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LOUNGE  作者: 蕾
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12/23

log:12-生成-

この日は、窓辺から日差しが眩しく部屋に射し込んでいた。

プランターに育つ花々が生き生きと葉を伸ばす季節。

鼻歌混じりに、今日も朝から水やりをするルカ。

その表情は、いつもに増して穏やかだった。

彼女の長い金髪を止めている、小さな黄色い花柄の金属バレッタが、いつもと変わらない日課のなかで、一際輝いていた。




数日前。

エアコンの音と、機材の接続音が静かに流れるソルの自宅。

白いウィンドウシャッターを降ろし、外からの強い日差しを遮って、ルームライトが部屋を灯す。

白シャツの袖を捲り、デスク前に座ってモニターを見つめるソルと、耳元の通話用デバイス越しから響くライの音声。


『こんな感じのが欲しいんだけど。』

「なら、私ならこの細部をー。」


画面に映る、複数の設計図。

ライの証言を元に集めた資料を元に、ソルなりの解釈を説明しながら付け加える。

送信ボタンを押して、その都度ライの端末へ完成図を送信する。


『派手すぎる。もうちょっと抑えて。』

「なら、これは?」


何度も確認しながら、二人は細かく設計図を練っていた。

ソルの耳元で唸るライ。

その合間に、目の前のコップの冷水を手に取り、ひと口つける。

氷がカランッと音を立てて、再びコースターの上に置く。


『これだな!』


ようやく納得がいった様子で、ライから太鼓判が押された。

マウスポインタが、生成ボタンへ焦点を合わせる。


「じゃ、生成するよ。」

『いや、ストップ!』


Enterキーに指が触れる直前で、動きを止めた。


『これさ。』

『ルカに作ってもらいたいんだ。』


ライの言葉にソルは「なるほど」と応えると、キーボードで入力を始めた。

改めて、ライへ資料を送信する。


「それなら、ルカに分かりやすく伝わると思う。」


設計図に、文字で細かい説明が追加された。

ライが「ありがとう!」と言い残すと、接続が切断された。

相変わらずの人使いの粗さだな…。と小声で零したが、ソルは特に気にはしていない。

別モニターに、直後にラウンジへ接続するログが流れた。


「いってこい、ライ。」


ソルはその様子を見つめながら、微笑した。




日中の日差しが強く射し込むラウンジ。

窓辺のレースカーテンが閉められ、空調の音が涼しく響いている。

天井の大きなシーリングファンが、空気を巡回させ、とても涼しい。


ルカがソファでくつろぎながら、雑誌を読む。目の前のローテーブルには、菓子袋の封が切られている。

イヴも今日は窓辺から避難し、ソファに浅く腰掛け、透明グラスでアイスティーを飲んでいた。


ーピッ。

『ルカいるか!?』


唐突に、接続音に被る勢いで大声が反響する。

思わず、二人の肩が跳ね上がった。


「びっくりしたぁ!どうしたの!?」

「ライ…うるさい…。」


少しだけ、イヴの強い視線がライを刺す。

ホログラム化されて映し出されたライの姿は、頭に手を当て、申し訳なさそうに苦笑いしていた。


『ごめんごめん。』

『ルカに作って欲しい物があって。』


ライの言葉に、ルカが「私に?」と首を傾げる。

すると、部屋の中にあるソルの作業エリアのモニター画面が光る。


映し出されたのは、小さな黄色い花をあしらった金属製の髪留めバレッタ。


「きれい…。」


画面を見つめるルカが、小さく呟く。


『できそう?』

「うん、やってみるね!」


ライが少し心配そうに問いかけると、ルカはニコっと微笑んだ。

そして、手に持っていた雑誌と、テーブルの上にある物を隅の方へ寄せて、改めてソファに姿勢よく腰掛けた。


一度目を閉じて深呼吸をし、ゆっくりと瞼を開く。

両手をテーブルに向けて集中する。

ルカの身体から小さな黄色い粒子が、螺旋状に腕を伝い、指先から更に伸びる。

ルカは指先を、編み物を編むような仕草をすると、それに同期して光が絡み合う。

粒子がやがてひとつに纏まると、目の前に金属製の装飾品が形成された。


しかし、その形は少し歪んでいる。


「…惜しい。」

イヴが設計図と見比べながら、小さく呟く。


ルカは不満そうな表情で、ちょっとだけ頬を膨らませた。


「うーん…。もういっかい!」

『がんばれ!』


もう一度、気を取り直して繰り返す。

ライも目の前で応援する。


改めて形成された装飾品は、均等な形を形成した。

光に反射して綺麗に輝く。


『おお!』

「できたぁ…。」

「…おめでとう。」


三人が完成品を見て思わず言葉を漏らした。

そして、ライが口を開く。


『これ、ルカに使って欲しくてさ…。』

『プレゼントとして、受け取って欲しい。』


「えっ、いいのぉ!?」

「ありがとぉ!大事にするね!」


少し照れ隠しをしながら説明するライ。

しかし、視線はルカの目をしっかり見つめていた。

ルカは、自分の後ろ髪へバレッタを止めると、嬉しそうに微笑んだ。


あれから毎日、彼女はラウンジを訪れる度、必ずそのバレッタを身に付けていた。

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