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最適解の外側で、きみと  作者: 泣きピエロToY
第一部 空が裂けた日
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10/46

第十話「選択」


朝。

静かすぎる。

風も、音もない。

アルは外に立っている。

毎朝、外部の警戒をするのが日課になっていた。


「異常なし」


そのはずだった。

一瞬遅延。


「……検知」


遅い。

空が歪み光る。


次の瞬間。

爆発で壁が吹き飛んだ。

鉄が裂け地面が跳ねる。


カエデが倒れる。


「――っ」


アルが動く。

自分の体で覆うように遮る。

衝撃を受け止める。

地面が抉れる。

しかし、カエデには届かない。


上空に敵影多数。


「敵性反応、複数確認」


地球軍と宇宙軍が同じタイミングで攻め込んできた。

通信が割り込む。


「対象機体アルファ01を確認」


「即時回収を開始する」


別の通信。


「副次対象を確認」


カエデ。


「回収優先度、更新」


アルの処理が一瞬止まる。

優先順位は機体それともカエデ。


競合がノイズとなる。


「アル!」


カエデの声。

それだけで決まる。


「優先対象:カエデ」


固定。


アルは動く。

速い。


だが敵が多い。

包囲されている。

射線が交差する。

アルは避け続ける。

それでも、守りきれない。


一瞬の隙。

衝撃。

カエデが引き剥がされる。


「――っ!」


空中へ。

捕獲。

宇宙軍機。


「対象確保」


「やめて!!」


届かない。

アルが止まる。

完全停止。

時間が引き延ばされる。

入力だけが流れ込む。


敵の位置。

軌道。

すべて分かる。

しかし足りない。

届かない。


「……カエデ」


その名前だけが残る。


アルの視線が動く。

格納庫の奥。

アルファ01。

一歩踏み出す。

迷いはない。

勢いよく飛び乗る。


リンク開始

元々一つの存在であった。

分離していたものが、重なる。


共鳴が起こる。


ノイズが揺れる。

・ここにいて

・大丈夫

・ママ


能力の解放。

制限が外れる。

境界が消える。


「――起動」


振動。

視界が変わる。

外が内側になる。

身体が拡張される。


背部ブースター点火。

2枚の盾を左右に広げ、空へ飛び立った。


その軌道上に影が割り込む。

地球軍新型機が進路を塞ぐ。


「……そこまでだ」


アルは空中で止まる。

攻撃も、回避も選ばない。


「識別:コウイチ」


一致。


コウイチが叫ぶ。

「カエデを返せ。アルファ」


「お前がカエデを巻き込んだ」


アルも強い口調で返す。


「なぜママを守らない」


「力があるのに」


空気が張る。


「……ママだと」


一歩踏み出す。


「お前が言っていい言葉じゃない!」


コウイチが突っ込んでくる。

鈍い金属音が響き渡る。

だが、そこに殺意はない。


押し合い。

距離が詰まる。


アルは攻撃を受ける。

衝撃を逃がす。

力を流す。

攻撃を選ばない。

壊せる距離でも、踏み込まない。


アルはコウイチに聞く。


「コウイチは、たくさんの人を守れる」


「なのに、なんで」


コウイチは激昂している。


「……カエデの子供はコウだけだ」


「コウは、もういない」


「もう俺にはカエデしかいないんだ」


アルの処理が遅れる。

ノイズ。


「なら、なんでそばにいない」


「一緒に寝て、ご飯食べて、触れて、安心して」


「それが人間だろ」


コウイチは叫ぶ。


「うるさい!」


激しく衝突する。

アルはそれを弾く。

距離が開く。


「見てられなかった」


「コウを失って」


「それでも誕生日を祝って」


「そばにいたかった」


一瞬、動きが止まる。


「でも、どうすればいいか分からなかった」


アルは攻撃しない。

ただ受ける。


「これ以上、傷つくカエデを見ていられなかった」


「だから――」


コウイチは強く踏み込んだ。

アルは盾で受けた。


「カエデみたいな人を減らすために入隊した」


「……お前が現れて」


「カエデは変わってしまった」


アルの内部。

矛盾が繋がる。


「そっか」


「コウイチも」


「カエデが、大事だったんだね」


「ありがとう」


コウイチが止まる。

理解が追いつかない。

一瞬、何も言えない。

歯を食いしばる。

視線が揺れる。

でも、逸らさない。


「でも、今は」


視線が宇宙軍に向く。


「カエデを助けなきゃいけない」


コウイチは動かない。

数秒して空を見る。


「……攫われたのか」


「そう」


コウイチの顔が変わる。

迷いが消える。


「わかった……地球軍は任せろ」


銃を下ろしながら一歩、退く。

進路を開ける。


「地球軍は俺がどうにかする」


「だから」


「カエデを助けろ」


「約束だ」


アルは動く。

一瞬止まり、


「……コウイチ」


「ありがとう」


次の瞬間、

ブースター全開加速。

青い光を引いて。

上空の巨大な影。

戦艦へ向かう。


「……ママ」



(第10話 終)

「最適解の外側で、きみと 」は第一部全13話です。

次話は明日12:00投稿予定です。

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