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葉っぱの勇者 -葉っぱ一枚で始まる愛あり、友情ありの仲間との絆が紡ぐ異世界召喚冒険譚-  作者: 地雷源のチワワ
第二章 ナヴァルタスの亡霊

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第13話 違和感

 ひんやりとした澄んだ空気が肺を満たしていく。


 気が付けば雲と同じ高さまで来ていたことに驚きつつ異世界の自然の壮大さに圧倒された。


「ここからがアメリア領です!」


「ようやくかぁ。けど、すごい山だね」


「はい。ここからずっと北にザンドラレル領、トランドノート領、レイヴィス領があるのですがそれぞれの領にかけてこの山脈は広がっています」


「へぇ、もしかしてアメリア領って結構広かったりする?」


「そうですね……住める場所は限られているのですが管轄する地区はかなり広いですね。王都の5倍くらいの広さがあるってお父様が仰ってたのを覚えてます」


「あの都市も大きかったけどここはもっとでかいんだね」


「ほとんど山なんですけどね……ですが、ここまできたら目的地まではあと少しですよ」

 

「わかった!」


 日数にすればとても短かったと思う。


 けれど、なんだかすっごい旅をしてきたって感覚だ。


 まあ、これでリィナの依頼は達成するわけだからパーティが解散した後はどうしたものか。


 そういえばギルドがあるって言っていたから、そこで何か仕事を紹介してもらったりとかできないかな。


 身元不明の人間でもギルドで仕事を受けられるだろうか。


 リィナに頼んで保証人になってもらったりとかできたり……


 いや、なんかあったら迷惑がかかりそうだからやめておこう。


 それから、しばらく進むと薄い白い膜? のような物が見えた。


 王都を出る時に見たものと同じ物だ。


 その不思議な膜を超えてまたしばらく進むと谷の奥に町が見えてくる。


 この谷の入り組んだ地形を利用した防壁と街づくりがとても趣深い。


 それらを利用した段々広がる畑は健康的な緑色に染まっておりところどころ紫色の果実が成っているのが見える。


 辺境……って片田舎って意味だろうか。


 そう言うには結構大きい町だ。


 加えて少し離れたところの丘にお屋敷が見える。


 もしかしてあれがリィナの家だったりして……


「あれが私の故郷ルロダンです!」


「やっとついたね」


「でも、おかげさまでずいぶんと速く着きましたよ? ありがとうございます!」


「お礼を言うにはまだはやいぜ?」


「ふふ、そうですね?」


 ほどなく町の入口に着くと見張りの兵士がリィナにお辞儀をする。


 そして丁重な対応を受けていた。


 街中へと馬車が入場する。


 それから俺は見慣れない恰好をした人間がいるのに驚いてつい凝視してしまった。


 いや人間ではないのだけども……


 それはふさふさの耳、ふさふさの尻尾、獣の友達で見たような人達がいた。


 ケモミミの女の子だ。


 あの垂れるしっぽの根本ってどうなっているのだろう……


 別にケモナーというわけではないのだけれど心の中で歓喜の言葉があふれ出し終には、この一言に収束するのだった。


「なんか……生きていてよかった」


 興奮が冷めやらぬ間、リィナに奇異な目で見られていることに気づくのはもう少し後のこと。


 しばらくすると変な違和感に気づく。


 見られているような……


 でも、それ以上に行き交う人達や街中はなんだか少しさびれてしまっているような感じもあった。


「なんだか……とても静かです」


「静か?」


「はい。もっとこう……活気があったはずなのですが……」


「活気がねぇ……でもさ。どこかこう……なんだろうな?」


「はい。ソラさんが言おうとしていることはわかります。どうしたのでしょうか……」


 そんな言いえぬなにかをリィナも感じている中で知人らしき人をみたリィナが声をかけようとした途端目を逸らされてしまった。


「なにか、おかしいです……」


「そうだな」


 そんな違和感を抱えながら屋敷へと通じるであろう一本道に建つ門へとたどり着く。


「ここを管理されている兵士の方とお話してきますので少し待っててくださいね」


「ああ、わかった」


 それからしばらくするとリィナの声が聞こえてきた。


「なんでですか?! なんで入ってはだめなのですか?!」


 なんだかただ事じゃないぞ、と思い一旦そこへと向かう。


 詰所に入るとリィナは困った顔で憤っており、対してこの国の鎧をまとった兵士はえらく焦っていた。


「リィナ様、落ち着いてください。レジナード様より誰も入れるな。と言われておりまして……」


「お父様がどうして……でもお屋敷への街道を開く許可を出してくださいませんのはどうしてですの?!」


「それは……私たちにはなんとも……」


