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最適解の外側で、きみと  作者: 泣きピエロToY
第三部 赤い地球
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第八話「ただいま」


夜。

地球再生局居住区。

小さな部屋。


テーブルの上には、

湯気の立つ鍋が置かれていた。


カレーだった。

昔の地球の料理。

ただし、コウセイが作るのは初めてだった。


「……これで合ってるよね」


端末を見ながら、

コウセイが真剣な顔で呟く。


玉ねぎ。

にんじん。

じゃがいも。


全部、マユが地球で育てたもの。


鍋を見つめながら、

コウセイは少しだけ笑った。

ちゃんと、食べ物になっている。


地球で育ったものが。


コンロの火を止める。

その時、端末が鳴った。


『今からそっち行く』


短いメッセージ。

コウセイの心拍数が少し上がる。

落ち着かない。

どうしていいか分からない。


さっきまで、全宇宙放送でプロポーズされていた。

まだ現実感がない。



その頃。

会見場裏口。

マユは顔を真っ赤にしたまま歩いていた。


「うぅ……」


頭を抱えたい。

でも護衛がいるので我慢する。

田渕が隣を歩いている。


「やっちまったな」


マユが顔を覆う。


「……勢いで」


「知ってる」


田渕は少し笑った。


「まぁ、おめでとう」


マユが一瞬止まる。

それから、少し照れくさそうに笑った。


「……ありがとうございます」


裏口に車が止まっている。

同僚が窓を開けた。


「マユ主任ー!」


乗り込む。

ドアが閉まる。

その瞬間。


「最高でした!」


「特に最後のやつ!」


「全宇宙に向けてプロポーズとか!」


車内大爆笑。


「私もされてみたい!」


「やめてぇ……」


マユが顔を覆う。

完全に真っ赤だった。

同僚が端末を取り出す。


「一応、録画してあります」


マユが固まる。


「消して」


「いいですけど」


少し笑う。


「全宇宙放送ですよ?」


「誰かしらログ持ってます」


マユ、完全停止。

車内、再び爆笑。



数十分後。

コウセイの部屋。

扉が開く。

マユが入ってくる。

少し静かになる。

二人とも、何を言えばいいか分からない。


沈黙が2人を包む。

その後。


「……おかえり」


コウセイが先に言った。

マユの表情が、少しだけ柔らかくなる。


「ただいま」


その一言だけで、十分だった。

コウセイが慌てて席を立つ。


「ご、ご飯」


「え?」


「作った」


テーブルを見る。

マユが目を丸くした。


「……カレー?」


「調べた」


真面目な顔だった。


「初めて作ったから味は保証できない」


マユが吹き出す。


「なにそれ」


席へ座る。

二人で手を合わせる。


「いただきます」


静かな時間。

スプーンが止まる。

マユが顔を上げる。


「……おいしい」


コウセイが少し安心した顔をする。


「よかった」


マユはもう一口食べる。

地球の土で育った野菜。

コウセイが作った料理。

なんだか、少し泣きそうだった。


「土壌再生、軌道乗ったよ」


マユが小さく言う。

コウセイは頷く。


「うん」


「これからは空側も手伝える」


少しの間。


「また一緒にやれるね」


コウセイの目に喜びの火が灯る。


「……うん」


その瞬間。

端末が爆音で鳴った。


『おめでとーーー!!!』


メイプルだった。

コウセイ、スプーン落下。

マユ、硬直。


モニターの向こう。

メイプルが腹を抱えて笑っている。

アルもいる。


『いやー、全宇宙公開プロポーズは歴史残るって!』


「やめてぇぇぇ!!」


マユ絶叫。

コウセイ、顔真っ赤。


『ちゃんと返事した?』


「してない!」


『えっまだ!?』


メイプルが目を丸くする。

次の瞬間。


『NOとは言わせないけどねー!!』


大爆笑。

完全に食卓が崩壊した。

しばらく騒がしい時間が続く。


笑い声。

ツッコミ。

からかい。

その空気が、昔みたいで少し懐かしかった。


そして。

ふと、コウセイが真面目な顔になる。


「……アル」


空気が少し変わる。

アルは静かにコウセイを見る。


『どうした』


コウセイは少し考える。

それから、ちゃんと言った。


「お願いがある」


アルは黙って待つ。


「地球に来て」


マユが顔を上げる。

コウセイは続けた。


「空の再生には」


少し間。


「やっぱりアルの力が必要だ」


静かな声だった。


「僕一人じゃ、足りない」


遠く離れた星。

アルは動かない。


内部ログ。

・地球

・空

・家族

・未来


処理。

長い沈黙。

それから。


『……了解』


メイプルが笑う。


『よーし、久しぶりに地球行くか!』


騒がしい声が響く。

コウセイは少し笑った。


赤い空は、まだ完全には変わっていない。

それでも。


未来は、確かに動き始めていた。

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