第八話『逃げ水に、砂嵐に、ええとぉ、石蛇にゃん!』のその④
第八話『逃げ水に、砂嵐に、ええとぉ、石蛇にゃん!』のその④
「鬼にゃん、こちら。手のにゃるほうへ」
追い駆けっこが始まったのにゃ。ちらちらっ、と後ろを振り向きにゃがら、『ウチにしては』の激走。とはいってもにゃ。たにゃ、真っ直ぐでは捕まりやすい。そこで右へ左へとジグザグ走りにゃ。不意に、とまったりもしてみる。これらの工夫が功を奏しているのにゃろうか、にゃかにゃか攻撃に打って出にゃい。追い駆けるので手一杯みたいにゃ。とはいえ、こちとらも今は実体化している身。いわばナマネコにゃ。いつまでも、というわけにはいかにゃい。休みをとらねばにゃらにゃいのにゃん。
(ううん。どうすればいいのにゃろう?)
ええとぉ。確かさっき相手は、『追っ駆け』から『攻撃』へと転じるまでに、ほんのわずかにゃがらも間があったにゃ。さしずめ、『狙い定めていた』ってぇとこにゃのにゃろうけれども…………ふぅぅむ。これを逆手に使えにゃいかにゃあ。逃げるのは真っ直ぐでもゆっくりでも構わにゃい。ぎりぎりまで近づかせておいて、動作がとまった瞬間、ぱぱっ、と向きを変えて、その場から逃げるのにゃ。紙一重でもにゃんでも、かわせれば、こちらの勝ち。いったん攻撃に入ればそのまま突進していくしかにゃいから、相手は地面を掘らざるを得にゃくにゃる。しかもにゃ。直ぐには気がつかにゃい。とにゃればにゃ。ぶふっ。引っこ抜かれるまでの間、こちらは悠々とひと休みにゃ。
(これは意外とイケるかもしれにゃい)
以降、グリグリの『追い駆けては穴を掘り』が延々と続くのにゃ。元々が砂にゃせいにゃろう。たにゃ、がむしゃらに仕掛けてくるのにゃ。にゃもんでこちらとしては本来であれば、ほくそ笑むところ、にゃのにゃろうけれども……。
(にゃあんか親近感を覚えるのにゃあ。
きっと立場が違えば、お友にゃちとにゃっていたのに違いにゃい)
《ミアンちゃんったらぁ。
ああでも……、お友だちになるのはいいとして、ここを砂だらけにしちゃダメよ》
《棲み家に来てくれるくらい、仲良くにゃれたら奇跡にゃん》
ふと辺りを見回せば、みんにゃも逃げ……遊んでいるのにゃん。
ずぶっずぶっずぶっずぶっずぶっ! ずぼずぼずぼずぼずぼっ!
(こっちも大変にゃのにゃけれども、敵側はもっと大変にゃろうにゃあ)
他の五体もウチを追い駆けてくるグリグリとおんにゃじ目に遭っているのにゃん。
追っ駆けて追っ駆けて、ようやく追いついて突っ込んではみたものの、苦労の甲斐もにゃく空振り。地面を掘り続けるのにゃ。でもって、やっとこさ気がついて、頭を出してみれば、相手はもう先のほう。にゃもんでまたまた追っ駆けへと戻らねばにゃらにゃい。この繰り返しにゃもん。敵とはいえ、同情の念に堪えにゃい。
……にゃどと、ウチらも余裕をこいてはいられにゃかった。
慣れてきた、という表現があてはまるかどうかはさておきにゃ。敵側の動作が、どんどん機敏ににゃっていくのにゃん。『にゃんでそんにゃに』とびっくりするくらい。当然、ひと休みの間もどんどん狭まっていく。
(まずいにゃあ)
《ねぇ、ミアンちゃん。ワタシね。常々疑問に思っていたことがあったのよ》
《にゃんで自分みたいにゃもんが守護神にゃの? って?》
《そうね。それもあるわね……》
《そんにゃ真剣に考え込まにゃくっても。
で? 一体にゃにが疑問にゃ?》
《えっ。あっ、そうそう。そうだったわね。まっ、たいしたことじゃないのだけれどぉ。
『善は急げ』と『急いてはことを仕損じる』
一体どちらのことわざが正解なのかしら?》
《急ぐべきか、急がざるべきか、にゃ。
ケースバイケースって奴じゃにゃいの?