「レイは……騎士長のレイヴェインはどちらにいますか? いつもは守護騎士団詰所にいますよね?」


「レイヴェイン様は……今、お屋敷に……なんとか私達もリィナ様がお帰りになられたことをお伝えしますのでいましばらくのご辛抱を」


「んー!! 皆さんもヒナの体調のことは知っているでしょう?!」


「ヒナ様の体調は……とても心苦しい限りでございます」


「先日、この手紙が届いたのです」


「は?! これは……」


「レジナード・イル・アメリア……お父様からのお手紙です。内容はヒナの石化病の進行です。だから……だから私は早く帰らないといけないんです!!」


 すると兵士は信じられない物でも見るかのように息を飲む。


「なんと……早急に対応いたしますのでどうかご辛抱を……一介の兵では何も出来ない無力をどうかお許しください」


 俺は憤るリィナの前に出て落ち着くよう促した。


「はぁ……そうですね。ごめんなさい」


「アメリア邸に連絡を取りますので……いましばらくお待ちください」


「そこに私を! はぁ……」


 そこで言いたいことをぐっとこらえるリィナ。


「申し訳ありません……ところでリィナ様」


「なんですか?」


 ムッとしているリィナに対して兵士は焦った表情から一変してそれを今聞くか? と思うようなことを聞いて来た。


「お食事はお済ですか?」


 リィナはそれに対してなんで今それを聞くのかといわんばかりの表情で返す。


「今はそれどころじゃないです! 早く伝達を────」


 そう言いかけたところで俺は話を遮る。


「いやまだ摂ってない」


「お時間を頂戴しますので……よろしければグリィの料理屋に寄ってみてはいかがでしょうか?」


「グリィの料理屋?」


「はい。リィナ様が馴染みのあるお店と伺っております……」


「わかった。行ってみるよ」


「ソラさん?!」


 それから一旦俺とリィナは詰所を後にして外へと出る。


「あの? どういうことですか?」


「いやさ。時間もかかるって言ってたからさ」


 リィナが知る故郷の様子ではないと感じる違和感と周囲の目。


 この詰所の兵士の突然の料理屋へ行ってはどうかという提案。


 あまりにもおかしすぎる。


 あの兵士も何かおかしいがリィナの事をなんだかよく知っていそうな感じもあるしとりあえず、その提案に従ってもいいだろう。


 そして俺はリィナの耳元でささやいた。


「リィナの家に行けない理由が何かあると思う。一旦グリィの料理屋って所にいってみるとしないか?」


「何か? はい……わかりました」


 それから俺達は馬車を停留所に置き料理屋へと向かった。


 目的地の料理屋へとリィナに先導してもらい辿り着く。


 グリィの料理屋という古びた看板。


 扉の横にある立て看板には『よってらっしゃい』の文字。


 建物は石でできた壁。


 変わった石細工が施されており、その土地の文化を感じられるようなものだった。


 木材で作られた屋根と飛ばないように置かれた石の瓦。


 煙突からは煙が出ており香ばしい良い匂いがしてきて食欲をそそる。


 こんな状況じゃなきゃ観光気分を満喫していたんだろうなぁ……


 木製のおしゃれなドアを重そうに押すリィナ。


 中はお昼時ということもありにぎわっていた。


「いらっしゃーい! 今いっぱいでね。カウンター……」


 そう言いかけた途端、中年の女性が驚いた表情でお盆に乗っている料理を落としてしまうのだった。


 次の瞬間、中年の女性は周囲を軽く見てからつぶやく。


「リィナ……様かい?」


「ただいま。メリラおばさん!」


 すると駆け寄る二人は深く抱きしめあうのだった。


「お元気そうで何よりです!」


「そりゃあたしのセリフだよ! 王都が襲撃されたって聞いた時はすごい心配したんだよ?! 背、伸びたんじゃない?」


「たくさん修業してたくさん食べてますからね!」


「こんな……こんな立派になってまあ……敬語なんか使っちゃって生意気なぁあ!」


「おばさん痛いですよ?」


 もみくちゃにされるリィナ。


 メリラおばさんはリィナの2倍はある体躯に少し威圧を覚えるがとてもやさしそうなおばさんだ。


「あんた! ちょっとあんた!! リィナ様がいらしたよ!」


 メリラおばさんは厨房へと呼びかける。


「なんだ? リィナ様?」


「そうだよあんた」


 そして厨房より顔を出したのは白いエプロンととんがった帽子をかぶってふかふかな髭を生やしたやせ男だった。


「あのちんまい嬢ちゃん……か?」


「お久しぶりです。グリィおじさん」


「うおお。なんで前もって来るって言ってねえんだ。ろくなもん仕入れてねえぞ!!」


 それから店内では「ろくでもないもん食わせてんじゃねえ」や「うめえ!」、「ろくでなしの食材でこれか!!」なんかが聞こえてくる。


 しばらくの歓迎ムードが終わりカウンター席へと案内されるリィナ。


 それとは対照的に俺は蚊帳の外だった。

 

