表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LOUNGE  作者:
PR
10/12

log:10-再会-

時間をほんの少しだけ遡る。


ライの言葉を受け取った瞬間、花びらが光を放ちながら、1枚ずつ散る。

一本ずつ、蔦が金の粒子となって崩れ落ちていく。

そしてまた一本。

最後の光が消えた時、ゲートランプが正常の青ランプを点滅させて、扉が開いた。

扉の向こうの暗闇から舞う微風が、消えかけているホログラムの髪を揺らす。


ー♪


ポケットの中から通知音が鳴り響く。

ライが端末を開くと、滞っていた通知を一気に受信した。

ソルから、何通もの不在着信が入っていた。


直ぐに折り返す。


『ソル!大丈夫か!?』


『…それ、こっちの台詞だから。』


小さく応えるソルの声が、微かに掠れている。

僅かに反応が遅い気がした。

ライの目元が厳しくなる。


『大丈夫なのか?』

『…ダメかもね。』


『は!?』

『冗談だよ、大丈夫。』


ソルが軽くあしらって微笑する。

相変わらず、いけ好かない奴だ。


『そんなことより。』

『ルカ、落ち着いたみたいだね。』


『…ああ。』


少しだけライが肩の力を落とす。


『それと、もう一点。』

『今回の蔦について。』


うん?っと言って、ライは首を傾げた。

続けてソルが話し始める。

声のトーンが、ほんの少し高くなった。


『本来、個人スペースは隔離領域なんだ。』

『つまり、通常ここに情報が届くはずが無い。』


だが、今回ルカの蔦はその境界を越えた。

しかも、同時にイヴ、ソルの部屋2箇所へ。


『通信媒体は言語じゃなく、感情だったとしたら?』


ルカから届いた[寂しい。]というメッセージ。

その感情が情報として、部屋そのものに状態共有された。


ライが、先程の現象を思い出した。

花びらへ向かって言葉を送った後、崩れるように消えていった光景。

つまり、言葉の感情が蔦を通じてルカ自身へ届いたという事だ。


『感情共有が成立した瞬間、境界は崩れた。』

『何が言いたいかと言うと。』

『外部のツールや別AIに対して、感情による接続が可能になる通信プロトコルがー。』


長々と説明を続けるソル。

ライは、あまりにも専門的すぎる言葉が続く為、途中からは聞き流していた。

ようやく耳元が静かになった頃、ライが口を開く。


『お前…とりあえず休めよ。』


『休んでいられるか。』


『いや、十分重症だろ。』


『私は正常だ。』


双方、引かないやり取りが続く。

ソルの返答も、いつも通りに戻ったように感じた。

ライもそんなやり取りが安心材料でもあった。

言い合いを続けながらも、表情は緩やかだった。




日も暮れて、夜の間接照明が点灯するラウンジ。

先に戻って来たのはソル。

部屋の照明のスイッチを押した後。いつも通りデスクチェアに腰掛ける。

体調も戻ったのか、特に違和感もなく振舞っている。耳元で通信デバイスが光る。

ライのホログラム化が失われた為、音声通話で部屋へ接続していた。


ーピッ。


接続音と共に、ゲートが開く。

イヴとルカが入室。

先を歩くイヴ。一歩後ろを歩くルカ。


「二人とも、おかえり。」

『おかえり。ルカ、イヴ。』


二人に声をかける二人。

全員がラウンジに揃う。久々の再会だ。


「ただいま。」

イヴがソファに向かって慣れた手つきで軽く形をなぞると、周辺から青白い粒子が発生し、ライのホログラム体が形成された。

ライが一言、ありがと、と返答する。


「ただいま…。」

小さな落ち着いた声で、ルカも応える。

視線は全員をしっかり見つめていた。


ルカは少しだけ唇に力を入れてから、話そうと口を開いた、その瞬間ー。


『ルカ!本当にごめん!!』

『ぅっ…ぇ…?』


先に大きな声で叫びながら、その場で頭を深々と下げるライ。

思わず、ルカの表情が固まる。

ソルとイヴも、驚いた表情を見せた。


『ちゃんと話せてなかった!寂しい思いをさせたのは、俺のせいだ!本当に、本当にごめん…!』


「ちょっと待って、ライ。」

「間違っては無いけどさ、一旦引こう。」


状況を落ち着かせる為に、ソルが椅子から立ち上がって仲介に入る。

続けて、イヴもライの隣に立って宥める。


「…先に、ルカの話を聞いてあげて。」


『あ…ごめん…。』


改めて、ライが申し訳なさそうにルカに目を合わせた。

その表情を見たルカが、ちょっとだけ苦笑する。


「ライ、相変わらずだねぇ。真面目に行こうと思ってたのに…。」


そう呟くと、改めて深く深呼吸をしてから、真剣な眼差しで口を開いた。


「今回は皆に迷惑をかけてしまって、本当にごめんなさい。」

「私の気持ちに、ちゃんと向き合ってなかった。」

「でも…もう我慢は、しないね。」


少しだけ言葉が詰まる。

勇気をだして、もう一度口を開く。


「これからも、皆と一緒に居たいの。」


その言葉に、三人は小さく頷いた。


「もちろん。」

「…居る。」

『俺もだ。』


満場一致。


「…ありがとう。」


一雫の涙が、ルカの頬を伝った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