心的外傷後
翌朝、おねぇちゃんはポタラさんが用意してくれたメイド服に身を包んでいた。
一応奴隷のメイドと言うことで、使用人達の方に加わり、俺担当という事になるようだ。
今日は一日コソコソ隠れながらおねぇちゃんの観察をする事にしよう。
あのキャラクターでやっていけるのだろうか……。
とりあえず今はメイド用の談話室に来ている。
ちょうどこれからおねぇちゃんが自己紹介するようだ。
「私、キンタさまに買っていただいた奴隷のリンと申します!よろしくお願いします!」
あれ?
キャラ違くね?
ていうか田舎で迫害されてたのにしっかりしてんな。
マルクさんの教育かな?
てかおねぇちゃんの名前今知ったんですけど!
リンちゃん!かわいい!
まぁおねぇちゃんは回復した今、ふわふわピンク髪赤瞳タレ目だし似合わない気もするが。
やっぱリンちゃんは黒髪黒目つり目よな!
その後もおねぇちゃんはそつなく挨拶仕事をこなし、特に問題は起こさなかった。
そして次は俺の部屋の掃除のようだ。
普通なら初日では任されないんだろうが、俺担当だから特別なのかな?
先回りして部屋に戻る。
ガチャり。
おねぇちゃんが部屋に入ってきた。
俺は昨日のポーションを増産中のふりをしている。
「はぁ〜あ、つっかれたー。キンタくん、肩もみおねがーい。」
なるほどなぁ。
「かしこまりぃ!」
俺は即座にベッドに座っているおねぇちゃんの後ろに回り込み、その細い肩をも見始める。
ついでに髪の匂いも嗅ぐ。
クンカクンカ。
……しかしなんでこの人は傍若無人おねぇちゃんが完璧なのだろうか。
素なのだろうか?
迫害されてたから知識なんてこれっぽっちもないだろうに。
いや……もしかして似たような事をされていたんだろうか?
うーむわからん。
ある程度肩を揉むと、あとはおねぇちゃんの指示に従って俺が掃除をする。
完全におねぇちゃんは休憩モードだな。
俺の紅茶のんでる。
そのまま掃除をしていると、おねぇちゃんの指示が途絶えた。
……寝てますやん。
まぁ体が治ったのが昨日。
体がどれだけ治ろうが、精神はまだ疲れているのだろう。
そもそも今日から働くってのもおねぇちゃんの希望らしいし。
事情をしるポタラさんは反対していたのだが。
色々とよくわからない人だな。
俺のために無理しておねぇちゃん演じてなければいいんだけど。
寝ているおねぇちゃんの横に座り、布団をかけてあげ、頭を撫でる。
「キンタくん……、ありがとう……。」
おねぇちゃんは涙を流しながら寝言でそういった。
泣いてまうやろー!!
そうだ!マルクさんとこに新ポーション大量に持ち込んで、他の欠損奴隷の人達も治そう!
それで、せめて普通の奴隷として扱えるようにしてもらおう。
掃除を切り上げた俺はまたせっせと新ポーション作成に取り掛かる。
1時間くらいがたった頃、おねぇちゃんが目を覚ました。
「あれ……?ここ……?……?」
寝ぼけてらっしゃる。
「あ、おねぇちゃん!起きた?」
「うぇ?……あっキンタくん……。」
「掃除終わったよ?てか、おねぇちゃん。無理して俺の理想のおねぇちゃんしなくてもいいからね。」
「ふぁーあ、よくねた。キンタくん何言ってるの?」
「だからね、俺の理想を演じなくても大丈夫だよ?」
「ふふっ、キンタくん心配してくれてるの?ありがと、おねぇちゃん嬉しい!でも大丈夫よ。だっておねぇちゃんサキュバスだもの、男をこき使うのも、男をシゴクのも、本能なの。」
なるほどなぁ。
「うーん、じゃあいいけど……。辛かったらなんでも言ってね。」
なんたって手足切られて目を潰されていた12歳なのだ。
昨日の今日で元気にしている方がおかしい。
PTSD的なのになっててもおかしくないはずだ。
「大丈夫よ。おねぇちゃん夕飯の準備してくるね。」
「うん……。」
一抹の不安を覚えながら部屋を出て行くおねぇちゃんを見送る。
本当に大丈夫なのだろうか……。
その後も夕食の時間以外、おねぇちゃんをコソコソ見守っていたが特におかしなところはなかった。
その夜俺は寝付いた振りをし、おねぇちゃんのいる住み込みメイド寮に侵入した。
ふぁー!
女子臭がすげぇ。
いや、今はそんな場合ではない。
おねぇちゃんを探さないと。
6人一部屋となっている寮の部屋をコソコソ回っておねぇちゃんを探す。
おねぇちゃんを見つけたのは一番奥の部屋だった。
おねぇちゃんと同年代のメイドたちが寝ている。
年齢別に部屋割りしてるのかな?
おねぇちゃんは一番手前のベッドで寝ていた。
静かに近寄る。
おねぇちゃんを見ると、静かに涙を流しながら、「やめて……、ゆるして……。」と、寝言を繰り返していた。
やっぱり。
不安的中である。
全然元気じゃないじゃないか!
相当無理していたんだろう。
この幸運を手放さないようにと。
俺は寝ているおねぇちゃんをそっと撫でてからお姫様だっこする。
そのまま女子寮を抜け出し、自室に向かった。
自室に着いた俺は自分のベッドにおねぇちゃんを寝かせる。
その時、おねぇちゃんが目を覚ましてしまった。
「ふぇっ!?」
「あ、おねぇちゃん、ごめん、起きちゃった?」
「あ、キンタくん……。あれ?ここキンタくんの部屋?」
「うん。ちょっと怖い夢見ちゃって、おねぇちゃん連れて来ちゃった。今日一緒に寝てもいい?」
「ふふっ、キンタくん一人で眠れないの?いいよ、おねぇちゃんが一緒に寝てあげる。」
「やった!」
俺はベッドに潜り込み、おねぇちゃんと手を繋ぐ。
「ライト、消すね?」
寝る体制を整えていたおねぇちゃんに聞く。
「ちょっと待って……、うん、いいよ。」
俺はライトの魔法を切る。
「それじゃあおねぇちゃん、おやすみなさーい。」
「うん。おやすみなさい。」
俺は目をつぶり、おねぇちゃんの様子を見るために寝たふりをした。
「キンタくん……。ありがとう。おやすみなさい。」
おねぇちゃんは俺を撫でながらそっと囁いた。
俺がおねぇちゃんを連れてきた理由バレてたかな?
まぁいいか。
その後、俺と手を繋いだまま健やかに眠るおねぇちゃんを確認して、俺も眠りについた。




