第八話『逃げ水に、砂嵐に、ええとぉ、石蛇にゃん!』のその③
第八話『逃げ水に、砂嵐に、ええとぉ、石蛇にゃん!』のその③
砂嵐が終わって、ほっと一息ついたのも束の間。今度は思いがけにゃい景色を目の当たりにしたのにゃ。
ざざざざざぁっ! ざざざざざぁっ! ざざざざざぁっ!
砂で埋め尽くされた白い地面のあちらこちらから、巨大にゃ円錐状の物体が盛り上がるかの如く出てきたのにゃん。天上に届けとばかり、どこまでもどこまでも細長ぁく延びていくそれを良く良く見れば、にゃんと膨大にゃる砂の集まりにゃのにゃん。
「すっごいねぇ。ミアン君」
「たいしたもんにゃあ」
あまりのド迫力に圧倒されてしまい、こんにゃもんを口にするのが精一杯。ところがにゃ。驚きはそれにゃけに留まらにゃい。というのも、突如とがった頭部分が、くるっ、と湾曲。こちらを向いたのにゃん。しかも一斉ににゃ。細長の部分を左右にユラユラさせにゃがら、あたかもこちらを見つめてでもいるかのようにゃその姿勢は、誰がこの場に居合わせたって、『命あるモノ』と目に映るにゃろう。
「まるで石の蛇にゃん」
「本当だね。生き物みたいに動いている……って、良ぉく見たら、身体の下側が地面とくっついたままかぁ。
あれっ? ということは、あそこから移動出来ないってことかなぁ」
「にゃんであんにゃもんが現われたのにゃろう?」
「と聴かれてもねぇ。ボクだって、あんな『ぐるぐる』を見るのは初めてさ」
「ぐるぐる? ……ああ、にゃあるほどぉ」
ミクリにゃんのいう通りにゃ。ウチらの数に合わせるかの如く現われた六体のどれもが揃いも揃って、『上から下まで全身が、ぐるぐる、と捩じられた模様に彫られている』にゃ感じの容姿にゃん。
(ここいらでそろそろ説明が欲しいところ、にゃのにゃけれども)
期待に違わず、というか、ばっちし、のタイミングで、声色は違うものの、聴き慣れた口調が耳元に届いたのにゃ。
「健全な肉体にこそ健全な精神が宿るわん!
とりゃあ! とりゃあ! とりゃあ!」
(にゃにアホにゃことをやってんのにゃ?)
そうツッコミたくにゃるお相手はご存じヤカンにゃん。上空に、ぱっ、と現われたと思ったらにゃ。盛んに右手と左手の拳を交互に突き出して、ひとり異常に燥ぎまくっているのにゃん。
「一つの身体に二つの心が宿っているあんたが口にするセリフじゃにゃい」
至極もっともにゃ意見に、一瞬、固まった感じのヤカンにゃん。しかしにゃがら、すぐさま、『にゃにもにゃかった』『にゃに一つ聴かにゃかった』フリして言葉を続けたのにゃん。
「いよいよ、第二ステージ。新たなる闘いの幕開けなのわん!」
《あら。まるでミーナちゃんみたい》
《変にゃところが染まってしまったのにゃん》
「闘いってことはにゃ。ひょっとして、あのユラユラが?」とウチ。
「ここでの敵ってわけ? あんなユラユラが?」とミクリにゃん。
「ユラユラしすぎじゃないかしら」とミストにゃん。
「こっちまでユラユラしそうでありまぁす」とミムカにゃん。
「ユラユラしているのは心に落ち着きがない証拠だ」とミロネにゃん。
「こっちへユラユラ。あっちへユラユラ。そんなもんです。生きるって」とミリアにゃん。
「んもう! ユラユラじゃないわん!」
ヤカンにゃんはウチらがつけた名前を言下に否定。でもにゃ。とぉっても可愛いのにゃん。それもそのはずで、『膨れっ面にゃ表情を浮かべて、拳が握られた両腕を、ぴぃぃん、と下に伸ばしている』のは、他にゃらにゅミーにゃんの身体にゃもん。
「いぃい? 良ぉくお聴きなさいわん。目の前に現われた奇っ怪霊獣の名前はね。
なにを隠そう、『ドリルスネーク』…………うん? ドリル? スネーク?」
ここからはヤカンにゃんのひとりごとにゃ。
「なにそれ? 聴いても判らないような名前なんてダメなのわん。ナンセンスなのわん。
でもって名前自体もやたらと長すぎるわん。やっぱホワイトはネーミングのセンスが、からっきしなのわん。こうなったら、ブラックのアタシが責任を持って名づけるしかないわん。……ということで、ここはじっくりと考えてぇ……考えに考えてぇ……見事というくらい、なぁんにも思いつかないけど、それでも良ぉく考えてぇ……」
(いつまで考えているつもりにゃん?)
あんまりにも長すぎるもんで、ネコ型はみんにゃ毛繕い。翅人型は腕枕でひと休みにゃ。
「考えに考えてぇ……久し振りに頭を使ったもんでおネムしたくなってきたわん。今日はもうこれぐらいに……ううん、考えなきゃあ。諦めなければ、きっと道は開けるからぁ……考えに考えてぇ……おお、今、ちらっ、となにかが頭をよぎったようなぁ……あともう少し、考えればぁ……ダメぇ、遠のいちゃあぁ。本当、あとちょっと、あとわずかなのわぁん。だから、考えに考えてぇ……ああああぁぁ、もうダメぇ……」
長ああぁぁいひとりごとが、やぁっと途切れてにゃ。まぶたが閉じられようとした、まさにその時、その瞬間。これぞ『開眼』とばかり、ミーにゃんの目が、かっ、と見開き、ミーにゃんの身体が、びくぅ、と震えたのにゃん。
「うわわぁぁっ!」
でもにゃ。お雄叫びの声色はヤカンにゃん。
「うわん! 今、頭に、ぴぃぃん、ときたわん!