選択を誤れば、とんにゃしっぺ返しを食らうのにゃん》
《そうかぁ。だから、ワタシは守護神になれたのね。誤ったんだわ》
《イオラにゃんが?》
《ううん。ワタシ以外が》
実はにゃ。ウチのほうにも変化が。
……とはいっても、こちらは自慢にもにゃらにゃいのにゃけれども。
時間が経つにつれ、ネコの性分が顔を出してきたのにゃん。ミもフタもにゃいいい方をするにゃら、にゃんにゃんと面倒ににゃってきた。『もう動くのはごめんにゃ』とイヤけが射してきたところへ、グリグリの『ほら。早く動け』と急かさんばかりのせわしにゃい真逆にゃ行動。ウチが、ぷちっ、とキレるのも、一つの決断を下したのも、無理からにゅことにゃのにゃ。
《キレるといえば……、ガムラ様のアレもそうなのかしら。
だいぶ前の話になるけれど、実はワタシ、ガムラ様の怒りを被ったかなんかで、百年ほど大岩の中へ封じ込められたことがあるの。
……イオラの木の精霊なのにもかかわらず。
『でもまぁ直ぐに出してくださるわね』と楽観視するも一向にその気配はみえず。だったら、ってことで、『出せぇ! 出しやがれぇ!』って叫んで泣きわめいて、とまでやってみせたんだけれど、これがさんざん。誰ひとり来やしない。
後輩のフィーネちゃんだって来やしない。
……イオラの木の精霊、ううん、大精霊なのにもかかわらず。
ふぅ。思えば、ひどい扱いをされたものだわ。
……イオラの木の大大だぁい精霊なのにもかかわらず》
《一体にゃにをやったのにゃん? 大大だぁい精霊さまにゃんは》
《ふっ。忘れたわ。きっと些細なことよ》
仕留められる確証は一つもにゃい。しかしにゃがら、頭が、かっか、としている今、やめる気は毛頭にゃい。
(一か八かにゃん!)
《あら意外。ミアンちゃんって、ギャンブラーだったのね》
《どこから、そんにゃ用語を引っ張り出してくるのにゃん?》
突っ込んでくるグリグリに対し、ウチは怯むことにゃく、真正面で対峙。ネコ人型モードで立つと、両手のひらを相手にかざしにゃがら叫んにゃのにゃ。
「ネコネコ反射ぁっ!」
バアアァァッ!
『ネコネコ反射』はウチが得意する霊呪の一つにゃ。でもって放たれる反射波の形や色はお好み次第、にゃのにゃけれども……。今回、目の前に造ったのはにゃ。形は縦長四角、色は光沢映える白みがかった半透明、とまぁデザインセンスが『からっきし』を暴露する、恥ずかしにゃがらの代物にゃん。
ばじっ!
ドリル刃が反射波に突き立てられた、とその直後、
ぐっしゃああぁぁん!
グリグリ自身がもろくも崩れ去ったのにゃん。
反射波は名前の通り、物質的、霊質的を問わず、ぶつけられた力をそのまま相手にはね返してしまう霊波にゃん。『攻撃は最大の防御』にゃあんて言葉もあるから、防壁としてみれば、理想に近い形、にゃのかもしれにゃい。
「あっけにゃい最後にゃん」
砂と化して飛び散った敵を目の当たりにして、ウチはひとり呟いたのにゃ。
哀れみの思いを込めて。
《そこは、『ばんにゃあい! やったにゃあ!』じゃないの?》
《ウチ、恥ずかしにゃがら乙女にゃもんで》
周りを見回す余裕が出来たもんで、『他のみんにゃはどうにゃったの?』と視線を巡らせてみたところにゃ。にゃかにゃかもって善戦しているみたいにゃのにゃん。
《ミアンちゃん。『善戦』って言葉、良く聞くけれど……、
要するに、勝っているのかしら? それとも、負けているのかしら?》
《ウチとしてはにゃ。
『思った以上に戦えている』ぐらいの意味で使っているのにゃけれども》
《で? 勝っているの? 負けているの?》
《あのにゃあ。それをこれから話すのにゃん》
先ずはミクリにゃん。力自慢の性格からして、ここは当然、『力の戦士』にゃろう、との予想はついていたものの、……いやはや、期待を裏切らにゃい御仁にゃ。
全身真っ赤っ赤の毛並みで、襲いかかってくる敵めがけてジャンプ。ここが腕の、じゃにゃい、足のみせどころ、とばかり、頭部に蹴りを集中。宙に浮かんにゃままで、上下左右、それに真正面へと、ぱっぱっぱっ、と移動しては、どがどがどがっ、と立て続けにゃ。
実体化で得られた体力に霊力がプラスされては、しかも、それがミクリにゃんというにゃら、砂の化け物みたいにゃ相手も、さすがにふらふら。でもってついには。
ばたあぁん!
グリグリの頭は延びた胴体ごと砂地にまみれたのにゃん。
「やったにゃあ! さっすがはミクリにゃん!」
《ばんざぁい! ほらほら。『やったにゃあ!』っていってるわよ》
《にゃから?》
ウチの歓声が聞こえたらしく、地面に下りると、すぐさまこちらへ向かってピースのサイン。ナマネコ(実体を持つ普通のネコにゃん)にゃらどうにも難しいこの仕草をにゃ。誇らしげにゃ顔を浮かべたまま、いとも簡単に示したのにゃん。
《グー、チョキ、パーと。
ふぅむ。やっぱ難易度が一番高いのは、チョキにゃん》
《そうね。自分を捨てれば、簡単にパーになれるものね》
《にゃんの話にゃん?》




