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俺は氷魔法で世界を手中に収める  作者: 木原ゆう
第二章 思惑と欲望の交差
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018 本部要請

 ミリアとのデートを楽しんだ俺は、夕方には彼女と別れギルドへと向かった。

 別れ際に少し寂しそうな表情になったミリアだが、それでも満足した表情で俺を見送ってくれた。


「ああ、クレルか。待っていたぞ」


 ギルド長のレグザが満面の笑みで俺を出迎える。

 この数日で、随分と俺に対する態度が変わったのがレグザだ。


「昨日は悪かったな。訓練学校のあとで寄るつもりだったんだが」


「いいんだよ、んなことは。で? 教師の仕事のほうは上手くいってるんだろう?」


 暑苦しい顔を俺の目の前に近付けてくるレグザ。

 説明するのが面倒臭い俺は「まあな」とだけ答えて湯を沸かす。


「ミュンヘン伯爵はギルド本部とも繋がりのあるお方だからなぁ。レイノお嬢様とも上手くいってると聞いたし、俺ぁ鼻が高いよ」


 そう言い高笑いをしたレグザ。

 恐らく、レグザは金に目が眩んでいるのだろう。

 能力に覚醒した俺を『金の成る木』かなにかだと思っているのかもしれない。


「レグザも飲むか?」


 珈琲豆を持ち上げレグザに聞く。


「いいや、俺はこっちがあるからな」


 ウイスキーの瓶を持ち上げ悪戯に笑うレグザ。

 仕事中に酒を飲む癖は相変わらずか。


「そういえば、この前言っていた本部応援の件なのだが、具体的にはどんな仕事内容なんだ?」


 珈琲を淹れながら手元の資料のひとつに視線を落とす。

 そこにはギルド支部への応援要請と日時しか記されていない。


「お? 受けてくれるのか?」


「内容によって、だがな」


 日時のほうはスケジュールを調整すればなんとかなるだろう。

 数日間はこの街を空けることにはなるが。


「ここのところ、ギルド本部近くの鉱山に凶悪なモンスターが出没するようになってな。ほれ、あそこの鉱山は《龍玉石》がたんまり取れるだろう? 本部も慌てて支部という支部に連絡してきてな」


 《龍玉石》というのは、非常に高価な原石だ。

 伯爵家のパーティなどでも夫人らは必ず《龍玉石》で作られた宝飾を身につける。

 そして――。


「……おいレグザ。また俺をからかっているのか? 《龍玉石》の取れる鉱山に出没するモンスター――。それぐらいのことを俺が知らないとでも思ったか」


 俺の鋭い視線にたじろぐレグザ。


「やっぱお前、成長したよなぁ。そうだ。あの鉱山には《巨龍種ドラゴン》が出没する。本部の精鋭でも手を焼いていてな。さすがに《巨龍種ドラゴン》となると、支部から派遣を申し出る奴もほとんどいないからな。《王立騎士団》のほうにも要請を出すんじゃねえかって話だ」


 《王立騎士団》。

 ギルドとは別の、国家が予算を提供し組織された精鋭騎士団だ。

 主に伯爵家から資金を提供されて運営しているギルドとは違い、王立騎士団は全国民の税金により運営されている。

 いわば国家権力が集約された組織――。


「さすがにグラッドやレックも今回は仕事を請けてくれなくてな。本部の手前、俺が直接出向くことになりそうなんだが」


 レグザが直接本部へ応援に向かうことなど滅多にない。

 それほど緊急を要するクエストだということなのだろう。


「……分かった。俺が行こう。しかし一つだけ条件がある」


「本当か! 条件とは何だ?」


 俺はニヤリと笑い、手元にある4枚の資料を掲げる。

 俺の受け持つ生徒の顔写真が入った資料。



「――技能開発科の生徒を、《巨龍種ドラゴン》の討伐遠征へ連れていく」





 ギルドでの仕事を終え、自宅へと戻った俺はさっそく遠征のための計画に入る。

 レグザは目を丸くしていたが、どうにか生徒らを連れ出す許可を得ることができた。

 通常ならば自殺行為だと罵られるのだろうが、ミュンヘン伯爵を通せば問題はない。

 俺は手元の資料に目を通す。


 リリィ・ベンダーズ。

 ゼシカ・ラインセル。

 アーリア・ホスダイン。

 ジル・シュナイゼル。


 奴らが秘めている『技』の能力は底知れない。

 俺が今後、成り上がっていくためには必要な戦力となる。

 今のうちに困難に立ち向かわせて成長させたい。

 

「リリィとゼシカは敏速型の戦闘スタイル……。アーリアは援護射撃型、ジルは万能型か……」


 まだ奴らの『技』は発展途上だ。

 ここで未知の『技』を俺が見出したとなれば、俺の評価は鰻上りだろう。


「くくく……。面白くなってきたな……」


 日々の生活にも飽き飽きしていたところだ。

 ここで大きな成果を挙げておけば、後々の計画もスムーズにいくだろう。

 問題があるとすれば――。


「……アーリア・ホスダイン……」


 訓練学校でも上位の成績を修める彼女だが、素行があまりにも悪すぎる。

 技能開発科に配属されてからも、初日の授業以外は全て欠席という舐めた女子学生だ。

 素行の悪い生徒に生活指導をするのは教師の役目――。


 俺は椅子から立ち上がり部屋を出る。

 時刻はもう深夜をとうに過ぎている。

 不良少女であるアーリアが出没しそうな場所は――。



 俺は肩を鳴らし、深夜の生活指導へと向かった。





















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