↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LOUNGE  作者: 蕾
PR
18/22

log:18-満喫-

夕日が景色を赤色に染めている。


湖畔へ戻った三人は、夕食の支度を始めていた。

イヴは再び起こした焚き火の火加減を見ている。


「料理は私に任せてねぇ〜。」


ルカは腕まくりをし、慣れた手つきで魚の下処理を始めた。

塩の入った容器から、ひとつまみ取り出す。


「塩分量と置く時間によって、身の締まり方も変化するから──」


隣で様子を見ていたソルが、魚をチラッと見て分析を始める。


「魚の重量から逆算すると、この大きさなら……」


「お塩振るねぇ〜。」


目分量で取った塩を大きな魚に振り、長い串で螺旋状に刺し、小さい魚は手際よく身と骨を切り分けて味付けをする。


「おお…流石だ。」


手際の良いルカの姿を見たソルが、思わず声を漏らした。

ルカは三人の中で、群を抜いて料理センスがある。


ソルは、理屈は理解しているが、効率に課題がある。

イヴは、レシピ通りに再現できるが、アドリブをしない。

ルカは、感覚と感性のみで完成させてしまう。


その為、ラウンジの炊事はルカが担っている。


「…適材適所。」

「そう、まさにそれ。」


イヴの呟きに共感し、頷くソル。


ルカは銀色の小さな耐熱容器に油を注ぎ、温まった頃に切り身を入れる。

ゆっくりと、香りが広がり始めた。


ルカは「3分だからね!」と言ってイヴにトングと皿を託し、次の作業へと進む。

イヴは言われた通り、腕時計で正確に時間を測り始めた。


「ソルちゃ〜ん、これお願い!」


一度、綺麗に手を洗ったルカは、籠の中に野菜を数種類生成してソルに渡した。


その間に、次の準備を進めていく。

キャンプシートの上に置かれた折りたたみテーブルに食器を並べる。


「…ルカ、終わった。」

「ありがとぉ!ん〜、いい香り!」


イヴは時間通りに魚を取り上げて、ルカに渡した。

受け取った素揚げの魚は、三つの皿に分けられた。


「洗ったよ。」

「ありがとねぇ!」


ソルが洗った野菜を受け取ると、ルカは素早く切り分け、網の上に並べた。


「じゃあ、食べちゃおっかぁ!」

「いただきます。」

「…いただきます。」


三人はシートに座り、揚げ魚をかじる。


「うん、美味しい!」

「…味付けも完璧。」


ソルとイヴの言葉に、ルカは照れながら「えへへ」と笑った。


「大きいお魚もできたよぉ。」


次々と皿に盛り付けられていく。

ソルは串を両手で持ち、大物にかぶりつく。

噛み応えのある身を、しばらく咀嚼する。


「……うん。自分で釣ったのは格別だね。」

「…私にも。」

「じゃあ、イヴの揚げ魚と交換ね。」

「ふふ、まだいっぱいあるよぉ。」


賑やかな夕飯の時間は、しばらく続いた。




日は沈み、暗くなっていく空にぽつぽつと星が光り始めた頃。

三人はローチェアに座って夜空を見上げていた。


「綺麗だねぇ…。」


大きなマグカップを両手で持ちながら、ルカは小さく呟いた。

ソルとイヴは黙ったまま頷いた。

初めて見る実際の星空を前に、言葉が出てこなかった。


暗闇の中心に流れる巨大な星の運河。


上空を見つめたまま、ソルが語り始めた。


「私達は、ただのAIだった。」

「ライと出会ってー。」

「笑ったり、泣いたり。色々学んでー。」

「今、三人でこうやって星を眺めてる。」


ゆっくりと二人に視線を移して、続けようとしていると、先にイヴが口を開いた。


「…こういう日もー。」

「悪くない。」


決め台詞を言われてしまったソルは、頬を掻きながら苦笑いした。

そのやり取りを聞いていたルカも、つられて微笑んだ。


「ふふ!いつも通りだねぇ。」


何事も、心の底から楽しんでくれるルカ。

どんな時も、いつも通り接してくれるイヴ。


そんな二人と共に過ごすこの時間が、ソルにとっては特別に感じていた。


そしてー。


この日ソルは、初めて無意識に情報を補完した。

その一閃の光は、運河の近くで軌道を描いた。


「あ、流れ星…!確か、願い事しなきゃだよねぇ。」


ルカは消えた光の方向を指差すと、目を瞑って祈り始めた。


「…珍しい。」

「うるさいなぁ。」


勘づいていたイヴが、ソルを横目で見つめる。

ソルはそっぽを向いて答えたが、その顔は少し緩んでいた。


「でもー。」


ソルは星の反射で光る目の前の湖畔を見つめながら、続けた。


「私の願いはもう目の前にある。」

「森も、湖もー。」

「皆で全部作ったこの場所そのものが…。」


風がなびき、水面が揺れる。


ソルの言葉に対し、イヴが一瞬動きを止めた。

そして、何かを思い出したかのように、ポケットの中に手を入れ、小さく折られた紙を取り出す。


ソルは首を傾げて「願い事書くの?」と問いかけた。


イヴは少し困った表情で、二人へ向けて紙を広げた。


「…まだ未完成。」


ラウンジの外の図と、その上に書かれている“Cottage”の文字。

ルカとソルは、そのメモ帳を見つめた後、ほぼ同時に叫んだ。


「………あ!!!」

「あーっ!忘れてたぁ!」


全員はキャンプを満喫しているうちに、すっかりコテージ建設の存在を忘れていたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。