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葉っぱの勇者と聖女の果実探し -葉っぱ一枚から始まった異世界生活。その先にあるのは愛か、友情か-  作者: 地雷源のチワワ
第一章 異世界召喚

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第2話 異世界召喚

 これは俺が、まだ日本にいた時の事。


 体も重いままに思い玄関の扉を開ける。


「ただいま」


 そう言ったところで誰も返事なんかするはずもない。


 入る金の勘定もままならないままに若い時に住んだままの安いアパート暮らし。


 住めば都とはよく言ったもんだ。


 月明りすらない真っ暗な外を眺め、そっとカーテンに手をかける。


 気が付けば時計の針は0時なんかとっくに過ぎていた。


 いつものことながら、ため息がこぼれる。


 いつものように……いつもの習慣で俺の時間は溶けていく。


 何を変えるでも何をするでもなく、ただ流れる水の様に。


 けど今日はいつもの日ではない。


 自然と浸かれた体に瀕死の活力が躍り出す。


 颯爽と着替えてPCの電気をつけ酒と夕食を用意。


 この時間にもなると食事が喉を通らないから軽めのものをさっと用意する。


 食事が喉を通らなくても酒は通るのだから不思議なものだ。


 無駄に金をかけてるだけあって人生で唯一の楽しみかもしれない。


 そして相変わらず一人……


 ただただ黙々とゲームをするのだ。


 いつか早死にするだろうなどという余計なお節介が心の中を通り過ぎる。


 こればっかりは仕事で疲れていようと何のそのだ。


 なぜなら明日は……《《休み》》なのだ。


 今この瞬間、この時において体力は無限に等しい。


 そして、やるのは昔ながらのソウルライクゲー。


 もう熱中してから何年になるかはわからない。


 そんなやり尽くしたゲームで俺は、ある取り組みに挑戦していた。


 それは……恥部に葉っぱ一枚、斬れない刀と脇差という初期装備も脱ぎ去った装備で攻略を試みるという挑戦だ。


 こんな装備、一発でも喰らえば即死も同然。


 クリアなんて絶望的だ。


 でも……ここがたまらない。


 魔物や重厚感のあるボスとの一進一退の攻防。


 迫る剣撃、無慈悲に撃たれる強大な魔法。


 そして、それらを掻い潜る爽快感。


 そんな命を懸けているようなハラハラした感覚が癖になる。


 敵の行動の読み合い。


 短いアクションが反射神経を研ぎ澄ませてくる。


 それら一コマ一コマが織りなす無数に広がった戦闘。


 俺の心を虜にするには十分だった。


 その極限の緊張を味わって、もう何十回、何百回、何千回、何万回と死んだかはわからない。


 そんなどうしよもない俺が、いつもの様にはまっているゲームをプレイしている最中のことだった。


 戦闘途中にも関わらず唐突に見たことのないクエストが表示された。


「ん? 今いいところだっていうのに……」


 変なテロップが戦闘中にも関わらず表示された。


「ええっと? 勇者と呼ばれし十二人が紡ぐ唄? なんだこれ……」


 右上にある×印のクローズボタンをクリックしても閉じない……


 ウイルスか何かかと疑ったけれどゲームは正常に動いている。


 ウィンドウも閉じないし……仕方がない。


 バッサリと敵に斬られゲームオーバーの文字。


「……はぁ」


 静かな溜息。


 不具合か何かなのだろうか。


 けどアップデートがあったわけでもないし新クエストの追加なんて聞いてない。


 とりあえず開きっぱなしのクエストウィンドウをクリックして内容を見ることにした。


 するとそこに書いてあった文言は今までやってきたゲームの内容とは異色のものだった。


「かつて我こそが主であると争った神々いた。その神々は災厄と混沌をもたらし世界を破滅に導く」


 そんな壮大なクエストの出だし。


 葉っぱ一枚のキャラの姿で壮大なクエストの導入を聞くと言うのはなんともシュール。


 少し笑ってしまうような状況では、あるもののクエストの内容を読み続ける。


「その破滅に抗いし者達は魔となった災厄の象徴を退けることに成功し平和が訪れた。しかし……再び危機に陥らんとする世界を其方の手で救ってはくれないか?」


→『はい』

『いいえ』


「なんだこれ……?」


 意味もわからない説明。


 『はい』と『いいえ』の選択肢が表示されたけれども…… 


 一応ウィルスとかで悪戯されてるのかとPCを再起動しても治らなかった。


 ネットで調べてもそんなクエストは出てこない。


 仕方もないし内容は気になるので俺は好奇心から『はい』を選んだ。


 瞬間、かすかにノイズのような変な音が聞こえた。


「な?!」


 びっくりして思わずヘッドセットを投げる。


