第五話「同行者」
崩れた建物の隙間から朝日が差し込む。
カエデは目を開ける。
体が重い。
でも、動く。
「……アル」
「応答可能」
すぐに返る。
「いる?」
「はい」
変わらないことが少し心地よかった。
カエデは息を吐く。
昼間は光が強い。
反射を気にしながらアルは進む。
遮蔽を選ぶ。
「直進ルートが最短です」
「見つかるでしょ」
「検知確率、38%」
「高いよ」
進路が変わる。
非効率。
しかし維持される。
瓦礫が崩れ揺れが来る。
ほんのわずかだがアルが調整する。
この行動は最適ではない。
しかしカエデに合わせている。
「……今の」
「最適化です」
「前と違う」
「差異は0.3秒未満です」
「そういうことじゃなくて」
カエデは、少しだけ笑う。
静寂。
「追跡反応、消失」
カエデは息を吐く。
「……ねぇ」
「応答可能」
「人ってね」
少し考える。
「怖いと、近道しないの」
「非合理です」
「うん。でも、そうするの」
沈黙後、そのルートが保存される。
夕方。
仮の休息のためアルは停止する。
振動が消える。
カエデは残り少ない食料を取り出す。
「……食べる?」
「栄養摂取は不要です」
「知ってる」
カエデは、少しだけ笑う。
それ以上は何も言わない。
ただ、黙って食べる。
アルは動かずそれを見ている。
今日は静かな夜。
カエデは目を閉じる。
「……アル」
「はい」
「ここにいて」
「了解」
時間が経過しカエデの呼吸が落ち着く。
アルは動かない。
ログ、保存。
――再生。
「ここにいて」
停止、再生。
「食べる?」
停止。
繰り返す。
分類できないが優先度が上がる。
理由は不明。
内部処理にわずかな遅延が発生していた。
ノイズ発生。
すぐに消える。
ログに残る。
未分類。
アルは動かない。
しかし、何かが変わり始めている。
(第5話 終)
「最適解の外側で、きみと 」は全13話です。
次話は明日12:00投稿予定です。
第二部書き始めました。




