表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最適解の外側で、きみと  作者: 泣きピエロToY
第二部 恒星
PR
22/46

第六話「侵入」


青とオレンジの光が宇宙を滑る。

二機は並んで飛んでいた。

青い星を見下ろしながら、

静かな軌道上を漂う。


コウセイはまだ興奮していた。


感覚共有越しに伝わる宇宙は、

映像なんかじゃなかった。


冷たい真空。

姿勢制御。

推進の感覚。


全部が本物だった。


『もう一回あっち行きたい!』


メイプルが笑う。


『元気だなぁ』


アルが少し先へ出る。

青い機体。

滑るみたいに静かに飛ぶ。

コウセイはその姿が好きだった。


『アルって飛んでる時すごい綺麗だよね』


通信が少し止まる。

アルは少しだけ困った声を出した。


『急にどうしたの』


『メイプルも言ってた』


『言ってないし』


言っていた。

何度も。

メイプルは少し視線を逸らした。



その頃。

星では静かに異変が始まっていた。


街外れ。

森の奥。

古い家。


小さな畑。

崩れた水路。

増築を繰り返した跡。


アルとカエデが最初に暮らしていた家。

今は保存区域になっている。


そこへ数人の人影が侵入していた。


地球軍特殊調査班。

無音工具で扉を開く。


「侵入完了」


低い声。

ライトが暗い室内を照らす。

机。

古い工具。

写真。

生活の痕跡。


隊員の一人が棚を開く。


「紙媒体を確認」


「データ端末もある」


別の隊員が壁の写真を見る。

人間の女。

そして、まだ完全に人の姿ではないアル。


「これがアルファ個体か」


「記録より原型が残ってるな」


端末回収。

アルバム回収。

書物回収。

生活記録。

育成ログ。

全てが慎重にケースへ収められていく。


「ベータ系発達過程の資料になる」


「感情形成記録も確認」


隊長が静かに言う。


「本部が欲しがる」


部屋の奥。

小さな机の上には、

色褪せた写真が置かれていた。


カエデとアル。

幼いメイプル。


隊員がそれを見下ろす。


「……家族ごっこか」


興味なさそうに呟く。

その言葉に感情はない。

ただの対象。

研究材料。

隊長が振り返る。


「証拠を残すな」


短い指示。


次の瞬間。


火花。

爆破装置起動。



街でも異変が起きていた。

突然、照明が落ちた。


「え?」


通りを歩いていた人々が空を見上げる。

発電塔停止。

通信障害。

管理システム切断。

一瞬で街の機能が沈黙する。


悲鳴。

混乱。


その中を、黒い装甲車両が走る。

地球軍武装部隊。

アンドロイド警備機が前へ出る。


「停止要求――」


銃声。

機体が吹き飛ぶ。


街には武器がほとんど存在しない。

平和だったから。

争いを前提にしていなかった。

一方的だった。


「子供を確保しろ」


「抵抗個体は排除不要」


「最優先は回収」


人間の子供たちが連れていかれる。

泣き声。

叫び。

逃げ惑う人々。


アンドロイド達は住民保護を優先する。

しかし戦闘経験がない。

対応が遅れる。


コウセイの友人も、その中にいた。

小さな手が引きずられる。


「やだっ!」


「メイプルー!」


返事はない。

空には誰もいない。


司令車内部。

モニターには街の地図。

そして。

アルの青い機体。

メイプルのオレンジの機体。


戦闘予測データ。


「対象はまだ帰還していません」


「現在、軌道上」


隊長は静かに頷く。


「今のうちだ」


別モニター。

コウセイの記録。

本来の名前。

血統情報。

政治コード。


「対象回収は?」


「現段階では見送り」


「刺激するとアルファが動きます」


短い沈黙。

隊長が低く言う。


「まずは情報を持ち帰る」


「技術も、人材も」


モニターには、

連行される子供たち。


そして燃え始めた古い家。

アルとカエデが過ごした場所。

静かに炎が広がっていく。


その頃。

宇宙ではまだ、青とオレンジの光が並んで飛んでいた。


コウセイの笑い声。

メイプルの笑顔。

アルの穏やかな声。


誰もまだ知らない。


自分たちの大切な場所が、

壊され始めていることを。

次話は明日昼12時更新します。

第二部は全14話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