第十二話『にゃあまん様が怒ったのにゃん!』のその②
第十二話『にゃあまん様が怒ったのにゃん!』のその②
「ほぉんと、変わっていますですよねぇ。翼があるヨモギ団子なんてぇ」
このミムカにゃんの言葉に、当の巨大化した相手は、かちん、ときたみたいにゃ。
「こらぁっ! そこっ。
ヨモギ団子の化身だけど、ヨモギ団子じゃないわん!
ミーにゃあまんだわん!」
「どっちでもいいじゃありませんですかぁ」
「いいわけないわん!」
にゃあまん様は、自分の顔近くまで飛んできたミムカにゃんとにらめっこ。どっちも譲る気配がにゃい。ということは物語は進展しにゃい。それでは困る。にゃもんで、
「ミーにゃん。ミムカにゃんと遊ぶ前に、やることを先にやったらどうにゃん?」
「えっ」
くるっ。
緑がかったオモチ顔が、こちらを振り向いたのにゃん。
「ミアン」
にっこり、と笑みを浮かべた、もちもち感たっぷりのその表情には、『逢えて嬉しい。話せて楽しい』の思いがありありと。もちろん、ウチも心はおんにゃじにゃ。
ちぃとばかし、間が空いたあとに続けた言葉は。
「ふむ。ミアンのいう通りなのわん。なら」
ふわふわふわ。ふわふわふわ。
もはや館であったのかさえ疑わしい、がれきの上空へと飛んでいくにゃあまん様。周りに群生している木々よりも少し高いところで、浮かんにゃままとにゃる。
「ありったけの力で、トドメを刺させてもらうわん。
妖力充填!」
途端に、にゃあまん様の翼が白く光り出す。とその時、グッドタイミングで霊覚交信が伝わってきたのにゃ。
「ミーナちゃん。あなた自身の力を放てば遊びの広場に過大なダメージを与えるだけだわ。
ワタシの力をお使いなさい」
「イオラ! 了解だわん!」
翼の色に変化が。白から緑色へと輝いたのにゃん。
《満を持してワタシ登場! ……あらっ? 声だけ?》
《うんにゃ。申しわけにゃい》
「にゃんとも感動あふれる場面にゃ」
知らず知らずのうちに、ほおを伝う涙のしずく。そんにゃ繊細にゃる心を全然理解しにゃい下賤にゃ輩も悲しいかにゃ、世の中には居るのにゃ。
「ねぇ、ミアン君。ちょっと聞きたいことが」
「にゃんにゃの? ミクリにゃん。折角いいところにゃのに」
ちょびっと、頭にきていたのかもしれにゃい。日頃のウチに似合わにゃい、ぶっきらぼうにゃ口調にゃん。
「いやさ。ほら、ボク達みんなで、『にゃあまん様』に乗り込んだ時があったじゃない」
「あったにゃ」
「もちもちっ、とした、あの身体を動かすだけでも大変だったろ?」
「大変だったにゃ」
「なぁんか冷たい返事ばっかだけど……まぁいいや。
ねぇ。ミーナ君って、今回初めてにゃあまん様となったんだよね。なのにどうして、あんな簡単に巨大化したり、進化とかいって、ミーにゃあまん様になれたり出来るんだい?」
(にゃにつまらにゃいことを。これにゃからアホはイヤにゃのにゃ。
肝心要のことは、さっぱり、ぱり、にゃのに、どうでもいいことには鋭く追及してくるのにゃもん)
「あのにゃあ。ミクリにゃん」
「どうしたの? 薄焼きせんべいよりも薄い目をして」
「おせんべいは美味しいから、いいとしてにゃ。
ミーにゃんはイオラの森のお姫様にゃんよ」
「うん。それがどうしたの?」
「どうしたって……ふにゃ? まにゃ判らにゃいのにゃん?」
「ええと……つまり、それが答えってわけ?」
「そうにゃん」
「そんな乱暴なぁ。もっと詳しくさぁ」
「にゃにいってんのにゃん。
にゃあ、ミクリにゃん。一個に一個を足すと、二個ににゃるにゃろう?」
「うん。そうだけど」
「どうしてにゃん?」
「どうしてって……、当たり前としか答えようがないよ」
「その通りにゃ。ミーにゃんはお姫様にゃから出来る。
これも当たり前にゃ。当たり前は当たり前としか、説明のしようがにゃいのにゃん」
「そっかぁ……。うん。ミアン君、判った(とまではいかないにしても、判ったような気がするから、それで判ったことにしておく)よ」
「にゃらよろしい」
ふぅ。……このように教育とは難しいものにゃん。
《ワタシだから出来る。それしかいいようがないわ》
《し、しまったのにゃん! ウチとしたことがまたにゃんてうかつにゃ……。
ツッコミの出来にゃい『いい分け』を、こともあろうに、思いつかせてはにゃらにゃい相手に思いつかせてしまうにゃんて!》
緑色の光が眩しいまでの輝きに。と、ここでにゃん。
「やめてぇ! これ以上、なにをする気なのぉ!」
耳に、ではにゃく、霊覚に響く悲鳴にも似た声。もちろん、カイラにゃんにゃ。
(まにゃ意識があるのにゃん)
「充填完了!
