手紙×存在
「柘榴君やないの!!」驚きながら走ってきたのは隼都の母親だった。
「さっき、手術終わったとこなんやで」あまり寝ていないらしく、目の下にくっきりとクマをつけている。
「隼都は…」
「ごっつ生きてるで。ただ…」
「ただ?」
「…意識が戻らへんの」
「意識が…?」
「医者の話では、もうそろそろ戻るらしいんやけど…。今はまだ会わんほうがええ。でも、これは渡さんとあかんかな」それは一通の手紙だった。
「これは?」
「手術前に隼都の病室で見つけたんや。もちろん中、読むような野暮なことはしてへんで」そして笑ってみせる。弱弱しい笑みを何とも言えずに見ていた。手渡された裏を見ると、確かにざっくんへと書かれている。懐かしい筆跡。メールで済ます現代には、少し古風な印象があった。
「ありがとうございます」
「ごめんな。また意識戻ったら連絡するわ」そして悲しそうにその瞳が翳った。
本当は一番悲しいに決まっている。それを隠して更に苦しんでいる。俺の力のせいで、皆が不幸になる。隼都の顔がよぎる。そこでふと我心の顔を思い出した。そういえば、慌てすぎて謝ることさえ忘れていた。隼都はもうすぐ目を覚ます…と信じよう。その前に、我心と会ったほうがいいのかもな。そんなことを思いながら帰っていた。
「そういえば手紙…」封を乱雑に破る。手先がもう少し器用だったら、美術の成績も上がるだろうか。
切れ端が風に吹かれて飛んでいく。自分の字よりもずっと上手い、少し右上がりの文字が顔を覗かせる。それだけで安心した。今ここに隼都の存在があるようで…




