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人格者のラベル ※暫定的  作者: 近遠 蕾
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【セクション9】非通知

帰り道。



雨は止んでいたが、空は厚い雲に覆われていた。

骨董屋『ココリコ』を出る時に、伊多乃から持たされた黒の傘。交通量の多い歩道では、チラホラと傘を差す通行人がいた。



また降り出すのかも知れない、と思えそうな日中帯と思えない空模様。若いビジネスマンが携帯を片手に小走りに駅の改札を出る。


出雲は、備え付けられたデジタル時計を見た。コスト削減や携帯電話の普及によって撤去されつつあるが、まだ残っている。頬に水粒が感触を覚える。

どうやら本日一杯は雨模様の天候になるようだ。借り受けた黒い傘のパラソルを開く。

丁度その時、ポケットに入っていた飾り気のないスマホ端末が震えた。


画面には。

———非通知の着信。



通話ボタンを解除する。


「‥‥‥はい、出雲です」


沈黙の後。




スピーカー越しから届けられたのは、警戒心を強めさせるような合成音声であった。



『コンニチハ。アナタノ自宅二死体ガアリマス。ドウシマスカ?』



そして通話は一方的に終了する。一瞬はやく頭を過ぎるものがあった。


出雲は、ホーム画面が映し出されたスマホ端末をしまって周囲を見渡す。通行人の視線が先ほどよりも敏感に感じ取れる以外に変わったことはない。



誰も彼もが次の予定に向かって足を進めている。



出雲は、駅の構内に入るのをやめて、黒い傘を差しながら翻るようにその場を離れた。


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