「わかりました!……ごめんなさい」


 さてさて……。


 こんな地面を深くえぐってあの速度で落ちてきても傷一つない魔獣? いや魔物? を相手に勝てるんだろうかな。

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