表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/24

新しい家族

今回は少し肩の力を抜いて、クラルたちの日常のお話です。


旅から帰ってきたノアも入って三人の、新しい暮らしを楽しんでいただけたら嬉しいです。


蒸気機関車がゆっくりと村へ滑り込む。


見慣れたホーム。


見慣れた風景。


リトスフェル村だった。


「帰ってきたー!」


クラルが大きく伸びをする。


「やれやれ、やっとだね」


ステラおばあちゃんも肩を回した。


その横で。


ノアだけが、あちこちへ視線を向けていた。


「ここが……クラルのお家がある村……」


その声は、少しだけ弾んでいた。


「何にもない村だよー?」

クラルが言う。


「そんなことないですよ」

ノアは微笑んだ。


「風が気持ちいいです」


その言葉にステラは少しだけ笑った。


―――


その日の夜。


食卓。


シチューと焼きたてのパンが並ぶ。


ノアは両手を揃えた。


「いただきます」


その所作は綺麗だった。


背筋も真っ直ぐ。


食べ方も上品。


紅茶の持ち方まで美しい。


「へぇ……」

クラルが感心する。


「さすが中央都市育ちだね」

ステラも頷いた。


ノアは少し首を傾げる。


「普通だと思いますが……」


その姿はまるで貴族のお嬢様だった。


―――翌朝。


「…………」


朝食の時間。


誰も来ない。


ステラは時計を見る。


クラルは来ない。


ノアも来ない。


「…誰も起きてこないじゃないか」


ステラは立ち上がった。


まずクラルの部屋。


予想通り。


布団から足だけ出ていた。


「クラル」


「んー…もう食べられないよ、おばあちゃん!」


「起きな」


「あと五分…」


「今すぐ起きないとにんじん生で食べさせるよ!」


クラルは飛び起きた。



ーーー


ノアの部屋。


ドアを開ける。


「…」


ステラは静かに扉を閉めた。


首を傾げながらもう一度開けた。


「…」


やはり見間違いではなかった…


布団は床へ落ち、お腹を出して大の字。


髪はぼさぼさ。


枕だけが部屋の隅へ転がっていた。


「ノア」


「すぅ……」


「ノア」


「もう食べられません…」


「早く起きろー!!」



――


…朝食。


結局二人とも寝坊した。


「ごめんなさい……」


ノアはしょんぼりしている。


しかし。


食べ終わっても席を立たない。



紅茶を飲んでいる。


一口飲む。


窓の外を見る。


また一口。


今度は鳥を眺める。


少し考えて、


雲を見る。



食べた物を片づけながらクラルが言った。

「冷めるよ?」


ノアは首を傾げた。


「紅茶はゆっくり飲むものでは?」


「ってかさぁ、時間かけすぎじゃない?」


「そうなんですか?」



本気で驚いていた。



――


さらに数日後。


「ノア」


「はい」


「洗濯物は?」


「干しました」


「…全部裏返しだね」


「…」


「しかも全部ね」


「伸ばして干した?」


「…?」



――


「ノア」


「はい?」


「本棚整理した?」


「はい!」


ステラは本棚を見て固まった


「…なんで料理本が歴史書の棚にあるんだい?!」


「似た大きさだったので」


「大きさで分けるものじゃないよ」


「しかも横に積んであるね…」


「本は立ててしまうもんだよ。」


「あらま!」


「あらまじゃない!!」


クラルはお腹を抱えて笑った。

「ノアは発想が自由だなー」



―――


「ノア」


「はい?」


「この服肘が破れてただろ?」


「はい、縫いました!」


「見せてごらん」


ノアは満足そうに差し出した。


ステラは受け取りーー


固まった。


「……」


クラルも覗き込む。


左右の袖が綺麗につながっていた…


「こっちの方が丈夫かと思って」


「これじゃ着られないんだよ!」


クラルは笑いすぎてソファへ倒れ込んだ。


「ダメ…ノア……お腹痛い」


ノアだけが本気で首を傾げていた。


「…失敗、でしたか…」


「ノア、ギャップが可愛すぎるんだけど!私、ノアの生活力0なとことか推せる!!」


「クラル?」


「はい?」


「アンタ自分のこと言ってんのかい?」


「はぁ?私?ご飯食べるの早いし!私の特技!!」



「まったく……」

大きなため息をつく


「アンタ達は今まで、生きる知恵をどこに置いてきたんだい?」


クラルは笑いながら手を挙げた。


「私は食べる専門です」


「威張る事じゃないよ」


そしてステラはたまらず少しだけ笑った!


ノアも真面目な顔で手を挙げた。

「私は頑張ります」


「ノアは真面目だわ」

クラルが言うとステラが吹き出した!!

(ステラ、ツボに入ったらしい)



「これからアンタ達、仕込み甲斐があるね!まずは雑巾の絞り方からだよ!!」


「えぇー!?」


「はい!」



―――


夕暮れ。


食後の時間…


窓から橙色の光が差し込んでいる。


クラルはソファで寝転がり。


ノアはその隣で本を読んでいる。


ステラは編み物をしていた。


静かな時間だった。


ふと。


ノアが本から顔を上げる。


「なんだい?」


ステラが聞く。


ノアは少しだけ微笑んだ。


「賑やかで楽しいお家ですね」


その言葉に。


クラルとステラは顔を見合わせた。


そして。


二人揃って苦笑する。


「やれやれ」


「とほほだねー」



クラルがノアの腕に抱き付いた。


ノアは少し驚いて一瞬キョロキョロした。

少し照れ笑いしてそっとクラルの頭へ手を置いた。


「クラル?嬉しいとすぐ抱きつくんじゃないよ!!」

ステラは編み針を動かしたまま、小さく笑う。


クラルも照れくさそうに笑い返した。


新しい家族。


まだ始まったばかり。


それだけで、十分家族だった。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


少しずつ「家族」になっていく三人の日常、楽しんでいただけたでしょうか。


私も笑いながら書いた回ですw


明日も投稿しますよ♪お楽しみにー


毎週 金・土・日 20時10分 に更新予定です。


「続きが気になる!」と思っていただけたら、ブックマークや評価(★★★★★)で応援していただけると、とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