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秒速100m  作者: 楼榮 槐
1巻
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14/23

手紙×存在





「柘榴(ザクロ)君やないの!!」驚きながら走ってきたのは隼都(ジュント)の母親だった。

「さっき、手術終わったとこなんやで」あまり寝ていないらしく、目の下にくっきりとクマをつけている。

「隼都は…」

「ごっつ生きてるで。ただ…」

「ただ?」

「…意識が戻らへんの」

「意識が…?」

「医者の話では、もうそろそろ戻るらしいんやけど…。今はまだ会わんほうがええ。でも、これは渡さんとあかんかな」それは一通の手紙だった。

「これは?」

「手術前に隼都の病室で見つけたんや。もちろん中、読むような野暮なことはしてへんで」そして笑ってみせる。弱弱しい笑みを何とも言えずに見ていた。手渡された裏を見ると、確かにざっくんへと書かれている。懐かしい筆跡。メールで済ます現代には、少し古風な印象があった。

「ありがとうございます」

「ごめんな。また意識戻ったら連絡するわ」そして悲しそうにその瞳が翳(かげ)った。

本当は一番悲しいに決まっている。それを隠して更に苦しんでいる。俺の力のせいで、皆が不幸になる。隼都の顔がよぎる。そこでふと我心(ガシン)の顔を思い出した。そういえば、慌てすぎて謝ることさえ忘れていた。隼都はもうすぐ目を覚ます…と信じよう。その前に、我心と会ったほうがいいのかもな。そんなことを思いながら帰っていた。

「そういえば手紙…」封を乱雑に破る。手先がもう少し器用だったら、美術の成績も上がるだろうか。


 切れ端が風に吹かれて飛んでいく。自分の字よりもずっと上手い、少し右上がりの文字が顔を覗かせる。それだけで安心した。今ここに隼都の存在があるようで…






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