↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/50

眠らない王都

本格的に王都グランヴィア観光ww


見るもの全部が初めてだらけ。

クラルとノアのテンションも上がりっぱなしです!


三人と一緒に、王国最大の都市を楽しんでいただけたら嬉しいです!



王都グランヴィア。


王国最大の都市。


その言葉の意味を、クラルとノアは街を歩き始めて、ようやく理解した。


「ノア! 見て、あれ!」


「待ってクラル、こっちもすごいわ!」


「え、どれ!?」


「ほら、あそこ!」


「わぁ……!」


さっきから、ずっとこんな調子だった。


クラルにとって、大きな街といえば中央都市ミラくらいしか知らない。


そしてノアもまた、クラルと出会うまではミラから出たことがなかった。


そんな二人が、王国で一番大きな都市へ来たのだ。


冷静でいられるわけがない。


「……お前ら、少し落ち着けよ」


少し後ろを歩くシグが呆れた声を漏らす。


けれど、そんな声は二人の耳にはほとんど届いていなかった。


大通りの両側には、何軒もの店が隙間なく並んでいる。


陽の光を受け、きらきらと輝く色鮮やかなガラス細工。


赤、青、緑。


鳥や花を模したものから、何に使うのか分からない不思議な形の工芸品まである。


大きなガラスのショウウィンドの向こうには、見たこともない雑貨が所狭しと並んでいた。


「これ、何に使うんだろう?」


「分からない。でも可愛い」


「だよね!」


二人揃ってガラスへ顔を近づける。


「……買わないなら行くぞ」


「待って!」


「シグ、早い!」


「俺が早いんじゃなくて、お前らが遅いんだよ」


ようやく歩き出したかと思えばーー


「……いい匂い」


今度はクラルがぴたりと止まった。


通り沿いの惣菜屋。


店先には焼き上がった肉や野菜料理がずらりと並び、甘辛いタレが陽を受けて艶々と光っている。


ジュウッ、と肉の焼ける音。


香辛料と焼けた脂の匂いが風に乗り、食べ盛り三人の食欲を容赦なく刺激する。


クラルのお腹が小さく鳴った。


「……食べる?」


ノアが聞く。


「……食べる?」


クラルも聞き返す。


二人の視線がシグへ向いた。


「なんで俺を見るんだよ……」


シグも店を見る。


「俺だって食べたいに決まってるだろ」


そんなやり取りをしながら歩いているとーー


ぱんっ!


突然、目の前で光が弾けた。


「わっ!?」


クラルが驚いてノアの腕へしがみつく。


大通りに面した一軒の店。


看板には《魔材屋》と書かれている。


店先では店員らしき男が細長い瓶を振っていた。


瓶の中では青紫色の液体が揺れ、その一滴を空中へ飛ばすたび、ぱちぱちと色鮮やかな光が弾ける。


その隣ではーー


ふわり。


無数の泡玉が空へ舞い上がった。


「わぁ……!」


クラルが見上げる。


シャボン玉は普通のものとは違い、赤や青、紫へと次々に色を変えながら空へ昇っていく。


子供たちが歓声を上げて追いかけ、大人たちまで思わず足を止めていた。


「お嬢ちゃんも、やってみるかい?」


「え! いいの!?」


クラルの顔がぱっと明るくなる。


渡されたのは、先端に小さな輪のついた細い棒。


男に教えられた通り、青紫色の液体へ浸して…


ふぅーっ。


ぽんっ。


赤い泡玉が飛び出した。


「わっ!」


もう一度。


ふぅーっ。


今度は青。


「すごい!」


さらに吹けば黄色。


その次は緑。


吹くたびに違う色の泡玉が生まれていく。


「なにこれ、楽しい!」


すっかり夢中になったクラルを、ノアが隣で微笑ましそうに眺めていた。


「クラル、子供みたい」


「ノアもやる?」


「私はいいわよ」


「楽しいのに」


「クラルが楽しそうなのを見てるだけで十分よ」


ぽんっ。


「……え?」


紫色の泡玉が、ノアの白い髪に当たった。


ぱちん、と弾ける。


すると…


真っ白な髪の一房が、鮮やかな紫色に染まった。


「…………」


「…………」


クラルの目が輝いた。


白い髪。


白い服。


ーーこれは。


ふぅーっ。


ぽぽぽぽんっ!