「それでそこのあんた。おひとり様かい?」


 というメリラおばさんの一言。


「あ、はい……」


 なんだか、その場の空気と雰囲気に圧殺されてしまいつい一人であると返事をしてしまった。


「ソラさん何してるんですか?! こっちですよ!!」


 リィナはさっきまでの不機嫌さがまるで嘘のよう。


「ええ?! あんたリィナ様のお連れさんだったのかい? そうならそうと早く言いなって!!」


 バシンっと背中を叩かれる。


 それは思いの他強く前へと勢いよく押し出されてしまうのだった。


「グリフォンより強かったぞ今の」


 ぼそっとつぶやいたつもりであったがメリラの一言が続く。


「なんか言ったかい?」


「いや何も……」


 耳もグリフォン以上なのかもしれない。


「はい。こちらがメニューだよ」


「ありがとうございます!」


「よしてよ、水臭い」


「こう見えて私……聖女ですから!!」


「なったのかい?! 聖女様に?!」


「はい!!」


「よくやったね?!」


 リィナが聖女になったことを喜ぶ二人。


 見ていて、まあなんと微笑ましいことだろうか。


 しかし聖女ってなるものなのか?


「お祝いをしなくちゃね? ひとまず料理が決まったら呼んでおくれ」


 そう言ったとたんに「メリさん水!」、「おかわり!」と他の客。


「はいはい! 話したいことはたくさんあるけど……今は久しぶりのこのお店を楽しんでね」


「わかりました!」


 そう告げてメリラはドコドコと足音を立てて去っていく。


「さすがはリィナの馴染みの料理屋だね」


「小さいころ何度もお世話になったお店なんです」


 物思いにふけるように周囲を見渡すリィナ。


「そういえば王都の連中はリィナのこと僧侶とか言ってたけど聖女と何か違うの?」


「えっと、そうですね。厳密にはルクサーラ神様の前では皆平等でありますが行使できる奇跡や信徒としての格で呼び方が変わるんです」


「へぇ。聖女ってどのくらいすごいの?」


「そうですね。私はもう10年程修行してようやくって感じですので……」


「10年?! そりゃすごいな。聖女になるとどうなるの?」


「聖女はですね。ルシス・オーヴィクスを祈りにより展開できるのです!」


「へ? ルシスなんて?」


「う~ん。光の防壁って呼ばれているのですがソラさんもご覧になってると思いますよ?」


「ああ! もしかしてあの町や王都を覆っていた白い膜のこと?!」


「はい。あれは魔物や邪のある者を寄せ付けず中に入れないようにできるのです」


「そんなすごい物だったんだ……それで安全が担保されているってことかぁ。というかそんなすごいことができるの?!」


「ふふん」


 どや顔で胸を張るリィナ。


 ぽよんと揺れる胸に目がいってしまい目を逸らす。


 家の良さと容姿の良さに加えて大きい……なおかつこの秀才っぷりなのだから本当に弱点がないな。


「それなら馬車で移動してる最中もそれで魔物から身を守れたんじゃ?」


「いえ、それはできないんです」


「どうして?」


「光の防壁は教会や聖堂で祈りを捧げる事で出来る奇跡なのです。魔石で作られたルクサーラ神様の像がその役割を果たしていると聞いています」 


「なるほど……媒介となるものが必要ということか。でもグリフォンと戦った時に見たあの光の壁は?」


「ルミニ・マルスですね? あれはまた違う奇跡なんです」


「へぇ、いろいろあるんだなぁ」


 メニュー表を貰っておいてなにも見てなかったことに気づき俺はメニュー表を手に取った。


「ま、教えてくれてありがとうね」


「どういたしまして」


「とりあえず頼もうか」


「そうですね」


「リィナは何にするの?」


「私はいつものを頼もうかと」


「ほう……それじゃ俺もせっかくだしリィナと同じものにしてもらおうかな?」


「きっとソラさんも気に入ると思いますよ? ここのクロカは美味しいんです!」


 クロカ、つまりパンの種類の一つなんだけれど地域によって味や形が違うのだとか。


「へぇ、期待させてくれるね?」

 

 それからメニューも決まり「決まりました」とリィナがメリラおばさんを呼んでくれるのだった。

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