帰り道の約束
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます!
前話は少し重たい展開でしたが、今回は少し肩の力を抜いて読んでいただける帰路のお話です。
クラルたちの日常が、ここからまた少しずつ動き始めます。
ぜひ最後までお楽しみください!
翌朝。
クラルたちはリトスフェル村へ帰る前に、もう一度国家図書館へ立ち寄った。
最上階。
重厚な扉の前で、一人の司書官が恭しく頭を下げた。
「館長、お連れしました」
ガチャっと大きな扉が開く。
その瞬間。
「相変わらず堅苦しいねぇ、アルヴィー」
一瞬、空気が止まった。
若い司書官たちが思わず顔を見合わせる。「…アルヴィー?」
「館長を名前で?」
小さなざわめきが部屋を走った。
クラルは目をぱちぱちさせた。
「え?なんか空気おかしくない?」
部屋の奥では、アルヴェイン・ルクス館長が苦笑していた。
「そう呼んでくれるのは今となっては君くらいですよ、ステラ」
「何十年もそう呼んでるんだから今さらかえられないしね」
「勝手に私も肩書きだけが偉くなってしまいました」
昨夜、酒場で聞いた話を思い出す。
二人は昔、同じ冒険者パーティーだった。
……だからなのか。
クラルは思わずアルヴェイン館長とステラを見比べた。
いつもパン作りや料理が得意で、箒を振り回していつも私を追いかけているおばあちゃんだけど…
どうやら、この国で一番偉い司書も顔が上がらないらしい。
「昨日はあんな事になって本当にすまなかったね」
館長がクラルに頭を下げた…
「いえ」
「まだ検証が必要です。もしかすると、また協力を頼むことになるかもしれません」
その口調は終始丁寧だった。
ステラは肩をすくめる。
「また石本のことなら、その時はクラルも私も協力するよ」
「ありがとう、助かります」
「クラル、いつでも中央都市ミラに遊びに来てください、歓迎しますよ」
館長がニッコリ言ってくれた。
「ありがとうございます」
クラルは素直にお礼を言った
ーー
駅。
長い汽笛が鳴る。
蒸気が白く噴き上がった。
列車がゆっくりと動き始める。
窓の外でミラの街並みが少しずつ遠ざかっていく。
「あーあ…」
クラルは窓に頬杖をついた。
「もう少し居たかったなぁ」
「都会なんてこんぐらいがちょうどいいんだよ」ステラが笑う。
「また来ればいいのさ」
クラルは中指の指輪を見つめた。
窓から差し込む光で、青い石がきらりと輝く。
「なんでこんなに綺麗なんだろ……」
「気に入ったかい?」
「うん」
「おばあちゃんが初めてくれたアクセサリーだもん、宝物だよ」
ステラは少しだけ目を細めた。
「そうかい」
「抱きついていい?」
ステラが真顔で言った
「殴られたくなきゃやめな!」
ーー
ガタン、ゴトン。
列車の音だけが響く。
「……」
「……」
「ところでノアさん?さっきからいますけど…こんなに空いてる客車なのにどうしてわざわざこのボックスに?」
「……」
「……」
ノアはにっこり笑う。
「バレてた?」
「はい、出発前からいらっしゃるのには気づいてました」
ステラが言った。
「今日からノアはうちで一緒に暮らすんだよ」
「ふむふむ、なるほどねぇー」
「ふむ」
クラルは一度頷く。
「なるほど」
さらに頷く。
「つまり……」
三秒後。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
列車中に響くほどの声が飛び出した。
ノアは楽しそうに笑い、
ステラは耳を塞ぎ、
車掌が何事かとこちらを見た。
機関車は春の田園を駆け抜けていく。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回からは、クラルたちの新しい日常が始まります。
ノアとの共同生活もお楽しみに!
毎週 **金・土・日 20時10分** に更新しています。
作品を楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価(★★★★★)で応援していただけると、とても励みになります!
次回もよろしくお願いいたします!