「ちょ、え?クラル!?」


赤。


青。


黄色。


緑。


色とりどりの泡玉が、次々とノアへ飛んでいく。


「待って! それはダメ!!」


逃げるノア。


追いかけるクラル。


「すぐ消えるって!」


「そういう問題じゃないでしょ!」


ぽんっ!


「あっ!」


白いワンピースに赤。


ぽんっ!


「クラルってば!」


銀白の髪に青。


ぽぽんっ!


「もう!!」


肩に黄色。


裾には紫。


白い髪と白い服。


色とりどりの泡玉にとって、今のノアはーー


最高のキャンバスでしかなかった。


「ノア、すごい! カラフル!」


「もう!誰のせいよ!!」


少し離れたところで、シグがその光景を眺めていた。


「……俺、他人のふりしていいか?」


店先の男は腹を抱えて笑っている。


「ははは! 安心しなよ! 少しすれば色は消えるから!」


「ほら!」


「だからって人に当てていいわけじゃないでしょ!」


「ごめんって!」


そう言いながらも、クラルの手にはまだ棒が握られている。


ふぅーっ。


ぽんっ。


「もう! クラルーー!!」


王都の大通りに、ノアの声が響いた。


「……いい客寄せになったな」


「ありがとうございます!」


店の男がシグへ頭を下げた。


「礼言われても困るんだけどね……」


ーー


「ねえ、ノア」


「なに?」


「この街、魔法使い多くない?」


人混みの中には、クラルが思い描くような黒いローブに尖り帽子の魔法使いが何人もいた。


けれど、よく見ればそれだけではない。


白いローブ。


鮮やかな青の外套。


普通の服で、腰に小さな杖だけを下げている者。


大きな帽子を被っているのに、ローブを着ていない者までいる。


「魔法使いって、みんな黒い服を着て、ツバありの尖った帽子を被ってるんだと思ってた」


「私も」


ノアも頷く。


腰に下げた杖。


指に嵌められた魔石の指輪。


歩くたび、微かに光を残す靴。


服装は違うのに、不思議と分かる。


ーーあの人は魔法使いだ。


クラルは行き交う人々を見つめた。


「……広いね」


「え?」


「世界って」


ノアは一瞬きょとんとしてーー


「……うん」


小さく笑った。


その時だった。


クラルの足が止まるーー


「…………すごい」


いつの間にか、三人は王都の中心近くまで来ていた。


大通りの先。


巨大な城壁と門。


その向こうにそびえるーー


王城。


遠くから見た時でさえ巨大だった。


だが、近くまで来ると、その印象はまるで違う。


「……でっか!」


シグでさえ、思わず声を漏らした。


白い石で築かれた王城。


風に揺れる王国旗。


陽光を受けて輝く無数の窓。


だが、クラルが見上げているのはそこではなかった。


王城の四方を守護するように立つーー


四本の巨大な尖塔。


「……首、痛くなりそう」


クラルは限界まで顔を上げた。


それでも、先端は遥か頭上。


雲へ突き刺さるように伸びた尖塔が、陽光を受けて白く輝いている。


「どうやって造ったんだろう……」


ノアが呟く。


誰も答えられなかった。


クラルはしばらく口を開けたまま見上げーー


「……王都って、すごいね」


結局出てきたのは、そんな子供みたいな一言だった。


それほど言葉にならないほど三人は王都に圧倒されたのだ。


ーー


三人が宿へ戻った頃には、すっかり日が暮れていた。


窓の外にはガス灯が並び、大通りはまだ多くの人で賑わっている。


馬車の車輪が石畳を叩く音。


どこかの店から聞こえてくる賑やかな音楽。


行き交う人々の楽しそうな話し声。


夜だというのに、街が眠る気配はなかった。


「お待たせしましたー!」


扉が開き、宿の従業員が大きな盆を抱えて入ってきた。


