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「正座ぁ!」


ガンギレキンタくんである。


「は?え?」


幽霊のおっさんは混乱している!


「いいから正座しろぉ!」


「はっ、はい!」


俺の勢いに負けて正座するおっさん。

説教タイム開始だ。


「おっさん、『お判りいただけただろうか?』って知ってるか?」


「はい?」


「そうだよなぁ、しらねぇよなぁ。ホラーにはな!基本があんだよ!」


前世でドキュメンタリーホラーを大量に見ていた俺には今回許せなかった事がたくさんあったのだ。


懇々と続く説教。

タジタジのおっさん。



♢ ♦︎ ♢



「俺がここを立派な幽霊屋敷にしてやる!」


言いたい事をとりあえずいい切った俺はそう宣言した。


「ありがとうございます!」


最早おっさんはいいなりである。

まずは何から取り掛かろうか。

やっぱ一番気がかりなのは。


「まずは人形さん。あんただ。」


ビクリとする人形さん。

自分に話が来ると思ってなかったのだろう。


「人形さん、あんた何よ?おっさんが操ってんの?」


人形さんは首を横に振り否定する。


「じゃあなに?」


「あ、物神だと思います……。」


おっさんが回答する。

物神?

おっさんに説明してもらい、九十九神だという事がわかった。


「なるほどね。じゃあ人形さんはおっさんと協力してホラー現象を起こしていたと。」


頷く人形さん。


「人形さん、人形ってのはあんまり派手に動いちゃダメなんだ。基本は目だけとか首だけ動くってのがいい。あとは急にいなかった所に現れるとかもありだな。」


ほへーっと感心してる感じの人形さん。

おっさんもなるほどなぁってなってる。


「おっさんもだ。すぐに気がつく心霊現象は基本的にあまり良くない。違和感があるな……?くらいから始めるのがいいんだ。」


こうして俺の指導は続いた。


「禁断のループ物に手を出してみるか!」とか「やっぱ幽霊は女性が基本だぞ!」とか。

正直かなり無茶も言った気がするが、おっさんは頑張ってついてきてくれた。


そして試行錯誤する事数時間。

最後にマイケルで試してみることにした。

リリア回収しないと。

あと他のみんなも。



♢ ♦︎ ♢



≪マイケル視点≫



「あれ?……ここは?」


俺が目を覚ますと、誰もいない。

広間に1人俺だけがいる。

確かさっきキンタと話してると、人形が来て……。


ブルっと体に寒気が走る。


キンタとリリアがいたはずなんだけど……。


「おーい、キンター……。リリアー……。」


なんとなく小声でキンタとリリアを呼ぶ。

返事はない。


あたりを見回すと壁際の棚の上に人形を見つけた。

さっきはあの人形でキンタがいたずらしたんだな……!


とりあえず移動しよう。

俺はそろりと立ち上がり、ズボンにドライとクリーンをかけると、扉の方に近づいた。

ドアノブを握った時、ふと背後から気配を感じる。

恐怖がよぎるがどうにも振り向かずにはいられない。


「誰もいない……よな?」


振り向いた先にはやはり誰もいない。

入念に確認すると違和感に気づいた。

さっきの人形がこっちを見ている気がする。


俺は慌てて扉を開けて飛び出すとそこは廊下だった。


左右を見て玄関ホールらしき方向へ向かう。

外に出よう。

窓から見えている外はもう夕方の様だ。

みんな俺を置いて帰ったのかもしれない。


早足で玄関に向かうと、急いで扉を開けようとする。

……開かない。

ガチャガチャと繰り返すが、開きそうにない。

鍵がかかっている様子はないのに。

背中を冷たい汗が伝う。


どうしよう。


ガタリ。

どこからか物音が聞こえた。

左右を見る。


すると玄関ホールから左右に伸びている廊下の先、俺が来た方とは反対側の廊下の奥に誰かがいる。

ぼんやりとした人影は次第に輪郭を表し、近づいてきている様に見えた。

人だ。

しかし直感が告げる。

パーティメンバーの誰かではない!


そう思った直後、人影は微動だにしないままスーッとこちらに近づいてきた!

やばい!


俺は元来た廊下を全力で逃げる。

突き当たりに行き着くとそこは階段だった。

一も二もなく駆け上がる。


二階に着くと廊下の方に逃げようとして何かを蹴飛ばした。

そこには何故か広間で見た人形が転がっている。

人形の首がクルリと回ってこちらを見た!


「うわぁーー!」


ついに俺は我慢できなくなり、声を上げながら階段を駆け下りた。


また廊下側に逃げようとすると、そこにはあの人形が立っている。

……!?

なんで!?


俺は再び階段を駆け上がろうとするが、何故か上りの階段が無い。

階段に取り付けてある窓をみる。

ここ二階だ!

さっき降りた筈なのに!


もう何がなんだかわからず、声にならない声を上げながら人形を無視して廊下を走る。

突き当たりの部屋に入ると、扉を開き閉じて、そのままもたれかかる。


「はぁっ、はぁっ。」


一息つき、部屋を確認する。

……書斎の様だ。


窓があるのでここを割って出ようか。

そう考えていた時、どこかから声が聞こえた。


「おーい、マイケルー!どこ行ったー!」


キンタだ!

真下から聞こえてくる!

おそらく玄関ホールだろう。


俺は勇気を振り絞り、来た道を戻る。

階段を降り、廊下を走り、玄関ホールへ向かった。


「おーい!ここだー!キン……!?」


玄関に立っているのは明らかにキンタでは無い。

長く黒い髪の毛を垂らし、赤いワンピースを来た女性だ。


「おーい、マイケルー!どこ行ったー!」


先程と全く同じトーンでその女性からキンタの声がする。

……罠だ。


俺は物音を立てない様に後ろを向くと、そのまま来た道を戻ろうとする。

直後。

「おーい、マイケルー!どこ行ったー!」

耳元で声がした。


右肩を不自然な冷気が撫でる。

目だけを動かし、右を見ると異常に目を剥いている女性の顔が至近距離にあった。


「君はもう、帰れないよ。」


そう言われ、俺は意識を手放した。




♢ ♦︎ ♢


「いぇーい!大成功!」


「いやぁ、やりましたねぇ!」


コクコク。

頷く人形さん。


俺、おっさん、人形さん大興奮。

やりきったぜぇ。

演出が俺、赤い女がおっさん、人形は人形さんだ。

ちなみにループ演出はおっさんのポルターガイストパワーでなんとかした。

三階は普通に塞いだだけだけど。


「いやぁ、これで満足しました!気持ちよく天に登れそうです。」


え?

おっさん成仏するの?


おっさんは満足したように身の上話を始めた。

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