 しかし、しばらくしてそのノイズの正体がヘッドセットではないことがわかることになった。


 そしてノイズというのか騒音にまで匹敵する音にびっくりして立ち上がると同時に……


「何が起きて────」


 俺は目の前が真っ暗になった。




 ここは……どこだろう。


 真っ暗で何も見えない。


 なんだかぼーっとしているような不思議な感覚。


 すると機械音声のような女性の声が聞こえた。


「生命を構築。人種《ひとしゅ》読込中……読込完了。氏名、カタナシ ソラ。年齢28歳」


 周囲は何があるのかわからない光の中感で異質な音声は響く。


「使用装備読込開始。ヒトヒラの葉……エラー。心元無ノ鈍刀《こころもとなしのなまくらとう》……エラー。再度実行……エラー。再度実行……エラー、再度実行。致命的なエラーを検出。エラーをスキップします」


 何が起きているんだ。


 このヒトヒラの葉だったり心元無ノ鈍刀《こころもとなしのなまくらとう》といえばあのゲームの装備だ。


「エラーを修正。読込完了」


 なんだか何事もなかったかのように読込を完了してる。


「魂の転写を実行……転写完了。続いて経験の引継ぎを実行……引継ぎ完了」


 魂の転写?!


 俺は死んだのか?


「天性を獲得」


 天性?


 そんな疑問も言葉にならず無慈悲にも無感情に続ける機械音声は続ける。


「無理のある功績により『力のある凡人』を獲得。幾億もの仮の命を消費した功績により『億の死を超えし者』を獲得」


 獲得?


 何が起きているんだ?


 そもそも天性ってなんなんだ?


 またエラー音が鳴り響く。


「……大量のアルコールを検出。『魔に疎まれし者』を獲得。以上……当該天性を反映に成功」


 大量のアルコールって……。


 瞬間、何者かに俺の胸に光の球のようなものが押し込まれそうになったのでそれを避けようと藻掻くも何もできない。


 まるで体がないような変な感覚であったことに今更気づかされる。


「六番目の勇者召喚の儀を受諾……接続完了」 


 その言葉と同時に真っ暗な空間の中で次第になにか暖かい光に包まれ始める。


 待って!!


 天性って何?!


 それと六番目の勇者?!


 俺ってどうなったの?


 声にならない声で叫ぶとノイズ交じりに微かに女性の声が聞こえた。


「だ──うぶ。あな──らきっと──。────をおねがい。また巡り会えることを……」


 そんな優しそうな女性の声だけが残り真っ白の光があたり一面に広がった。


 この出来事は今の……カウンターに座り酒でやられた脳でも鮮明に覚えている。


 そんな光に包まれて俺は目覚めた。



 ひんやりとした床、今まで嗅いだことの無いような焦げ付くような匂い。


 その違和感以上に異常な歓声をあげる周囲の人々。


 もう何が何やらわからなかった。


 喜んでる人達が口にしている言葉が一体なんなのかが何故かわかるようになってきた頃。


 この国の司祭だか神官のような恰好をした男が言ったのだ。


「成功だ。やった!! 光の神は見放さなかったのだ!! 勇者様が!! 勇者様が現れたのだ!!」と。


 それに続くように他の人も歓喜の声と共に同じように言う。


「あの光はまごうことなき勇者様!!」


「あぁ……ルクサーラ様は我々をお見捨てにならなかった!」


 勇者? 


 ルクサーラ様?


 そして、ただ単純に喜んでいるだけでない、この異様な空間に俺は寒気を感じた。


 皆が皆、切羽詰まってるような怖い表情をしていたからだ。


 どこかおかしい。


 けれど、その違和感が一体何なのかわからなかった。


 それ以上に、この寒気の正体が予想外の所にあることに気づく。


 ゆっくりと下を見た。


 そして……俺は自分の体を二度見する。


「は?」


 なんと……


 身に着けていたのは腰に妙にくくりついている刀一本。


 恥部を覆っている葉っぱが一枚だけだったのだ。


「なに……これ……」


 周りの人の口ぶりからして異世界に召喚されたらしい。


 でもなきゃこんな夢みたいな展開を信じられない。


 いやだめだ。


 そんなわけあるか。


 また飲みすぎたんだ。


 これはひどい夢なだけだ。


 そうに違いない。


 でも……息を吸えば吸うほど。


 周りの匂いを感じ音を聞けば聞く程に……


 ここが疑いようのない現実だと思い知らせてくる。


 そして俺は酒を飲んでいたはずにもかかわらず嫌という程に意識もはっきりしていた。


 加えて体も気持ちが良すぎる程に軽くなっていた。


「それに……葉っぱ一枚ってこれじゃまるであのゲームの……」


 そう言いかけた瞬間、広間の大きな扉が吹き飛んだ。

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