エピローグ『そんにゃこともあったのにゃん!』のその①
エピローグ『そんにゃこともあったのにゃん!』のその①
「とまぁそんにゃことがあったのにゃよ」
「ずいぶんと珍しい体験をしましたね」
ウチの話相手はレミロにゃん。キーボードを叩く手を休ませることにゃく、興味深々といった顔をこちらに向けて喋っている。にゃんとも器用にゃご仁じゃにゃいの。
ここは保守空間マザーミロネにゃんの中。たくさんの色が交互にめまぐるしく現われる世界にゃ。でもって話を聴いているのはオペレーターのレミロにゃんにゃけじゃにゃい。
ぷゆぷゆ。ぷゆぷゆ。ぷゆぷゆ。ぷゆぷゆ。
レミロにゃんが造り出した相棒。『黄色くって小っちゃくて真ん丸』の可愛いにゃん丸らも一緒にゃ。所狭しとばかり、床、空間、椅子、そしてウチとレミロにゃんの身体にひっついているのにゃん。
そしてもうひとり。……本当はこのいい方、正しくはにゃいのにゃけれども……いうに及ばず、マザーミロネにゃん自身にゃ。
《ぷゆぷゆ》
《やめにゃさい。いい歳をして》
《んまっ!》
『天空の村』の平和を維持する。これを目的として観測及び監視を担っている、ここ保守空間マザーミロネは、空間自体が精霊という極めて特異にゃ存在にゃ。でもって、にゃん丸らはレミロにゃん自身の分身。レミロにゃんはマザーミロネにゃんが造り出した影ということを鑑みれば、実際ここにはマザーミロネにゃんしか居にゃい、ということににゃる。そしてウチは今、マザーミロネにゃんの体内に居るってわけにゃ。
(とはいうものの、ウチにはレミロにゃんやにゃん丸らと話しているとしか思えにゃいし、それで良かったとも思うのにゃ)
《にゃあんか考えれば考えるほど、頭がこんがらがってくるのにゃ》
《しょうがないのよ。ややっこしくしているマミちゃんがいけないんだから》
まっ、保守空間のことはさておきにゃ。どうしてウチがここに居るかといえば……。
レミロにゃんの話に依れば、どうやら、ウチらが館に居る間はミロネにゃんとのアクセスが出来にゃかったらしい。にゃもんで、『いつでもよろしいですので、こちらへお話をしに来ては貰えませんか?』と保守空間から催促が来ていたのにゃん。今回の件に対するミロネにゃんの記憶や判断が、どれほど正しいのかを確かめたいから、というのが本音のようにゃ。
「まぁざっと話してはみたのにゃけれども……、
ウチの説明で良かったのにゃろうか? ちゃんと判って貰えたのにゃろうか?」
「はい。ミロネからも、『館の妖魔に関する情報をもっと詳しく知りたいのあれば、ミアン殿に教えてもらうのが一番だ』と聴いていましたもので。本当、伺わせて頂きまして助かりました。
保守空間という立場上、村の出来事に関しては一つもらさず記録として留めておかなければなりませんし、また妖魔に関しても情報は出来るだけ欲しいと、かねがね思っていたものですから。お聴きした甲斐がありました。心から感謝しています」
「まぁ、にゃんらかの参考ににゃってくれればウチとしても嬉しいかぎりにゃ」
にゃん丸らも満足しているみたいにゃ。目をきらきらさせておとにゃしく、ずぅっ、と、お話に耳を傾けていたのにゃもん。
レミロにゃんのキーボードから奏でられるメロディがやんでしばらくしてから、別のメロディがどこからともにゃく流れてきた。恐らくは、マザーミロネにゃんがレミロにゃんににゃにかを伝えたのにゃろう。音が静まると、レミロにゃんが話しかけてきたのにゃ。
「お話をして頂いたお礼に、といってはなんですが……、
たった今、マザーから今回の件に関する分析の一部が伝えられてきました。
どうです、ミアンさん。お知りになりたいですか?」
「分析とはにゃあ。簡単に話してくれるのにゃら」
「判りました」
レミロにゃんは、ふふっ、と微笑んでから、見上げた格好でそのまま目を瞑ったのにゃ。どこから話そうかと頭を整理しているようにも見える。でもそれも束の間にゃ。直ぐに視線と言葉がこちらへと向けられたのにゃん。
