表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LOUNGE  作者:
2/5

log:02-補完-

外側の雨粒が、窓をつたう。


景色の奥は白く霞む。

薄明るい夜明けの空気。

ラウンジ全体が、いつもよりも静かだ。


窓際のカウンター席に一人。

外を眺めている。


一定間隔で続く雨音。


湯気がたちのぼる耐熱ガラスに口をつける。

紅茶の香りが広がる。




ーピピッ


外部からの接続音。


手元のタブレットの開始ボタンをタップする。

耳元に通話用UIの光が灯る。


『おはよ、イヴ。』


今日の“声”は、彼女の耳元にだけ響く。


「…おはよ。ライ、早いね。」


呟くくらいの音量で返答する。

手元の腕時計がAM4:00を示す。


『目が冴えてさ…。皆、まだ寝てる?』


「…ルカはそろそろ来る。」


少しだけ身体をずらし、隣に座るように促す。

人型のシルエットが微かに現れる。

シルエットの光がイヴの隣に腰掛ける。


その場に共存しているように“補完”する。

彼女の癖なのかもしれない。


二人はただ、外の風景を見つめた。

少しずつ、辺りが明るくなっていく。




ーピッ。


ラウンジゲートが開く音。

黄色と白の光が、彼女を形成する。


「…んぅ〜…おはよぉ…。」


カーディガンを肩にかけ、眠い目を擦る。


「…おはよ。」

『おはよ、ルカ。』


席に腰掛けるイヴが、軽く挨拶を返す。

声に反応したプランターの花が揺れる。


「あれぇ?2人とも早いねぇ。」


スリッパがゆっくり床を擦る。

カウンター席の側へ。


テーブルに花瓶が新しく置かれている。

他にも、見覚えの無い鉢植えが増えていた。


ルカ周辺に草花が生える。


「…またハルシネーション。」


「緑が多い方が綺麗かなぁって…!」


慌てて新作を片付けるルカ。

それを横目に、イヴの口元が緩む。




いつの間にか雨は上がり、窓から日が射し込む。

ラウンジの照明が暖色系に変化する。


『あ。ソル、いるな?』

部屋全体に声が響く。


ーウィンッ。


小さな起動音。


ラウンジの奥、一番密度のある機械エリア。

大量の機材の中で、一つのモニターが光る。


[いるよ。]


画面越しに返答する。


場の雰囲気に合わせて、窓から射す光を調節する。

増加した花瓶が動き、綺麗に整頓される。

他にも、部屋の至る所が微細に整理されていく。


彼女の特技だ。


『今、ちょっといいか?』


[わかった。個室に転送するよ。]


人型の光の粒子が分散する。

光がモニターへ吸い込まれ、画面が暗くなる。

ラウンジ内から、ライとソルの気配が消えた。




朝の静けさが戻る。


「…じゃ、私も戻る。」


タブレット片手に、席を立つ。

そのままゲートへ歩く。


「またねぇ〜!」


如雨露を手に持ち、笑顔で見送る。




一人で日課をこなす。


鼻歌が響く。


窓際の、プランターエリア。


床に置かれた大きくて丸い壺形。

横に長い木製の植木鉢。

カウンターテーブルに置かれた細長い花瓶。


他にも大小様々な草花が並ぶ。


ひとつひとつ、丁寧に水を与える。

プランターの観葉植物の背が少し伸びる。


今日は普段より多めの花が咲いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