カイラ。滅びを与えるわん。それぇっ!」
『妖力爆風波、にゃあまんVersion!』
「やめてぇ…………きゃあああぁっ!」
心に届いたのは『断末魔の叫び』ともとれるカイラにゃんの悲鳴にゃん。
……でもにゃ。『時既に遅し』にゃんよ。
ずばばばばばああぁぁっ!
翼から放たれた緑色に輝く烈風が、館だったモノを一掃したのにゃん。
「終わったにゃ」
《あっけない幕切れね。ミーナちゃんの仕返しはいいとして、
今一つ工夫を凝らしたほうが良かったのじゃないかしら》
《まぁまぁ。もうちょいあるのにゃん》
ここでミクリにゃんに学習のおさらいを。
「にゃあ、どうしてにゃあまん様は『妖力爆風波』を使えるのにゃと思う?」
「……ミーナ君がお姫様だから?」
「うんにゃ。正解にゃ」
……とか遊んでいる場合じゃにゃいっ。
どどどどどぉっ!
「終わっては、いにゃかったのにゃん!」
妖力爆風波は館を消滅させたにゃけに留まらにゃい。大地をも揺るがす凄まじい衝撃波とにゃって円状の拡がりをみせ、轟音とともに、こちらにもやってきたのにゃん!
「ふにゃああぁぁん!」
ウチら妖体ごときが抗えるはずもにゃく、とどのつまりが、呑み込まれるしまうしかにゃかったのにゃん。
《あら。ミアンちゃん、やるじゃない。それなら、ばっちし、よぉ!》
《にゃんで?》
あれから……どれくらいの時が経ったのにゃろうか。
よたよた。よたよた。
四方へと吹っ飛ばされたものの、『やっぱり、帰るところはここ』とばかり、足元をふらつかせにゃがら『遊び場』に戻ったウチら。しばし、自分の目の前にあるものが信じられにゃかった。でえぇん、と我が物顔で居座っていた妖魔館が跡形もにゃく消えてしまったにゃけじゃにゃい。館が降り立つ前の、青々とした草原までもが、元の姿を取り戻していたのにゃん。
《ワタシの力を使わせてあげたからよ。……なぁんて自慢してもいい?》
《もちろんにゃよ。感謝感激雨あられ、にゃん》
「お、おのれぇ」
霊覚交信にゃ。霊覚を使って交信元を辿ってみたらにゃ。草むらの真ん中に、あのパンドラの箱が転がっていたのにゃん。
「あんた、まにゃ生きていたのにゃん?」
「わらわにはもう、妖魔館も、にゃあまん光石もない。しかしながら、このパンドラの箱も、ヤカンを倒したことで手に入れた霊火の身体や奇生魔の力も、未だ残されたまま。滅びやしないわ」
「にゃら、誰かに寄生するつもりにゃん?」
「そう。……わらわの目の前に居る敵に」
突如、パンドラの箱がさっきのように、ぱたっ、ぱたっ、と開いたのにゃ。中にあったのは小っちゃにゃ霊火の炎。赤から青へ、青から赤へと、二つの色に移り変わるそのさまをにゃんということもにゃしに眺めていたらにゃ。
「し、しまったのにゃん!」
まさに油断大敵にゃ。身体が硬直して、身動き一つ取れにゃいのにゃん。
「く、来るにゃあ!」
叫んではみたもののにゃ。霊火は、ふわふわっ、と浮き上がってくる。でもって、ゆっくりと、こちらへ…………とその時にゃ。
ぐっしゃりっ。ぐしゃぐしゃぐしゃ。
目と鼻の先で、にゃあまん様のもちもち足が霊火を踏み潰したのにゃん。舞い上がった砂埃は当然のことにゃがら、ウチの身体全体へと降り注がれていく。
「ごほっ。ごほっ」
むせぶウチの耳に届いたのは、悔しさがにじみ出た声。
「む、無念……」
この言葉を残してカイラにゃんの霊火は跡形もにゃく消えてしまったのにゃ。でもって周りを見たらにゃ。開いたパンドラの箱もまた、粉々に壊されていたのにゃん。
「今度という今度こそ、本当に終わったのにゃん」
遊び場に戦神の声が響き渡ったのにゃん。
「わがはいは『にゃあまん』と申す。
にゃあまん光石を体内に収めたことで、力ばかりか、心まで回復することが出来た。これでようやく我が故郷、惑星にゃあまんに戻れる。
長い間、ご厄介になった。かたじけない。
そうそう。
我が体内に未だ残っているミーナとやらの妖精は、……どうやら張り切りすぎて疲れたらしい。ぐっすりとおネムをしている。まっ。そっとしておくか。