「わぁ!」


テーブルへ次々と料理が並べられていく。


焼きたての丸パン。


香草の香る鶏肉の煮込み。


こんがり焼かれたじゃがいも。


そして中央には、大皿いっぱいの肉料理。


散々歩き回った三人には、十分すぎるご馳走だった。


「……宿って、部屋までご飯持ってきてくれるんだ」


クラルが感心したように呟く。


「王都だからじゃない?」


ノアも珍しそうに料理を覗き込む。


「都会ってすごい……」


「二人とも」


シグが椅子へ座る。


「何かあるといけないから、部屋に運んでもらったんだよ」


「シグ……さすが!」


「はい、見直しました!」


「褒めてないな、それ!」


「いただきます!」


クラルが真っ先に手を伸ばしたのは、大きな肉だった。


「あ、それ私も食べようと思ってたやつ!」


「まだいっぱいあるよ!」


「そっちのほうがなんか美味しそう!」


「同じだって!」


「子供かよ」


そう言いながら、シグもしっかり肉へ手を伸ばす。


「あっ!」


「シグのが一番大きい!」


「早い者勝ちだろ」


「ずるい!」


「ずるい!」


「うるせぇな!」


三人の声が、部屋いっぱいに響いた。


ーーそれから、しばらくして。


「あー、お腹いっぱい……」


クラルは椅子の背にもたれ、お腹を撫でる。


「でもシグ、最後のお肉取ったよね! 修復士でしょ!? バインドしなさいよね!」


「酔っ払いみたいな絡み方するなよ」


「肉の取り合いに修復士関係ねぇだろ!」


「クラルはいつも食べ過ぎよね」


「ノアも食べてたじゃん」


「私は普通よ」


「どこがだよ、ノアの方がたくさん食べてたよな!」


シグが即座に突っ込んだ。


「わはははははっ!!」


階下からも楽しそうな大きな笑い声が響く


一階の酒場が、さらに賑やかになってきたらしい。


ジョッキを打ち合わせる音。


誰かが歌う声。


大勢の笑い声。


時折ーー


「てめぇ! もう一回言ってみろ!」


「なんだとぉ!?」


怒鳴り声まで聞こえてくる。


「……喧嘩?」


クラルが床を見る。


「酒場じゃ珍しくないんじゃない?」


ノアが窓辺へ歩いていく。


少し開けた窓から、夜風と一緒に王都の喧騒が入り込んでくる。


ガラガラガラーー


まだたくさんの馬車が走っている。


笑いながら大通りを歩く人々。


楽器の音が賑やかで楽しい夜を引き立てている。


「すごいね……」


クラルも窓辺へ寄る。


「村だったら、もうみんな寝る準備してる時間だよ」


「王都は夜も賑やかなのね」


「俺は静かなほうがいいけどな」


そう言いながら、シグも窓の近くへやってくる。


三人並んで、しばらく夜の大通りを眺めていた。


昼とは違う王都。


ガス灯に照らされた石畳。


明かりの消えない店。


夜になっても行き交う人々。


クラルにとっては、その何もかもが新鮮だった。


その時。


「きゃああああああっ!!」


甲高い悲鳴が、夜の大通りを切り裂いた。


「……え?」


クラルが顔を上げる。


悲鳴は?!


大通りを挟んだ斜向かいの宿から。


次の瞬間。


ーードガァン!!


何かを蹴破るような、激しい音。


ノアの表情が変わった。


クラルの笑顔が消える。


シグが窓へ駆け寄った。


三人は斜向かいの宿を見つめ…


……無言で、顔を見合わせた。



楽しい王都の一日。


……で、終わるはずだったんですけどね。


斜向かいの宿で、一体何が?!


大変なことが…これ以上は言えませんww


明日、日曜日も20時10分更新なのでお楽しみに!


続きが気になったら、⭐︎評価・ブックマーク・ニコちゃんで応援していただけると嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。