どれー
さて、本日はかねてより温めていた作戦を実行したいと思う。
それは……奴隷の購入だ!
実はコマ、お好み焼き、カレーなどなどで稼いだ金は一部お小遣いとしてもらっているのだ。
そして今回の魔獣討伐。
ご褒美として奴隷購入の許可を得た。
この世界の奴隷については事前に調査してある。
奴隷は3種類、犯罪奴隷、借金奴隷、エルフ奴隷だ。
このうち犯罪奴隷の一部以外は人権が認められている。
基本的に契約書を作成し、その内容に奴隷本人が応じるかどうか、奴隷側に判断権があるのだ。
もちろん奴隷側もハードルを上げれば自身が売れず、値段が下がり、さらに条件の悪い購入者しか来なくなるため、ある程度の妥協は必要になるわけだが。
俺が今回狙うのはおねぇちゃんだ。
今女性キャラ的には母親枠の母さま、幼馴染枠のマリナがいる訳だが、姉枠妹枠がいないのだ。
現状では妹枠は5歳以下となるので厳しい。
だからおねぇちゃんを狙う。
ちょっとエッチなおねぇちゃんがほちぃ。
最早俺担当と化したポタラさんと共に奴隷商館に向かう。
もちろん母さま紹介のちゃんとしたところだ。
「ようこそいらっしゃいました。私、奴隷商ギルド、アリツベルク辺境伯領代表、マルクと申します。」
商館に着くといかにもな小太りで丸メガネをしたおじさんが迎えてくれた。
後ろには奴隷の首輪をしたメイドが控えている。
てかギルドがあるんやね。
俺たちは案内されて応接室へ。
なんか高そうな紅茶が出てくる。
「さて、この度は当商館のご利用誠にありがとうございます。どういった奴隷をお望みでしょうか?」
「おねぇちゃんが欲しいです!」
俺は出来るだけ姉が欲しいだけの無垢な少年を装い答えた。
マルクさんにっこり。
ポタラさん苦笑い。
とりあえず年齢が10〜15歳くらいの女の子の奴隷を見せてもらえる事になった。
商館内はイメージと違って明るく広かった。
性別、目的、年齢別にフロアが分かれていて、動物園の様な部屋になって一人ずつ入れられている。
とりあえず10代女性借金奴隷のエリアを見せてもらう。
一人ずつと部屋の前に立ち、会話してみたがイマイチピンとこない。
何というかおねぇちゃん感がないのだ。
俺の理想のおねぇちゃんはモデル体型で傍若無人、弟を奴隷としか思っていないというタイプだ。
まぁこれは奴隷から探すのは不可能な訳だが。
次点としては頑張り屋なタイプかな。
うーむ。
我ながらめんどくさい。
そうだ!
元はといえば俺は奴隷に優しくして懐柔するパターンのやつがやりたかったのだ。
そのパターンの代表といえば欠損奴隷である。
「マルクさん、欠損奴隷とか特殊な奴隷とかっていますか?」
「ふぁ!?欠損奴隷ですか?」
無垢な5歳が欠損奴隷を見たがってびっくりしたのだろうか、マルクさんが変な声をだした。
「おりますが……。あまりオススメできません。坊ちゃんには刺激が強いかもしれませんよ?」
「大丈夫です!母さまにも社会の清濁合わせ飲みなさいと教えられています!見せてください!」
「なるほど、流石は辺境伯ですね。……ではこちらになります。」
連れていかれたのはベタに地下。
魔法照明で照らされているものの若干薄暗い。
おお、おるわおるわ。
今思えば、さっき見せられた奴隷達には悲壮感が全くなかった。
ここはもう悲壮感しかない。
「大半は冒険者稼業で手足を失った者たちになります。」
なるほどなぁ。
マルクさんの話によると冒険者も欠損したらすぐに奴隷というわけではなく、特殊な事情が重ならないと奴隷まではいかないらしい。
基本は冒険者ギルドも支援してくれるようだ。
それでもやはり不幸に不幸を重ねる人はいて、こうしてマルクさん等の大きな奴隷商が引き取っているらしい。
世の中ままならないなぁ。
もし自分がと考えるとつらい。
キリがないのはわかっているが、全員助けたくなっちゃうぜ……。
とりあえず余計なことは考えず、見て回ろう……。
うろうろとみて回っていると一人の少女を見つけた。
三角座りで壁にもたれかかり俯いている。
俺が見ていると、マルクさんが彼女に声をかけた。
「うぇ……。」
ゆっくりと顔を上げる少女。
その両目は明らかに人の手により焼き潰されていた。
またよく見ると手首足首から先も無い。
マルクさんに事情を聞く。
彼女は12歳で、田舎の村の生まれ。
どうやら魔族の血が先祖返りで発現したらしく、両親からも見捨てられ、村で散々痛めつけられた後捨てられたらしい。
偶然にもマルクさんの部下が奴隷の輸送中に捨てられた彼女を見つけ助けたそうだ。
だから本来商品では無いらしいが、本人の強い希望でここに入れているらしい。
出来るだけ迷惑はかけたくないからとの事だ。
……買う流れじゃろがい!
俺のポーションならワンチャン治るだろう。
治らなくても面倒見よう。
もうしゃーないわこれは。
治らなかったら一生この子に縛られる事になるかも知れないけど……。
やらない後悔よりやる後悔だよな。
「この子ください。」
マルクさんの目を見てしっかりと伝える。
「……わかりました。」
俺の覚悟が伝わったのか、マルクさんは少しの夋巡の上、そう答えてくれた。
その後諸々の契約をして、彼女を連れて行く。
命の値段は銀貨2枚だった。
俺は自分で彼女を背負って屋敷に向かう。
自分で面倒を見ると決めたのだ。
誰も手出しはさせん。
屋敷に着くと母さまは予想していたのか、「全ては救えないんだぞ。」と言いながら頭を撫でてくれた。
彼女を自室に連れて行き、ベッドに座らせる。
明るいところで見る彼女は目が焼かれ、手足がない以外は美しい少女だった。
マルクさんはしっかりと食べさせて、身綺麗にもさせていたのだろう。
痛いところはないか?お腹は空いていないか?トイレに行きたくはないか?等、まずは基本的な質問をする。
彼女は首を振って応えた。
ちなみにまだ彼女の名前は知らない。
マルクさんも知らなかったのだ。
彼女が何を思っているのか、今はわからないが、とりあえずポーションを試そう。
「これ、ポーションなんだけど飲んでくれる?」
彼女は首をふる。
「どうして?」
「……私に、そんな高価な物……使わないでください……。」
あぁ、なるほど。
「うーん、君にはね、俺のおねぇちゃんになって欲しいんだ。だから元気になって欲しい。俺のわがまま聞いてくれない?」
俺がそういうと彼女は少し考えた後、ゆっくりと頷いてくれた。
俺はポーションを彼女の口元に持っていき、少しずつ傾ける。
彼女は小さな口でコクリコクリとポーションを飲んでいく。
すると彼女の体が音を立てて修復を始めた。
「あっ…あっ…うっ……!」
痛むのか、彼女の口から声が漏れる。
少しずつ生える手足。
火傷が治っていく目。
痛そうだ……。
数分後彼女の手足は完全に治り、目の火傷は完全に消えていた。
……しかし、手足に力は入らず目は伽藍堂であった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……。」
謝り続ける彼女。
ふざけんじゃねぇ!
俺は諦めないからな!
こちとらチート貰ってんだ!
俺は薬草を取りに秘密基地に駆け出した。
もっとやべぇポーションつくってやる!
一人残された彼女は俺が部屋を出たことも気がつかず、謝り続けていた。