《いいわよ、分析なんて無粋なのは。ワタシの美しさは見ての通り。
もう誰しもが認めるところだから》
《にゃあんか勘違いしているのにゃあ》
「先ずは、にゃあまん殿の中で、お姫様の意識が目覚められた件についてですが……、
きっかけを造ったのはイサベラ殿です」
「ミーにゃんのお姉にゃん?」
「そうです。イオラの花同士のみが行なえる『閉じた交信』にて、お姫様に語りかけられたのです」
「ちょいと待つのにゃ。『閉じた交信』っていうのは確か、自分が決めた相手としか出来にゃい交信で、その内容は他には漏れにゃいはずにゃ。にゃのににゃんで、レミロにゃんは知っているのにゃん?」
「それは極秘事項なので誰にも教えることは出来ません……といいたいところですが」
「ふむ?」
「こちら保守空間では、ミアン殿は、『イオラ殿』もしくは『イオラ殿のご使者』との認識です。なので、どうしても知りたいというのなら、お望みのままに。なんの隠しだてもなく、お話しますよ」
「ありがたいことにゃん。にゃらば是非とも聴かせて欲しいのにゃん」
「では……。実はですね。開いた交信であろうが、閉じた交信であろうが、天空の村で行なわれる霊覚交信の一切が、こちらでは筒抜けになっているのです」
「にゃ、にゃんと!」
「驚かれると思いましたよ。命として生まれた以上、秘密はツキモノです。なのに、それをあからさまにしてしまうのですから。
もし、これが公けになりにでもしたら……、
『無粋この上ない』との批判をなされる方も、いや、それどころか、『言語道断。傲慢にもほどがある』などの激しい非難を浴びされるお方もおられるのに違いありません。保守空間の廃絶を唱える方だって出てこないとはかぎらないのです。
だからこそ、実体霊体問わず、の『極秘事項』なわけでして。
それもこれも全ては『天空の村を守るため』なのです。お察しください」
「ふぅぅむ。……いわれてみれば、仕方がにゃいのかもしれにゃいにゃあ。にゃんといっても保守空間にゃもん」
「早速ご理解頂き、感謝の念にたえません。
……それから、いうまでもありませんが、他言は一切無用に願い上げます」
「イオラにゃんやミーにゃんには?」
「問題ありません。ですが……、『他言は無用』の口止めは、ミアン殿が責任を持って、おふたりに、ちゃんとなさってくださいね」
「どちらもお喋りにゃしにゃあ。ウチがいったところで守ってくれるかどうか」
「信頼していますからね。『ミアン殿』を。わたくしも、にゃん丸たちも」
ここまで念を押されたのにゃ。筒抜け話は、『いわにゅが花』と黙っていることにしたのにゃん。
「では、イサベラ殿とミーナ殿の間で交わされたお話をお聴きください」
レミロにゃんは会話の記録を再生してくれたのにゃ。
『ミーナ! いつまでおネムっている気なの? 早く起きなさい!』
『うん? ふわあぁぁい。
ええとぉ。誰かがアタシを呼んでいるようなぁ……』
『こらあっ! いい加減になさい。アタクシの声が判らないほど、アホになったわけじゃないでしょうが!』
『う、うわっ! お姉ちゃん!』
『ふっ。やっと起きたみたいね。本当、あんたって世話が焼けるんだから』
『ええと……アタシは今……』
『妖魔に身体を乗っ取られた挙句、おネムさせられていたのよ。
全くもう。信じられないわ。
あんたはイオラの木に咲く花の妖精。イオラの造り子なのよ。
なのに、仲間の中で真っ先にやられちゃう体たらく。長姉として恥ずかしいったら、ありゃしない』
『違うわん、イサベラ。たまたま運が悪かっただけで』
『いい分けしない。見苦しいだけよ。
さぁ早くその身体を使って、敵を倒してしまいなさい』
『身体? うわっ! アタシがにゃあまんになっているわん。
これってどういうことわん?』
『説明なら、あとで仲間がやってくれるから。
ほらほら。早く動きなさいってば』
『急かされたって一体どうやれば……おおっ!
