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最適解の外側で、きみと  作者: 泣きピエロToY
第三部 赤い地球
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第二話「新しい型」


政府施設の一室。


豪華ではない。

長机が並べられ、

簡易的に用意された食事が置かれている。


湯気。

パン。

スープ。

煮込み料理。


その多くは、

船団が持ち込んだ食材だった。


最初、地球側の人間達は戸惑っていた。


記者。

技術者。

政府関係者。

軍関係者。


誰もが、

「会議」や「説明」を想定していたからだ。


しかし。


「……うまいな」


誰かが呟く。

それをきっかけに、少しずつ空気が変わっていった。


会話が生まれる。

食べ方の違い。

味付け。

星での生活。


気づけば、さっきまで張り詰めていた空気は少しだけ柔らかくなっていた。


コウセイはその様子を静かに見ていた。

そして、ゆっくり立ち上がる。


視線が集まる。

少しだけ考えてから、口を開いた。


「さっき、誰か僕をアルの後継者って言いましたよね」


静かになる。

コウセイは首を横に振る。


「僕はアルの後継者じゃありません」


少し間。


「アルはもっとすごいです」


その言葉に、船団側の人間達が少し笑う。

コウセイは続けた。


「でも、そういうふうに見られているなら」


窓の外。

赤い地球。


「地球再生は、アル風でやりたいと思います」


地球側の人間達が顔を上げる。


「まず、工房に食堂を作ってください」


「どんなに忙しくても、必ず揃ってご飯を食べること」


「そして」


真面目な顔で続ける。


「徹夜作業は絶対しないこと」


ざわめき。

理解できないという顔も多い。

しかしコウセイは気にしない。


「これだけは守ってください」


それから、テーブルの料理を見る。


「あと、今みんなが食べてるもの」


「これは、あの星の大地で育てたものです」


静かに聞いていた田渕の目が少し揺れる。


「空だけじゃなくて」


「大地も再生したいと思っています」


コウセイは小さく笑う。


「いつか、地球で育てたものを」


「またみんなで食べたいです」


その言葉は、

技術説明ではなかった。

でも、誰も茶化せなかった。


「そのために必要なのは、技術もそうです」


少し間。


「でも、それだけじゃありません」


静かな空気。


「それが何かは言いません」


コウセイは、少しだけ周囲を見る。

笑い声。

食器の音。

湯気。


「でも、この食事も、その一つです」


誰もすぐには言葉を返せなかった。


赤い地球。

その中で、船団の人間達だけが自然に食事をしている。

それは、地球がいつの間にか失っていた光景だった。


夜。

宿泊区画。

作業端末の光だけが部屋を照らしている。

マユがベッドへ倒れ込む。


「……疲れた」


コウセイは端末を閉じる。


「今日は終わり」


マユが少し笑う。


「珍しい。コウセイが自分からやめた」


「終わり作らないと続けられないから」


その言葉に、マユが少しだけ目を細めた。


「誰の教え?」


コウセイは少し考える。


「……アル、かな」


でも本当は違う。

もっと前。

ずっと昔。

崩れた世界。

暗い部屋。


『終わりを作らないと、続けられないの』


カエデの声。

アルへ残した言葉。


それは今、

メイプルを通して、

コウセイへ繋がっていた。


窓の外。

赤い空が広がっている。

でも、昼より少しだけ赤が薄い気がした。


地球はまだ壊れている。

それでも。

ここからまた、

新しい型が始まろうとしていた。

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