一生に一度あるかないかの閃きなのわん!
そう! これよこれ。『グリグリ』にしようわん!」
(あのにゃあ)
考えに考えた末が『グリグリ』にゃんて。しかしにゃがら下から覗けば、『両手を腰に当て』『肩をそびやかし』『鼻高々』と三つも揃った、にゃんとも誇らしげにゃ姿にゃん。
(にゃあんか目頭が熱くにゃってきたのにゃあ)
ウチとて精一杯考えたという事実には感動せざるを得にゃい。それでも、いうべきことはいわねばにゃらず、と悲壮にゃる思いを胸に口からこぼれた言葉は。
「幾らにゃんでも」
「安易すぎるネーミングだよねぇ」
合いの手を打つミクリにゃん。ウチらの言葉に、どうやらヤカンにゃんは苛立ちを覚えたみたいにゃ。
「ごっほん。そこの外野。ちょぉっとうるさいわん。
さぁグリグリ一号から六号まで。やっておしまい!」
こちらの批判もにゃんのそのにゃ。さっきといい、今といい、『聴く耳持たず』とばかりに突っ走るとこにゃんて、本当、ミーにゃんといい勝負にゃん。
「にゃあ。やっておしまわれたら、あんたにゃって元の身体に戻れにゃいじゃにゃいの」
「それはそれ。ゲームはゲーム。公私混同はしないわん」
「あのにゃあ」
(カイラとやらのせいにゃのかもにゃ。
おのれよりもゲームが大事にゃんて滅茶苦茶にゃん)
《ふふっ。なにを隠そう、ワタシは伝説のゲーマーと呼ばれたイオラ。
おのれよりもゲームが大事。
さぁミアンちゃん。もう手加減はしない。今度こそ、勝負を決めるわ。
ほら、じゃんけん》
《ぽん! と。
にゃあ、さっきもいったじゃにゃいの。ネコに負けてどうするのにゃん?
どこが伝説のゲーマーにゃのにゃん?》
《勝つことを知らない……ところじゃないかしら》
こうして多少強引にゃがらも、戦いの火蓋は切って落とされたのにゃん。
グリグリ六体の一斉攻撃が始まった。前方でユラユラしているにゃけかと思ったら、とぉんでもにゃい。細長部分をくねらせにゃらが、ウチらへと向かってどんどん延びてくるのにゃ。でもって身体に刻まれた……
(そうにゃ。『ぐるぐる』はやめ、カッコつけて『ドリル刃』にするのにゃん)
……ドリル刃を回転させにゃがら、というおまけつきもあってにゃ。まぁにゃんとも物騒で、しかも不気味この上にゃい。
ぎゅいいぃぃん!
耳触りにゃ音が鳴り響く中、鎌首の一つがこちらへともたげたのにゃ。
(どうやらウチに狙いを定めたにゃあ)
案の定にゃ。ウチの身体に風穴を開けんとばかり、頭部のドリル刃が猛烈にゃる勢いで突っ込んできたのにゃん。
「あ、危にゃい!」
たったったっ!
もちろん、ウチは余裕でかわしたのにゃ。
ずぶっずぶっずぶっずぶっずぶっ…………。
攻撃をかわされたグリグリは、頭部のみならず、胴体と思しき部分までもが地面の中。(もっとも……、頭と首と胴体の分かれ目はどこにゃん? と問われても、答えるのに困るのにゃけれども)
がむしゃらに掘り続けるさまを見るにつけ、やっぱアホにゃん、とつくづく思う。にゃからといって、ウチらが抱える最大の難問に対する答えが直ぐに、ぱっ、と閃くかといえば……さに非ずにゃ。
(どうやったら倒せるのにゃろう?)
あまりの難問に……難問じゃにゃくても……ネコ頭ではにゃにも思い浮かばず。とまぁもたもたしている間にも時は流れていくもんでにゃ。グリグリもさすがにおかしいと思ったのにゃろう。『おや、間違った』との思い入れを感じさせるのにたっぷりにゃ間合いをとってにゃ。
ずぼずぼずぼずぼずぼっ!
埋まった部分を地面から引っこ抜き、再びユラユラし始めたのにゃん。
(これで諦めてくれたらにゃあ)
半ば期待を込めて見守っていたらにゃ。あちらこちらへと回していた頭を、ぴたぁっ、と目の前でとめたのにゃ。どうやら、このグリグリはウチがお好みらしい。懲りもせずに、またまたウチへと向かって頭部が襲いかかってきたのにゃん。
(キリがにゃいのにゃあ)
《ふふっ。ミアンちゃんたら、誰からも愛されるのね》
《そんにゃ生やさしいものじゃにゃいのにゃよ。あのしつっこさはにゃ。
『追っ駆け』というよりも、むしろ、『ストーカー』にゃん》
《まぁ。もう立派なアイドルじゃない》




