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LOUNGE  作者: 蕾
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16/23

log:16-準備-

ソルが重い荷物を降ろす。


開けた湖の辺。

日の光に反射した水辺が眩しく輝く。

周囲はまだ朝霧が微かに漂っていて、吸い込む空気は少し冷たかった。


「ちょっと冷えるねぇ。でも気持ちいい〜。」


ルカも荷物を草原の上に置くと、湖の畔に立って大きく背伸びをした。

荷物のそばに立つイヴが辺りを軽く見渡す。

少しだけ穏やかな表情をしている。


そんな中、ソルは少し開けた平地で設営準備を始めていた。

ソルの大きなリュックの中から、設営用の道具が次々と出てくる。


「設営は私に任せて。」


自信満々に声を張るソルが地面に説明書を広げ、部品をひとつずつ指差し確認する。

丁寧だが、完成まではしばらく時間が掛かりそうだ。


「私はお茶の用意するねぇ。」


戻ってきたルカも大きなキャンプシートを設営場所の近くに広げ、持ってきたティーセットを並べ始める。


「…火、ある?」

「あっ…。」


イヴが呟くと、ルカは案の定固まった。


イヴは無言で辺りの小石を集め、更地に焚き火用の土台を作り始めた。

可燃物を探し、落ちている小枝を拾う。

しかし、落ち枝はどれも湿っていて使い物にならなそうだ。


「乾いた木の枝、作れる?」

「はい!どうぞ!」


イヴの質問に、ルカはすぐに両手に抱えるほどの大量の小枝を生成して渡した。

イヴは「ありがと」と言って受け取ると、枝を数本、円錐状に置いた。


続けて、背負っているショルダーバッグから小型ナイフと着火剤を取り出す。

小枝を細く削って火種を作り、着火剤で火を付ける。

小さな火を少しずつ大きな枝へ移し、大きく育てていく。


「…できた。」

「イヴちゃん、ありがとぉ!」


イヴは火の勢いを見ながら、小枝を追加する。

ルカは嬉しそうに感謝し、持ってきた水筒の水をケトルに注ぐ。

焚き火に設置した網の上にケトルを置き、ゆっくりと湯を沸かす。

ルカは側にしゃがみ、わくわくした様子で湯が湧くのを待つ。

二人はしばし、揺れる炎を見つめていた。




「ごめーん。」

突然、ソルの声が響く。


「ちょっと手を貸してほしい。」

「あ、うん!」


ソルの声に、ルカが急いでソルの元へ駆け寄った。


設営は思った以上に難しかったようだ。

組んだはずのポールが抜けていたり、ロープが絡まったりと、状況だけでも難航していたのが伺える。


「手順はあってるんだ。」

「設計思想の問題でー。」

「つまり、私は間違っていない。」


ソルは自分の正当性を長々と主張していく。

ルカは「そうなんだねぇ」と相槌を打ちながら、一緒に設営を進めた。


「ありがとう、助かった。」

「えへへ。全然だよぉ。」


何とか立て直し、設営は無事に完了した。


「ところでルカ。イヴの方は大丈夫?」

「そうだ!イヴちゃ〜ん!」


ソルはイヴの後ろ姿を見て、ルカへ確認する。

すると、ルカは慌ただしく戻って行った。





「ごめんねぇ!ありがとう!」

「…ん、大丈夫。」


戻りながら叫ぶルカに対して返事を返すイヴの表情は、優しかった。


ケトルの蓋が小さく揺れ、程よい湯気が上がっている。

火力を下げ、ルカの帰りを待ってくれていたようだ。


改めて、ルカはキャンプシートで籠から三人の専用のマグカップを取り出す。

熱いケトルの湯を、イヴが耐熱手袋を使ってティーポットへ注ぐ。


「できたよぉ。」


ソル専用のネイビー色のマグカップ。

いつものブラックコーヒー。


イヴ愛用の耐熱透明ガラスカップ。

安定の紅茶の香り。


ルカの花柄の白いマグカップ。

お気に入りのハーブティー。


三人でシートの上にくつろぎながら、各々の味を満喫した。




日が高く昇り、気温が上がってきた頃。

ソルが立ち上がってジャケットを脱ぐ。

黒いサコッシュをさげ、座っている二人へ視線を向けた。


「じゃあ。」

「食材を探しに行こうか。」


ソルがそう言うと、ルカは目を輝かせた。


「行こぉ!お魚いるかなぁ!?」

「…多分、居る。」


ルカの言葉にイヴが呟くと、直ぐに湖畔の遠くで何かが跳ねた。

波と共に、水紋がゆっくり広がる。

更に、三人の近くを一匹の蝶が横切った。

その光景を見たソルが、少しだけにやけた。


「今のはイヴだね。」

「…うるさい。」


イヴが無意識に存在を補完したようだ。

本人はソルに茶化されて不満そうに目を逸らしていたが、おかげで世界がまたひとつ豊かになった。




三人は釣り用の道具を持ち、湖から繋がる川沿いを辿りながら、森の中へと入って行った。

緩やかに流れる水の音と、微かに差し込む木漏れ日。


「綺麗…。」


湖畔とはまた違う幻想的な雰囲気に、ルカは思わず言葉を漏らした。


奥深くへ進むにつれ、足場が悪くなってきた。


「皆、この辺は気をつけて。」

先頭を歩くソルが、後方の二人へ注意喚起した。


無造作に生えた雑草を踏み分けながら、ゆっくり歩みを進める。

時折、遠くの方で鳥の声が響く。

上流へ進むにつれ、少しずつ水の流れが早くなる。

緩やかな登坂が続き、ルカの息は少し荒くなっていた。


「少し、休まない…?」

「じゃあ、この辺にしようか。」


大きな岩場に荷物を置いて、ソルは釣り道具を取り出した。

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