どうなっているのかさっぱりだけど、にゃあまんがアタシの手足のように動くわん』
『でしょ? 判ったら、さっさと始めなさい』
『うん。有難う、お姉ちゃん』
『イサベラでいいわよ。いつもみたいに。それじゃあ、しっかりね』
声がやんで間もにゃく、レミロにゃんが口を開いたのにゃ。
「会話の記録はここまでです」
「にゃあるほどぉ。イサベラにゃんの叱咤でミーにゃんは目覚めたのにゃ。
……ああでも、にゃんでカイラにゃんじゃにゃくって、ミーにゃんのほうが、にゃあまん様の身体を動かせたのにゃん?」
「あれはにゃあまん殿ご自身の意志に依るものと思われます」
「ふにゃ? でもにゃあまん様は」
「ええ。心が空っぽ同然の状態だったのです。しかしながら、『空っぽ同然』というのは『空っぽ』とは違うのです」
「そういえば、前にもそんにゃことを聴いた気がするのにゃあ」
「理由はどうであれ、カイラはにゃあまん殿に取り込まれました。カイラから、『にゃあまん光石』の力を与えられたのです。故郷からもたらされたこの力のおかげで、にゃあまん殿は力ばかりか、心まで回復させることが出来たのです」
「そうにゃったの」
「ここで、にゃあまん殿とお姫様とカイラの間で、霊覚交信を使って、の話し合いが持たれました」
「うんにゃ。ウチも聴いたにゃよ」
「カイラの中にカイラ自身の心とお姫様の心があったからです。二つの心を天秤にかけた結果、にゃあまん殿は、お姫様のほうが自分の心に近いと判断なされたのでしょう。なので、ご自分の身体を好きに使って良いとの許可を与えられたのだと思われます」
「にゃあるほど。『妖魔の王ににゃりたい』という野心よりも、『イオラの森を、森に棲む命を愛していきたい』とする心のほうに魅かれたのにゃん」
「というのが、……真実かどうかはともかくとして、マザーの見解です。
それともう一つ。お姫様が、にゃあまん殿の身体を使って『妖力爆風波』を使えた件に関してですが」
「にゃにかあるのにゃん?」
「あれは一時的に、ではありますが、にゃあまん殿とお姫様が身も心も融合した為、と思われます」
「にゃんと!」
「もっと正確にいえば……、
お姫様に分け与えられたイオラ殿の命の欠片が、にゃあまん殿の命とも結びついたのです。結果、見かけ上、にゃあまん殿ではあっても、実際にはお姫様の身体なのです。妖力爆風波が使えたのも、それが理由、というのが」
「マザーミロネにゃんの見解。そういいたいのにゃろう? ぶふふっ」
「はい。その通りです。ふふっ」
ウチらは笑い合う。釣られてか、にゃん丸らも、ぷゆぷゆ、とけたたましいのにゃん。
「ということはにゃ、レミロにゃん」
ウチの言葉で、しぃぃん、とにゃる。
「全ては『ミーにゃんがお姫様にゃから』とするウチの考えは」
「正しいと思います。マザーの分析が真実であるとするなら」
偶然かもしれにゃい。でもにゃ。アホはアホにゃりに真理を突くこともある。そんにゃ風に思うウチにゃのにゃん。
《どうにゃん? ウチの洞察力は。全てお見通しにゃのにゃん》
《きゃっ! エッチ!》
《あんたにゃあ》
「あのさぁ。メリークリスマスでいいのわん?」
「メリークリスマスだよ」
「メリークリスマスだな」
「メリークリスマスね」
「じゃあ、せぇのぉっ!」
『メリークリスマスなぁのわぁん!』