この妖精は、お主らに返すとしよう。せめてものお礼だ。喜んでくれるとありがたい。
では、これでさらばだ」
にゃあまん様は石像の姿に戻ることもにゃく、立ち姿のまま、まるで宇宙に吸い込まれるように空へ空へと上昇。両足の底から噴き出している白煙が、その軌跡を描いていくのにゃん。
(お別れの時が来たのにゃん)
「にゃあまん様ぁ。さようにゃらぁぁ!」
ウチらは、その雄姿が視界から消えるまで、ずうぅっ、と見送っていたのにゃん。
にゃあまん様が去って、白煙も消えたあとには、雲一つにゃい青い空が残っているにゃけ。その真下、遊び場の草原には……、
寝ぼけ面とも見紛う、きょとん、とした顔の可愛い妖精が、
イオラの森のお姫さまが、
ウチの大事にゃ親友が、
ぽつん、と、ひとり、斜め膝で座っていたのにゃん。
「ミーにゃん!」
「あっ、モワ……ううん、ミアン! ミアアァァん!」
これこそ感動の再会にゃ。普段は強がりで意地っ張りにゃとこばかりを見せるミーにゃんが、本来の『甘えん坊でさみしがり屋にゃ幼子』にゃ姿で、目に涙を浮かべて、ぱたぱた、と飛んでくるのにゃん。
(しかもにゃ。ウチのことを……ぐすん……ウチのことを……ちゃあんと……ぐすん……ちゃあんと、ミアン、って呼んでくれたのにゃん)
「ミーにゃあぁぁん!」
あとは……いうまでもにゃい。
どちらからともにゃく抱き合い、お互い、涙でほおを濡らしたのにゃん。
《ちょっと強引な気がしない?
終わりのほうの、『感動の再会に思わず、「ミアン」と叫ぶ』シーンって》
《やっぱダメにゃの?》
《そうねぇ……。
でもまぁハッピーエンドに色をつけたってことで、これはこれでいいとしますか。
とまぁそんなわけで、
ミアンちゃん。なんとかここまでこぎ着けたわね。おめでとう》
《ほっ。
イオラにゃんも長々とつき合ってくれて、有難うにゃん。
さてと。いよいよ、最後の『エピローグ』にゃあ》
《えっ。まだあったの?》
《うんにゃ。まにゃあるのにゃん》
「とうとう、ここまできちゃったかぁ。
ねぇ、ミアン。
残るは、エピローグの二話分しかないのわん。
振り返ってみれば、ずいぶんと長い道のり……あれっ。
いつの間にか、ミアンが居ないのわん。
一体どこに……おや? 机に置き手紙なのわん。
どれどれぇっ」
『親愛にゃるミーにゃんへ。
にゃあまん「謎の館が邪魔にゃのにゃん!」のお話自体は、
実質、今回で終了にゃもんで、ウチは先に帰らせてもらいますのにゃん。
エピローグにゃって二話とも、『振り返って』くらいの内容にゃんにゃし、
ミーにゃんも律義に残っていにゃいで、
適当にゃところで『お開き』にしたらいいんじゃにゃあい?
早く帰ってきてにゃん。
でもって、懸案のおこた(=こたつ)を出すかどうかの件で、
イオラにゃんと三にんでじっくりと話し合おうにゃん。
じゃあにゃ。
ミアン。
追伸。
帰る際には、「にゃあまんの部屋」の戸締まりを忘れにゃいでにゃ』
「ムカぁっ!
――と怒りまくって――
なぁんで、帰るのなら帰るっていわないのわん!
なぁんで、アタシも誘わないのわん!
こぉんな白いだけの殺風景な「にゃあまんの部屋」に、
ひとり取り残されるなんて、まぁっぴらごめんなのわん!
――ということで、怒りを鎮めて――
アタシが居なくたって、『きよしこの夜』が流れる頃には、
勝手にエピローグのお話がなされるのわん。
なもんで、遠慮は無用。
アタシも早速ずらかるのわん!」
ぱたぱたぱた。
「おおっ、と。戸締まり戸締まりぃっ。
確か出入り口のところに赤いボタンが……あっ、あったのわん。
これを」
ぷちっ。
「と押したから、
あとは自動で閉まるはず。
ロックされて、外界とのリンクも閉ざされるはず。
万が一、『はず』が『はず』じゃなかったとしても、
とりあえず、やらなきゃならないことはやったんだから、
おとがめ無用、で、万事OK。
ならば、アタシも」
『さよならぁっ!』
ぱたぱたぱた。
「おこたかぁ。まだ早いような気もするしなぁ……」
ぱたぱたぱた。
しぃぃん。
がしゃがしゃがしゃああぁぁん!
しぃぃん。




