バレました。
「本当に連れてきたのか……。」
「はい!紹介します!リヴァイアサンのくぅです!」
「きゅきゅーん!」
くぅは元気よく母さまに挨拶する。
「はぁ……。まぁそれはもういい。そろそろ君の正体を明かしてもらおうか。」
ええ!?なんでそんな話になんの!?
「え!なんの話ですか!?」
とりあえずとぼける。
「普通、5歳の子供が森からそう何度も無事に帰ってくるのは不可能だ。それに……、ポタラが見ていてな。」
「ポタラさんは…何を見ていたんでしょうか……?」
「何をだと思う……?」
母さまはニヤリと笑いながら俺を直視する。
そんなに見つめられたら……!自分……!耐えられんとです!!
「えっと、えっと、秘密基地の事ですか?」
「それは知っている。」
「え!?じゃああの……、お野菜ですか?」
「それはもう食卓に並んでいる。」
「ふえへ!?……じゃあ、なんでしょうか……?」
「少し前に魔物の軍勢が確認されたな?あの時ポタラは斥候として、敵軍の監視をしていてなぁ……。」
ええ!あれバレてんの!?
「えー……。」
流石にまごついてしまう。
「くぅーん。」
「きゅーん。」
おどおどしている俺を心配したのか、リリアとくぅが擦り寄ってくる。
優しい。
「まぁいまさら君が何か我々に害を成そうとしているとは思ってはいない。ただポタラの報告ではな、急に現れた君が魔軍の前に出た途端、次々と魔物が消え去ったと聞いていてな。実際のところ何をしたのか気になったのだ。」
あー。
なんて説明したらいいのやら。
こういうめんどくさい状況苦手なんだよ。
もう正直に言うか。
「殴りました。」
「は?」
そりゃ意味不明だろう。
「母さま、今お時間ありますか?」
「あ、あぁ。」
「一緒に訓練場に来てください。」
♢ ♦︎ ♢
ところ変わって訓練場。
夕方に差し掛かり、あたりは茜色に染まっている。
明日は雨かな。
ちなみにマリナとリリアとくぅは部屋で遊ぶからとついてこなかった。
「えーと母さま。あの的壊してもいいですか?」
俺は遠くに設置してある魔法練習用の的を指差す。
100mくらい先だろうか。
「え?……まぁ…構わないぞ。可能ならばだが。」
「じゃあよく見ててくださいね。」
「ああ。」
詳しくは知らないがあの的は魔法で強化されていて硬いらしい。
とりあえず5割の力で行くか。
周囲を念入りに安全確認して……。
「よいしょお!」
掛け声一発、的に向かって拳を突き出した。
大気を揺さぶる衝撃に、捲き上る砂埃。
突き出した拳に少し遅れて、的は消え去った。
「ふぇあ!?」
衝撃に驚いた母さまが可愛い声をあげる。
「母さま、見ましたか?」
俺、渾身のドヤ顔。
「み、みた……。」
母さまは返事をしながらも呆然としている。
そりゃそうだよな。
引くよな。
最悪母さまに捨てられたらリリアとくぅと一緒に旅でもしようか。
スローライフも悪くないけれど、冒険もしてみたいしちょうどいいかもしれない。
ま、とりあえずまだ保護者は欲しいんだが。
「母さま……、大丈夫ですか?」
「……はっ!?だっ大丈夫だ!」
「俺……、すっごく力が強いんです。それで、バレたら怖がられるって思ったんですけど、母さまが危ないって言うから、魔物……倒しに行きました……!俺、ここにいちゃダメですか?」
正気を取り戻した母さまになるべく情に訴える感じで話しかける。
母さまは俺の前で膝立ちになると、そっと俺を抱きしめた。
「いい……、いいに決まってる!君は私を……私の街も救ってくれたのだぞ!」
おぅ、情熱的!
「あ、ありがとうございます……。」
そこまで深刻に考えてなかったでーすとも言えずとりあえずシリアスな感じで返事をした。
ちょっと熱量に差があるわぁ。
出会って1年もたってないのに、情に厚い人だ。
「黙っているのも辛かったろう。私は君を怖がったりはせん!そもそも君は私の、もう私の息子なのだ……」
母さまは熱くなって語り始めた。
可愛い。
けど長い。
とりあえず話は聞き流しながら、抱きしめられてる素敵感触と、耳の裏からうなじにかけての香りを堪能した。
♢ ♦︎ ♢
情に熱い母さまは中々テンションが下がらず、今日はみんなで一緒に寝ることになった。
俺と母さまとリリアとマリナとくぅだ。
キングサイズのベッドだが若干狭い。
特にリリアがでかい。
確実にでかくなってるな…。
くぅは結構1人でいた期間が長かったらしく、みんなで寝られる事にはしゃいでいる。
「くぅ!くぅ!おいで!」
ネグリジェ姿の母さまがくぅを呼ぶ。
くぅは母さまに向かってすいーっと飛び、前で止まった。
「くぅ、すまない。今日は君の紹介の途中だったな。私はリリーナ、キンタの母だ。」
「きゅーん!」
母さまに擦り寄るくぅ。
母さまもナデナデして笑顔だ。
よかったよかった。
リリアとマリナは抱き合って早々に寝てしまった。
くぅもマリナとリリア同様疲れているのか、母さまに抱かれたままうとうとしている。
3人でどんな疲れる遊びしてたんだよ……。
「母さま寝ましょうか。」
「うむ!そうだな。」
みんなで布団に入る。
母さまが真ん中で右がマリナ、リリア。左は俺、くぅだ。
くぅも完全に寝てしまったな。
「……母さま。」
「なんだ?」
「俺、これからも母さまを守ります。もう少し成長したら、母さまの騎士にしていただけますか?」
「ふふっ、そうだな。私を守ってもらおうか。」
「正直、なんで俺にこんな力があるのかは言えません。でも、俺は、全力で母さまとこの街を守ります!母さまに危害を加えるなら、魔王だってぶっ飛ばしてやります。」
「ふふっ、君ならできそうで怖いな。」
優しく笑って答える母さま。
「さ、そろそろ寝ようか。」
「はい!おやすみなさい。」
俺も精神的に疲れていたのか、すぐに寝てしまった。
「ふふっ。この私を守るか。できる者などいないと思っていたんだがな……。頑張ってくれよ。未来の旦那様。」
母さまのつぶやきは寝入っている俺の耳に届くことはなかった。




