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最適解の外側で、きみと  作者: 泣きピエロToY
第三部 赤い地球
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第四話「感覚」


地球再生局。

仮設研究区画。

大量の土壌サンプルが並べられていた。


赤茶けた地球の土。

そして、

船団が持ち込んだ、あの星の土。

マユはその前にしゃがみ込んでいる。


分析データがモニターに流れる。

微生物反応。

水分保持率。

有機物濃度。

ナノマシン残留値。

数値は大量にある。

でも。


「……なんか違う」


マユが呟く。

隣にいた研究員が首を傾げた。


「数値上ですか?」


「うーん」


マユは少し考える。


「それもだけど」


手袋を外す。

そして、地球の土へ触れた。

さらりと崩れる。


次に、星の土へ触れる。

少し湿っている。


マユは黙ったまま、

何度か指で確かめた。


「……やっぱ違う」


研究員は困惑していた。


「感覚の話ですか?」


「多分」


「非科学的では?」


マユは笑う。


「でも、コウセイなら絶対データだけで進めないし」


それは確信だった。

数値だけじゃ足りない。


人も。

空も。

土も。


ちゃんと見ないとダメだ。

マユは立ち上がる。


「まずは違いを知るところからかな」


モニターへ新しい項目を開く。

――地球土壌再生活性試験。


一方その頃。

上空では、青く塗られた小型飛行機が、

赤い空を飛んでいた。

武装の代わりに、大量の観測機器が積まれている。


大気粒子。

汚染濃度。

風向き。


コウセイは操縦席で端末を確認していた。


「予測より粒子濃度高いな……」


視線を上げる。

赤い空。

でも、高度を上げるほど、少しずつ色が薄くなっていく。

コウセイはその景色を見つめた。


飛ぶ。

それが、自分の始まりだった気がする。


アル。

メイプル。

青い空。

全部、空に繋がっている。


その時。通信が入る。


『コウセイ』


マユだった。


「ん?」


『土、触ってる』


「……は?」


『なんか違う』


コウセイが真顔になる。


「データ送って」


『いや、感覚』


「もっと分かんない」


マユが笑う。


『星の土の方が美味しそうなんだよね』


「……土だよ?」


『地球のはなんか口に入れたくない感じ』


コウセイが少し黙る。

本当に分からない顔をしていた。


『何が違うと思う?』


「うーん……」


コウセイは考える。

でも答えは出ない。


『そっちは?』


コウセイは窓の外を見る。

赤い空。

その向こう。

まだ見えない星。


「飛んでる」


『知ってる』


「データ集めながら」


『真面目だねぇ』


「マユが感覚派すぎるんだよ」


『大事なんだって』


少し間。


『感じるの』


コウセイは少し黙る。

理解はできない。

でも。

マユがそう言うなら、きっと意味はあるんだと思った。


「……そっか」


小さく呟く。


青く塗られた飛行機が、

赤い空を抜けていく。


深夜。

研究室。

古い地球資料が大量に表示されている。


落ち葉。

発酵。

微生物。

循環型農業。


マユは端末を見つめていた。


「……土を作ってる」


ナノマシンとは違う。

壊れたものを即座に修復する技術ではない。

時間をかけ、分解し、命を土へ返していく。


マユは静かに呟く。


「そっか……」


「土も、生きてるんだ」


その時。

モニター端に、微弱な植物反応が映る。

地球全域環境データ。


反応地点。

一箇所のみ。

マユが眉を寄せる。


「……なんだこれ」


拡大。

そこには、森があった。


赤い世界。


その中で、黄色から赤へ変わる葉が揺れている。


マユは目を細める。


「……綺麗」


周囲の汚染濃度も、わずかに低い。

土壌反応も違う。

ありえない数値。

マユはすぐ端末を閉じる。


「行こ」


誰に言うでもなく呟いた。

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