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最適解の外側で、きみと  作者: 泣きピエロToY
第二部 恒星
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第九話「赤い空」


地球。

その星を見た瞬間。

メイプルは言葉を失った。


空が赤い。


燃えているわけじゃない。

しかし、ずっと焼け続けているみたいな色だった。


大気汚染。

軌道上デブリ。

戦争で崩れた環境。


かつて青かった星は、

今は鈍い赤に染まっていた。


『……これが』


メイプルの声が小さくなる。

青い機体が静かに降下していく。

アルの声は落ち着いていた。


『昔とは違う』


短い言葉。

しかしその重さは大きかった。



地表。

崩れた都市。

巨大な防壁。


煙。

瓦礫。

それでも人はいた。


狭い居住区に集まり、

空を見上げる余裕もなく生きている。

地球は未だ戦争中だった。


『コウセイの反応は?』


『現在追跡中』


アルの処理が走る。

広域スキャン。

通信解析。

基地ネットワーク侵入。

次々と情報が開いていく。


『複数の子供を同時収容している施設を確認』


『軍教育区画』


メイプルの目が細くなる。


『そこ』


青い機体が加速する。



基地に警報が鳴り響く。


「 unidentified unit approaching!」


「アルファ反応!」


「迎撃部隊!」


武装した機体が次々と発進する。

アルは真正面から突っ込んだ。


青い光。

高速機動。

敵機が照準を合わせる。


砲撃を回避し、一瞬で距離を詰める。


アルの声が響く。


『右』


メイプルが反応する。


青い機体の腕が敵機の武装を掴む。

そのまま捻る。

砲身破壊。


次。

蹴り。

関節破壊。

敵機が転倒する。


でも、

爆発させない。

殺さない。


『メイプル』


『分かってる』


次の敵。

ライフルを向ける。

アルは真正面から突っ込み、

銃口だけを叩き折った。


火花。

無力化。

終わり。


『人は殺さない』


メイプルが呟く。


『コウセイと同じだから』


青い機体が次々と武装を破壊していく。

兵士達が混乱する。


「なんだあの動き――」


「殺してこない?」


「いや違う!」


「武器だけを……!」


基地の防壁が崩れる。

通信塔破壊。

戦車停止。

発電設備切断。


戦う力だけを潰していく。

アルの声が静かに響く。


『これは守る戦いだから』


その言葉。

昔、

老人が残したログと重なる。


『守るための形だ』


青い機体は、

その言葉通りに戦っていた。



その頃。

地下区画。

子供達は一つの部屋へ集められていた。

コウセイもいる。

周囲には、

同じ星から連れてこられた子供達。


不安そうな顔。

泣いている子もいる。

前に立つのは軍服の男。

この基地で最も権限を持つ人物だった。

疲れた顔をしている。


でも目だけは、

まだ死んでいない。


男は静かに言う。


「怖がらなくていい」


誰も答えない。

男は続ける。


「君たちは選ばれた」


「地球を変えるために必要なんだ」


壁のモニターが点灯する。


赤い空。

荒廃した都市。

戦争映像。


子供達が静かになる。


「これが今の地球だ」


男の声は重い。


「大人達は失敗した」


「争いを止められなかった」


コウセイは黙って見ている。

男はゆっくり続ける。


「でも君たちは違う」


「君たちは平和を知っている」


「人と機械が一緒に暮らせる世界を知っている」


モニターに、

あの星の映像が映る。


笑う子供達。

市場。

暖かな灯り。


コウセイの胸が少し痛む。


帰りたい。

しかし、地球の光景も見てしまった。


男はしばらく黙っていた。


それから。

ゆっくり頭を下げる。


子供達へ。

深く。


部屋が静まり返る。


「……頼む」


震えた声。


「地球の未来のために」


少し間。


「犠牲になってくれ」


コウセイの目が揺れる。

男は顔を上げない。


「悪いことをしている自覚はある」


「でも、他に方法が見つからなかった」


「このままじゃ」


声が掠れる。


「地球は終わる」


誰も動けなかった。

その時。

遠くで爆発音が響いた。


警報。


振動。

兵士が駆け込んでくる。


「アルファ機侵入!」


空気が変わる。

コウセイが顔を上げる。


希望が見えた。


その瞬間。

ほんの少しだけ。

笑った。

次話は明日昼12時更新します。

第二部は全14話です。

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